VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第34話 油断した僕はダウンしてしまう。そして倒れた僕を挟んで銃撃戦が始まる
第34話 油断した僕はダウンしてしまう。そして倒れた僕を挟んで銃撃戦が始まる
FPS初心者の目には30メートル向こうの敵を撃ち殺したことが、凄いことのように見えるようだ。
こんなのオンライン対戦じゃ、みんな当たり前にやるんだけどね。むしろ3点バースト射撃を2回繰り返しているから、僕は下手な方だ。
いかん、いかん。
周りの反応を気にしている余裕はない。
なぜなら敵がふたりだけとは限らないのだ。
敵集団が同じ速さで走ってきているのなら、近くに、まだいる。
だから僕は、敵の死体目掛けて手榴弾を投げた。
倒せればラッキーくらいのつもりだったけど、手榴弾が転がっていった先に敵兵士がやってきた。
そのタイミングで手榴弾が爆発。
敵を倒した。
さらに画面中央には、敵への命中を意味する赤いマークが一瞬映った。
敵兵士の姿は視認できないが、ヒットマークが出るということは、他にも敵がいるということ。
「アリサ、少なくとも、あとひとりいるっぽい」
「Ok! Fire in the hole!」
アリサが手榴弾を投擲。
リアル身体能力の影響を強く受けるため、アリサの手榴弾は敵の予想位置よりかなり手前に落ちた。爆発するが、ノーダメージだろう。
アリサはライフルを撃ち、敵をふたり仕留めた。僕から見えなくてもアリサからは見える位置に敵がいたっぽい。
「5人って気持ち悪いし、たぶん、全部来る!」
「言いたいことは分かる。確かに戦力を3等分するなら4人来るだろうし。5は気持ちが悪い。かなり6人目がいそうな気がする」
「待ち伏せして、敵襲に備えよう!」
「……うーん。相手はプロスポーツ選手だから、FPSの駆け引きはできないはず。拠点制圧ゲージの減り方やポイント変動なんて知らないだろうし……。やっぱ、全部の拠点を攻めてる可能性を考慮して、僕達ふたりで拠点を転々として守った方がいいと思う。だから、僕達はこのまま中央の道を敵拠点方面に進んで、拠点Aに向かおう」
「アリサも同じこと考えてた! 偉人弁髪だね!」
僕達は倒木の陰から出ると、中央の道を走る。
「……? 偉人弁髪? チンギスカーン的な?」
「お、お兄ちゃん。配信中だから、エッチなこと言わないで……」
急に恥じらった声を出されてしまい、僕は慌てる。
お兄ちゃんって呼んできたってことは、ジェシカさんが近くにいて、僕達の声が拾われる可能性があるってことだよね?
僕は声を小さくする。
「チンギスカーンにエッチ要素ないからね。あと、今気づいたけど、言いたかったのは偉人弁髪じゃなくて、以心伝心でしょ?」
「日本語分かりませーんデース」
「めちゃくちゃ流暢に喋れるくせに……。それよりも待って。敵が罠を仕掛けているかもしれない!」
「え?」
「慎重に行こう……」
「走ると疲れるから歩くってこと?」
「……そうとも言う」
「あははっ。お兄ちゃんの体力クソザコすぎ~」
事実だから何も言い返せない……。
そして、ガチで体力温存のための徒歩だし、慎重に行くというのは完全に口実にすぎなかったので、僕は何も警戒していなかった。
僕はカーブを曲がったところで、対人地雷の爆発に巻きこまれてダウンした。
完全に油断していた。多分、さっき死んだ誰かがトラップを設置していたらしい。
画面がゆっくりと赤く染まっていく。
30秒が経過するか追加攻撃を食らったら死亡する。
それまでに誰かが蘇生キットを使ってくれたら、復活できるんだけど……。
ゲーム開始時に、メイン武器となるライフルの他に、地雷や蘇生キットなどのオプション装備も選択できるんだけど、誰か蘇生キットを選んだかなあ……。
蘇生キットは大会ルールで使用可能な初期装備の中に含まれているから、誰かが持っている可能性はワンチャン。
急に僕の上で弾丸が行き交い始める。
発砲音が途切れないから、敵味方、両陣営とも乱射しまくっているっぽい。
手榴弾も爆発している。もうちょっと遠くに投げて。ここには僕の死体しかないよ。
そして、銃撃音はすれども、キルログは表示されず。
敵の攻撃も味方の攻撃も殆ど当たっていない。
初心者に夜マップはキツいよなあ。視界が悪くて、経験者でも索敵は大変だし。
あ。
奥から防弾シールドを構えた敵兵士が走ってきた!
速ッ!
プロのアスリートがトレッドミル床コントローラーを使うと、こんなに速くなるの?!
盾に味方の弾が何発か当たって火花が散った。
駄目だよ。
防弾シールドに銃弾は効かないから、爆発物を使って!
ロケランやC4がないなら逃げて!
あ、ああっ……!
超高速移動した敵が盾で味方を殴った。
味方は銃が効かないことを知らないらしく、銃撃し続け、もう一発殴られてダウン。
あれ?
銃声の種類がひとつの気がする。もしかして、うちのチーム、マシンガンばかり?
マシンガンは命中精度が低い代わりに、大量の弾を連射できるという特徴がある。
つまりじっくり狙って撃つよりも、弾をばらまきたい人向けの武器だ。
初心者には向いていると言える。
そして、敵は防弾シールド装備ばかり……!
相性、悪すぎぃ!
うわっ、怖え!
盾を構えた超高速兵士が次々と走ってくる。
自分達の特技を活かすための編成か!
ぶっちゃけ、味方の装備で勝ち目はない。
味方はマシンガンを乱射しまくる。
さすがに雨のような銃弾は防弾シールドにとっても脅威だったらしく、敵は密集してお互いの左右を護りあう陣形になった。
あれ。もしかして、敵チームにFPS経験者いる?
このまま味方は敵に接近されて殴り殺されるのだろうかと心配しながら見ていると、アリサが匍匐前進で僕の死体の上を越えていった。
そうだ。
頼れる相棒がいる!
今まで発砲せずに、敵が背中を見せるまで隠れ潜んでいたんだ。
アリサは横一列になった6人組の右端の兵士に接近し、背後からナイフを刺してキルした。
続けて、隣の兵士もナイフキルした。
アリサめ、ネタプレイしてる。
背後からなんだから、撃てばいいのに!
こんなことしてたら、敵集団に気づかれて盾で殴られて殺される。
けど、撃たれない。
そうか。
マップは夜だから画面が暗いし、敵プレイヤーは画面全体が殆ど自分の盾で覆われいるから、狭い視界では小柄なアリサが見えないんだ……!
それに、やはり敵にFPS経験者はいない。もしくは、経験者といっても初心者だ。ほぼ確実に誰もキルログを見ていない。味方が死んでいることに気づかないんだ!
FPSではキルログを見て『仲間を殺した武器を確認』し『その武器で仲間を殺せる距離と位置』を推測するのが重要だ。
エイムよりもキルログ確認スキルの方が大事……と僕は思っている。
3人め……。アリサは次々とナイフで仕留めていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます