VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第21話 リアルとVRを間違えて僕はアリサの胸を触る
第21話 リアルとVRを間違えて僕はアリサの胸を触る
僕は控え室を出て、通路を速歩で進む。
(トイレの個室……は駄目だ。腕を振ったら壁にぶつかる。そこそこ広くて人が来なくて座れる場所……。あった)
休憩スペースがあった。
まだイベントが開始する前だしスタッフ通用口に近い位置だからか、ひと気はまったくない。
背もたれや手摺りのない正方形のソファが2つある。いいぞ。ゲームしやすそう。
大きな観葉植物がスペースを囲んでいて通行人の視線を遮ってくれる。壁一面が窓ガラスだけど、通行人はわざわざ建物の2階を覗きはしないだろう。
ソファに座り、手提げ鞄からVRゴーグルを取りだす。
どこの誰かは知らないけど、アリサに卑猥なメッセージを送ったことや、ボコってくれたこと、まじ、後悔させてやる。
BoDを起動し、アリサからのフレンド申請を承認し、『進行中のゲームに参加』を選んだ。
日本語メニューで確認すると、やはりフレンドしか参加できないルーム設定になっていた。
オンラインプレイでプレイヤーの人数が偏るのは仕方ないけど、意図的に人数差を作るのは卑怯にも程がある。絶対に許せない。
ロード中に、ソファが揺れた。
なんだろうと思ったら、肩や二の腕に何かが触れる。
うっそだろ。たしかに4人くらい座れるソファだけど、隣に来るか?!
ソファは2つあるんだから、そっちを使ってよ。これが噂に聞くトナラーか?
僕はもう一方のソファに移動しようとするが「アリサもうんこしにきた」と、可愛らしい声がして状況を把握した。
「よし。じゃあ、協力して敵を倒そう」
「うん!」
拡張武器オンになっていて、キャンペーンやオンラインでアンロックした武器が使用可能な設定か……。
「あー。僕、オフラインのキャンペーン最高難易度で途中までクリア済みだから結構強力な武器、アンロックしてます。出撃したら交換する? Sinさんほしい武器あったら、僕、それで出撃しますよ」
「むーっ。アリサのことはアリサって呼んで」
「あ、そっか……」
脳が『Sinさんと遊ぶモード』になっていたから、素で呼び間違えてしまった。
「ステージは廃工場っぽいけど、どうする? 僕、強いアサルトライフルあるよ?」
「アサルトほしい!」
「分かった。じゃあ、アリサは初期のでいいから、サブマシンガンにして。交換しよう」
「りょっけー!」
ロードが終わった。
視界が廃工場の入り口に切り替わる。すぐ隣にアリサの操作する兵士も現れる。
「アリサ。そういや、なんでデフォルトの兵士なの? 最初にキャラクリ始まらなかった?」
「すぐにオンラインしたかったからとばした!」
「あ、あー……。キャラクリすると、身長や体格を自分にあわせたキャラを作れるよ。エイムとか移動とかの精度が、変わってくると思う」
「そうなの?」
「うん。僕のこれ、身長とか腕の長さとか一緒。武器を構えるとき、微調整がかなり楽」
「そうなんだ。知らなかった……。だから今日、ぜんぜん弾が当たらなかったんだ」
「あとでキャラクリしておくといいよ。とりあえず武器を交換しよう」
「うん。カズの固くて太くておっきいの、アリサにちょうだい」
「何それ。変な言い方」
僕は体を捻って腕を伸ばす。
BoDでは武器の受け渡しが可能だ。両手のコントローラーにあるグリップボタンを押せば物を掴むし、放せば放す。他人の弾倉を抜くこともできるから、オンラインプレイで仲間にいたずらしたり、敵の弾を奪ったりもできる。
「きゃっ」
「うわっ。ごめん!」
手の甲が柔らかいものに触れてしまった。間違いなくアリサだ。僕はゲーム中で銃を渡そうとしただけなんだけど、現実世界でも同じ動きをしていたのだ。
今度は逆にアリサが僕を触ってきた。ゲーム画面で兵士がサブマシンガンを僕に渡してくる。
「ねえ、近くない? 離れて」
「カズが離れてよ」
「いやいや、隣に来たのはアリサでしょ。離れてよ」
「ねー。予備の弾もちょうだい」
「あ。そっか。いいよ。じゃ、僕も弾もらうね」
待って!
アリサの弾倉、胸につけてる!
「アリサ、ちょっと前に移動して」
「え? こう?」
「うん」
ふう。危ない危ない。
危うくゲーム内だけでなく、リアルでもアリサの胸を触って痴漢になるところだった……。
ゲーム内のアリサが正面に移動したから、僕は体を捻らず前に手を出せば、アリサの胸から弾倉を取ることができる。
僕は手を伸ばし――。ぷにっ。
「きゃっ」
「うわっ?!」
なにか柔らかいものを触ってしまった。状況的にアリサっぽいけど……。
「エッチ……」
僕はゴーグルをずらして正面を確認すると、アリサが前に立っている。
「ご、ごめん。でも、なんで前にいるの?」
「カズが前に行けって言ったから」
「言ったけど、ゲームの話でしょ」
「分かんないよ!」
「と、とにかく、ごめん」
「グレくれたら許す……」
「分かった。あげるから許してくれネード……」
ゴーグルを再装着してゲーム再会。
え、待って。
ゴーグルに映るゲーム映像が半透明になり、中央が現実世界のカメラ映像に切り替わった。
目の前にリアルアリサが接近してきている!
「ちょ、待っ――!」
「きゃっ!」
アリサの膝が僕の膝に激突したかと思ったら、そのまま小柄な体が僕の方に倒れてくる。
ヤバい。VRゴーグル同士の激突だけは避けないと。
僕は首を横に捻って伸ばす。
どすんっと、アリサが僕の上に落ちてきた。
小柄な女子とはいえ、さすが、人体。普通に強い衝撃だ。
「痛ッ……。アリサ。大丈夫?」
「うっ……。大丈夫じゃないかも」
「え?」
まさか怪我をしたのかという不安を「敵が来てる!」という叫び声が打ち消した。
というか、声、近い!
首筋にめちゃくちゃ湿った空気がかかったんだけど。
アリサは僕の上で腕を動かし始めた。肘らしき部位が僕の二の腕、側頭部と順にぶつかる。
うっそだろ、こいつ、僕の上で敵を迎撃するつもりだ。
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