VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします
第11話 僕は本気でアリシアをボコり、泣かせてしまう
第11話 僕は本気でアリシアをボコり、泣かせてしまう
僕はゴーグルを再装着し、ゲームに意識を戻す。
案の定、アリシアが走り回ってた。
(うわー。めっちゃ探し回ってる。相当、頭に血が上ってるな。ちょっとは後ろを見ようよ)
僕はアリシアの真後ろを走っている。
4つの部屋をふたりでぐるぐると回っている状態だ。
(あー。なんか、すぐに突撃するところとか、頭に血が上って単調な行動パターンになるところがSinさんにそっくりだ。Sinさんって、冷静に戦っているときと突撃しまくるときの落差が大きいんだよなあ。完全に別の戦闘スタイルになるし)
廃病院を2周したところで、ようやくアリシアが振り返った。
僕が銃を撃ち始めるのとほぼ同時に、アリシアのショットガンが火を噴く。
僕は一撃で死んだ。
(アリシア、めちゃくちゃ反応早い……。うわっ!)
いきなり、ゲーム画面が半透明になり、アリシアの金髪碧眼が目の前に現れた。
VRゴーグルは現実世界で何かが急接近してきたり、逆に自分が壁や家具に急接近したとき、自動でカメラ映像に切り替わる。
つまり、アリシアが勢いよく僕の眼前に来たということだ。
アリシアは満面の笑顔を浮かべ、頬と鼻を膨らませている。
「やーい。ざ~こ。へたくそー。いーっ」
可愛らしい顔立ちなのに、よくもまあ、そんなに顔を崩せるなと呆れるくらい、歯を剥き出しにして挑発してきた。
しかも、たどたどしい日本語で。
アリシアが去っていくと、半透明だったゲーム映像が元の状態に戻る。
(……いやいや、今の手加減したんだよ? 撃ち殺そうと思えばいつでも撃ち殺せたんだよ? オーケー。どうやらお子様にはお仕置きが必要なようだ)
本気スイッチ入ったぞ。
初期武器でRPGを装備した僕はアリシアの位置を予測し、壁に向かって発射。
壁を破壊し、向こう側にいたアリシアを巻きこんで大ダメージ。
だがキルはできなかった。
僕はその場を去り、振り返らずに走る。
僕の予想どおりなら、アリシアは壁に空いた穴を抜けて僕を追いかけてきているはずだ。
フィールドを1周走ってもアリシアの姿はない。間違いなく、真後ろを走っている。
僕が立ち止まったら、背後からナイフで切るつもりだろう。
銃で戦うFPSにおいて、ナイフキルは相手に最も屈辱を与える殺し方だ。顔面真っ赤アリシアは絶対にナイフキルを狙ってくる。
そうだ、近寄ってこい。
僕は次の部屋に突入すると同時に、天井に向かってRPGを発射。
僕が走り抜けた直後に、天井が崩落して、巻きこまれたアリシア死亡。
(よし。狙いどおり! この子、下手だけどセンスいいな。むっちゃ反応が早いんだよなあ。さて、そろそろ怒って、また睨んでくるかな?)
少し待ってもリアル少女は来ない。
それに、ゲーム兵士も走ってこない。
どうしたんだろう。
真っ赤な顔でファックって言うんじゃないの?
僕はゴーグルを外し、看板を見る。
「うっ……ぐっ……」
看板の向こうから、小さくくぐもった声が聞こえてくる。
覗いてみたら、アリシアは顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
「ううっ。うぐっ……」
げえっ、やりすぎた。
マジ泣きしてる。
ゲームで負けたくらいで泣くなんて、どんだけ打たれ弱いんだよ。
僕は恐る恐る少女の方に移動し、謝る。
「あ、あの、ご、ごめん……。ソ、ソーリー」
「うっ、うっくっ、うっ。うええええん!」
うわあ。どうしよう。声をかけたら、涙が決壊してしまった。
この子、小学生だよな。
そこのコンビニでお菓子を買って、泣きやんでもらうってのはありだろうか。
アリシアはゴーグルを頭の上にのせているから落としてしまいそうだ。両手がコントローラーでふさがっている僕は、左右の握り拳の小指側で彼女のゴーグルを挟み、位置を調整してあげる。
すると、背後から不穏な言葉が届く。
「ねえ、あれ、なんか怪しくない」
「うわ、誘拐? いたずら? 犯罪味パない?」
ふたり組のギャルが僕を見ながらひそひそと話している。
「ほ、ほら、落ちそうだったよ」
僕は無実を周囲にアピールしたかったけど、声は小さいし裏返ってしまった。
「うあああああああああああん! 顔射されたぁぁっ!」
少女は一際声を大きくして、周囲に誤解しか与えないであろうゲーム用語を叫んだ。
顔射は『顔面を射撃する』の略だ。
大抵のFPSでは頭部を射撃するという意味でヘッドショットと言うが、BoDでは顔射と言うプレイヤーが多い。
同じ開発メーカーが作ったファンタジーゲームで、ある配信者が『女騎士は甲冑を装備しているから弓矢では頭部にしかダメージが通らない。顔射で倒せ』と言ったのが元ネタらしい。
やはり、アリシアの言葉は周囲に誤解を与えたらしい。
「うわっ。やばっ! 電車とかでたまによくいる、体液をかける痴漢だ! ケーサツ呼ばないと!」
「ケーサツって111番だっけ。あ、いた。ちょうどケーサツいた。おまわりさーん!」
やめて! 誤解だから!
あ、ああッ。さすが都会。本当に自転車に乗った警察官がいる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます