VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第32話 みんな配信開始直後の挨拶をしているようだ
第32話 みんな配信開始直後の挨拶をしているようだ
少ししたら、アリサがキョロキョロして、僕に気づいた。
「Hey、お兄ちゃん、見て!」
「ん?」
お兄ちゃん?!
あ。そうか。僕はジェシカさんの弟設定だから、アリサは妹か。
カズではなく、お兄ちゃんって呼んできたってことは、この会話は配信中?
僕の疑問なんて知るはずもないアリサは、いきなり自分のスカートをめくった。
「ほら!」
……?!
「コラボ衣装限定のハンドガン、ここに隠してあるんだよ! アリサはアサルト使うから、お兄ちゃんがこれ使いたかったら、スカートの中に手を突っこんで、取りだして使っていいよ!」
「あ、うん……」
「ねえ、パンツ見えた?」
「で、どこ取りに行く? ミニマップを見た感じだと拠点Bが激戦になりそう。先に中央を制圧してポイント確保した方がいいかも」
「撃ちあいができるならどこでもいいよ! パンツ見えた?」
「じゃ、拠点B。僕達は味方の先頭に立って前線を押し上げる役でいいよね?」
「うん。パンツ!」
BoDⅢは過疎っていたから、オンラインにいるのは全員、知っているプレイヤーだった。
だから、誰とでも相談せずに連携が取れるくらいには顔見知りだったし、戦術を共有できていた。
得意分野も把握しているから、ヘリがあるステージならタカユキさんに任せ、戦車なら僕が担当し、ゴールデンボールさんやペッキーさんはとにかく脚の速い車両で前線に急行するみたいな戦術が打ちあわせなく実行できた。
しかし今は、知らない人ばかりで、不慣れなマップ。
連携は不可能だろう。僕とアリサが臨機応変に動き回るしかない。
「パンツ、可愛かった?」
「……」
「ねえ、私の画面だと自分のパンツ見えないでしょ? だから、どういうパンツだったか教えてほしいの。リスナーの豚君達に教えてあげないと!」
「え、待って。アリサのリスナー、豚君なの?」
「アリサのっていうか、お姉ちゃんのリスナーが豚共なの。だから私も豚君って呼んでるよ」
「応援してくれる人を豚って呼ぶの、やめなよ……」
「でも、喜んでるよ! ほら、お兄ちゃん、しゃがんで。アリサのパンツじっくり観察して、どういうデザインか説明して!」
「そこは、お姉ちゃんに頼みな……」
「OK!」
アリサがジェシカさんの方に走っていった。怒られるがいい。
僕はとりあえず自分の足で歩き、目標方向へ体が向いたら、スティック操作に切り替えて走る。
すると、なぜか、拠点内の味方からどよめきが起こる。
「おい、アイツら真っ直ぐ走りだしたぞ」
「ホントだ! 回転もせず真っ直ぐ走ってる!」
「上を向いたり下を向いたりせずに動いてる!」
ん?
みんないったい何を驚いているんだろう。
もしかして僕、大会ルールに違反した?
スティック移動禁止ルールだっけ?
僕はスティック操作をやめ、リアル歩行操作に切り替える。
「あのー。僕、何かしちゃいました?」
誰にともなくつぶやくと、近くにいた男の人が返事をくれる。
「あ、いや……。スムーズに歩いたかと思ったら急に走りだしたから……」
歩いただけで驚かれる?
椅子に座っただけで驚愕されるWEB小説でもあるまいし……。
どういうことだろう。周りを見ると、たしかにみんな奇妙な動きをしている……。配信の動きじゃない……よな?
「さすが若い子は、新しい道具をすぐに使いこなすなー」
と誰かが言ったけど、控え室にいた人だって、20台30台の人ばかりだったと思うけど。
あ。……もしかして。
僕は歩くのをやめ、拠点に向かって声を大きくする。
「勘違いだったら済みませんですけど、みなさん、聞いてください。VRじゃない普通のFPSと違って、VRのFPSだと銃口、視線、移動方向のすべてが別々です。3Dゲームの経験があると逆に違和感があるかもしません。右を見ながら左に銃口を向けて前に歩いたりできます」
「あ。そういうことか!」
誰かが納得してくれた。
どうやら他プレイヤーは、VRFPSだからこそのシステムに戸惑ったようだ。
「あっ。くそっ。理屈は分かっても思うように歩けない」
「銃口と視線と移動先を統一した方がいいかもしれないな」
みんな四苦八苦しているようだ。
というか、このゲーム大会、練習時間くらい設けようよ……。
いや、戸惑う過程自体を配信するの?
とりあえずまともに動けるのは現状、僕とアリサだけか。
トトトッと、アリサが駆けよってきた。
「パンツ見せたら、怒られちゃった」
「それはそう」
「それじゃ、行こ! 中央突破で撃滅しよ!」
「うん。難しい言葉知ってんなー」
「アニメで覚えた!」
「なるほど」
僕が走りだすと、アリサは遅れることなくついてくる。
周りが盆ダンス中なので、当たり前のことなのに感動を覚える……。
「ねえ、アリサは配信、大丈夫なの? 機材の使用感やBoDⅤをレビューするんじゃないの?」
「そういうのはジェシーの担当だよ。今日は、カズといっぱい遊ぶ」
「ねえ、カズって呼ぶときは、配信中じゃないと思っていい? 僕はアリサの動きにあわせるから、配信に集中してくれていいよ」
「だいじょーぶ! アリサは自分の枠を持ってないよ。配信しているのはジェシーだけで、私はジェシーの配信に出たり入ったりするの」
配信の仕組みが分からない僕には何が大丈夫なのかよく分からないが、本人がそう言うのだから問題ないのだろう。
「アリサというかSinさんのチャンネルって、何人くらいが見てるの?」
「もうすぐチャンネル登録が、200行くよ!」
「そうなんだ」
200人かあ。詳しくないから分からないけど、コラボ衣装が作られるくらい人気があるなら、何万人もチャンネル登録するものだと思ってた。
それとも、配信は何万回も再生されるけど、チャンネル登録する人は200人くらいなのかな?
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