第22話 VR貫通してパンツ見えてる?!
「ちょっと、退いて」
「撃たれてる! 伏せて!」
パパパンッ! パンッ!
たしかに僕達は撃たれている。偶然だけど、アリサが僕を押し倒して敵の銃弾から護ってくれていたようだ。
くそっ。頭を上げたら撃ち殺される。このままやるしかないのか。
「分かった。ここで敵を迎え撃つ!」
「うん!」
僕は腕を動かしてライフルを構える。アリサのどこかを触りまくってしまったけど不可抗力だし非常事態だからしょうがない。それはアリサも納得しているらしく文句を言ってこない。
僕達が射撃を始めると、敵の攻撃が止まった。倒してはいない。移動したのかタイミングをはかっているのか?
「見えた。右! 青いコンテナの陰。裏に回りこもうとしてる! 僕、動けない。お願い」
「りょっけー! 任せて!」
うっぐっ……!
アリサが僕の上で体を動かし始めた。水平方向に回転するつもりか?!
現実世界でどうなっているのかはもう分からないけど、肘や膝がゴリゴリぶつかってきて痛い。衝撃やゲーム映像から察するに、アリサは僕の上でへそを中心にして右回転している。
というか、なんで操作設定を変えちゃったの?!
スティック移動にしてよ!
いや、それを追及するのはあとまわし。
アリサが右を見てくれるなら僕は左の警戒を――!
パパパンッ! パンッ!
くっ。敵の銃撃が激しい。
あっ!
ゲーム映像が消えて肌色の何かが眼前に迫ってきた。アリサの体の一部だと気づいた直後、正体不明の白いものが映る。
アリサって、赤と黒のチェック柄のワンピースを着ていたよね? 白い部分はなかったはず。
……この白いものは、まさか――。
パンッ! パンッ!
あっ、撃たれた!
撃ち返したいけど、位置的に、この白い部分に手を突っこまないといけない。
ちくしょう! できるはずないだろ!
「カズ、撃たれてるよ! 撃ち返して!」
「分かってる! ……けど、撃てませぇぇぇぇん!」
Sinさんからいつものように「ロボットアニメの主人公かよ」と突っこみをくらうかなと思ったけど「撃って!」と可愛くも鋭い返事がきた。
なぜだかは分からないけど、アリサとSinさんは別人なんだと納得したのは『今』この瞬間だった気がする。
目の前から白い布が消え、直後、頭にわりと強い衝撃を喰らった。膝が当たったのだろうか。別に痛かったわけではないがゴーグルがズレてしまったので、僕は直そうとして、アリサのふとももと思われる部分を触ってしまった。
アリサがいなくなりゲーム画面が正常に戻った。僕は倒れて天井を見上げている。
上半身を起こすと、アリサ兵が立ちあがるところだった。
そして、アリサ兵が上半身を前に傾け――。
嫌な予感がした僕はゴーグルを上にずらして現実世界を確認する。
アリサがリアルで前に進み始めるところだった。というか走りだす寸前にしか見えない。
僕はもう反射的に抱きついた。アリサが女子だと気にしている余裕はなかった。
肩や手を掴むだけじゃ効果はないと分かっていたから、僕は座った状態から全力で身を乗りだして両腕をアリサの腰に回した。
「待って! 待って! 走ったら駄目!」
「What ?!」
「リアルで歩かないで! ドン、ムーブ! ドン、ムーブ! すぐ近くに壁やエスカレーターある!」
「No! ないよ」
「リアル! リアルの方! 危ないって! スティック移動にして! というか、なんで操作設定変えたのさ!」
「本気だしたいから」
「レイプされて悔しかったのは分かるけど、スティック操作にして」
「分かった……」
僕はアリサをソファに座らせ、それからもう一方のソファに座る。
ゲームの僕は死んでいた。まあ、画面から目を離しまくっていたし……。
アリサも死んでいる。
どうしよう。アリサのことが気になってゲームに集中できない。
充電ケーブルで自分とアリサのゴーグルをつなぐか?
そうすればアリサがどこかに行ったら分かる。でも、ゴーグル同士を繫いでも大丈夫なの? 壊れる? どっちかのバッテリーが消費されて、充電されるの?
分からない。
……仕方ない。僕はゲーム音声をゼロにした。敵の足音や発砲音が聞こえなくなるから不利になるが、現実世界のアリサがどう動くか把握しなければ。
不安だけどゲーム再開。
僕は先程とは別の位置に出現した。アリサも近くにいる。
「出撃位置はランダムだけど、味方は近くに現れる仕様っぽいね。偶然かもしれないけど」
「うん。武器」
「分かった」
今度は先程みたいに衝突することなく、ソファに座ったまま武器を交換した。
「じゃ。行くよ! カズ、着いてきて! 勝利の女神のパンチラを見逃すな!」
「……」
「返事!」
「あ、はい……」
気まず……。
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