VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第13話 いきなりハグされる。この人、距離感バグってる!
第13話 いきなりハグされる。この人、距離感バグってる!
しばらくして北栄駅の4番出口前には僕達3人と、無関係の通行人だけになった。
振り返ったSinさんの表情が一瞬で、綺麗なお姉さんから、悪ガキに変わる。
「よう、カズ。いきなり警察沙汰になってんじゃねえよ」
僕は女性の目を見るのが色んな意味で怖いから、視線をあっちこっちに彷徨わせながら、恐る恐る尋ねる。
「Sinさん? 本物?」
「疑いたくなるのも分かる。オレほどの美人は世界中のどこにもいないからな」
Sinさんは満面の笑顔で「あと5年もすれば、オレは美人ランク2位だけどな」と、アリシアの頭をくしゃくしゃに撫でた。
自信過剰でも冗談でもなく、Sinさんは美人だ。でもそれは、アイドルのような女性らしい魅力ではなく、たとえば刃物や銃器が持つような、目的を成し遂げるために洗練された無駄のない美しさだ。
間近で相対した僕が軽く射竦められていたら、Sinさんは口の端を吊り上げる。
表情は、美とは不釣り合いなまでに悪ガキ。
「カズ、お前、オレのこと日本人だと思ってただろ」
間近で見下ろしてきた。身長は同じくらいのはずなのにSinさんは小顔だし、堂々と立っているからか、目が僕より高い位置にある。
「ち、近いですよ」
おでこが触れてしまいそうな距離なので、僕は上半身を反らして、後じさった。
赤面を晒すのが恥ずかしくて、顔を背けようと思ったけど無理だった。
逃がさんとばかりに僕の頭に手が伸びてくる。
「へー。これが前言ってた頭の線か。ほら、アリサ、見てみろよ。カズの頭にヘッドセットの跡ができてる」
Sinさんが頭を下に押してきたから、僕の視線が下がり、パーカーだから分かりにくいけど、なんだか大きそうな胸を間近に見てしまった。
いやいやいや、落ちつけ。
変なところを見るな。
胸を見ているのを気づかれたらからかわれるし、嫌われる。
「Fuck!」
「いたッ!」
左のふくらはぎに痛みが走った。
反射的に見れば、アリシアのローキックが炸裂していた。
泣きやんでくれている。良かった……。
というか、視線を下げたから気づいたけど、Sinさん、脚めっちゃ長い。いやいや、というか、待って。下、何も履いてない?! パーカーしか見えないんだけど。スカートがないんだけど。え、何。パーカーの中に隠れる長さのスカートかショートパンツを穿いてるの?
「ジェシー! カズが酷いんだよ! カズのくせに、私のこと5キルした!」
「よし、アリサ。めっしてやれ。めっ」
Sinさんがアリシアの両腋を抱えて持ち上げた。
僕の目の前にアリシアの幼い顔が迫る。
「え、何これ、本当に線がある。変! カズの頭、おっかしーい!」
アリシアの指が僕の耳から耳へと頭を往復していって、くすぐったい。
Sinさんが下ろすと、アリシアは腰に両手を当てて、小さくふんぞり返った。
「ふふん」
意味ありげな視線を僕に送ってきているけど、いったいなんだろう。
自分はおしゃれに気を使っているから、髪の毛にはヘッドセットのあとがついていないぞと自慢している?
それなら、ふんぞり返るよりも頭を前に出すはずだけど……。
アリシアのふんぞりドヤ顔の意味が分からないでいると、ジェシカさんが手を出してきた。
「ジェシカ・サンチアゴ。22歳。OgataSinはSantiagoのアナグラムな。喜べ。ご覧のとおりお姉さんで、しかも超がいくつもつく美人だ」
ジェシカさんはどう見ても握手を求めてきているが、僕はこれまでの人生で異性と握手をした経験などない。
「
勝手がわからずにおずおずと手を出しかけると、ジェシカさんの手が伸びてきた。
ジェシカさんの手は力強くて、熱かった。
そして、ジェシカさんは握った右手を引き寄せて僕を抱くと、開いた方の手で背中をバシバシ叩いてくる。
ちょっと待って。Yesしてないのにエモート・ハグ決められちゃった?!
顔ちっちゃ! 間近で見ると顔ちっちゃすぎてビビる!
ねえ、というか、胸当たってない?!
すっごいいい匂いするけど、何これ?!
「いやー、ほんと会えて良かったよ。『初めまして』というのも変だよな。相応しい挨拶はなんだ。
「よ、よろしく、お願いします」
復活者?! 死んでたの?!
あッ! ふつつか者か!
というか、距離感バグってない?!
胸が当たってるの勘違いじゃないよね?!
さっきの警察官が戻ってきたら僕、逮捕されるんですけど?!
挨拶だとしても、もう放れてもいい秒、経過したよね?!
外国人ってみんなこんな感じなの?!
ジェシカさんのスキンシップが過剰なの?!
脳内つっこみが追いつかないんだけど?!
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