第4話 え? Sinさん女性だったの?
翌日。
Virtual Studioを起動したら『ID:OgataSinがフレンド登録を承認しました』というメッセージが届いていた。
そして、毎日のように一緒に遊ぶようになり、数日が経った。
Sinさんは本当に、突撃馬鹿だった。どんなに不利な状況でも引かないし、攻めて攻めて、攻めまくる。もう、思考パターンが攻撃しかない。
そして、攻撃力は極めて高かった。
初対面のレイプ部屋では状況が悪すぎて活躍できなかったようだけど、それ以後、もう毎回のようにラウンド終了時の成績上位に食いこむ。
僕はSinさんより上の成績を取ったことなんて数えるほどだし、半分くらいしか点が取れないこともある。
僕は、自分で敵を倒すより、Sinさんの背中を護るように立ち回った方が活躍できることに気づいた。
知り合ってから一ヶ月ほど経ったある日、僕は初めてSinさんの声を聞く。
「よう、カズ。今日からボイチャデビューするから、よろしくな」
「えっ、あっ、はい。よろしくお願いします」
無謀な突撃を繰り返すやんちゃな人なのに、非常に落ちついた喋り方で驚いた。
想像よりも声は高く、女性のようにも聞こえる。
不思議なことに、僕とボイスチャットしているときのSinさんは突撃馬鹿ではなく、冷静なオールラウンダーだった。会話に意識がとられて突撃する余裕がなくなるのか、プレイスタイルが変わるっぽい。
出会ってからわりとすぐに僕達は口調が砕け、気さくに言いあうようになっていた。僕が学生でSinさんは社会人で、年齢差はありそうだけど、お互い気にしない。
というか、Sinさんは平日の日中や深夜にもゲームしているから、ニートかもしれない……。
「弾きれた。カズ、弾よこせ」
「さっきあげたでしょ。こっちも予備マグ使い切った」
「しょうがない。お前の股間にぶら下がった弾よこせ!」
「自分の弾を使って!」
「グレなら2つ胸にぶら下がっているが、あいにくと重くて遠くまで投げられないんだ」
Battle of Duty Ⅲは、プレイヤーが実際に手榴弾を投げるモーションをすると、操作キャラも手榴弾を投げるシステムだ。そのため、部屋が狭かったり、肩を怪我していたりすると、手榴弾を投げることはできない。
だから僕は、Sinさんが何かしらの事情により、現実世界で投擲アクションができないのだろうと判断した。
「じゃあ、僕が投げるからグレちょうだい」
「デカいからお前の手には収まらねえよ。Hカップだぞ」
僕達は敵に撃ち殺されたから、待機画面で息抜きをする。
「手榴弾の名前まで覚えてないって。ああいうのって弾と一緒で、ある程度は決まったサイズがあるんじゃないの?」
「胸が規格統一されてるわけねえだろ。ブラはカップ数で分類されるけど、バストサイズなんて人それぞれだ。形も違う。生で見たことなくてもそれくらい分かるだろ」
「なんで、そんないきなり胸の話なんて……」
「は? 最初からオレの胸の話してただろ」
「えっ?」
「いったいなんの話だと――。待て。お前、まさかオレのこと貧乳だと思っていた?!」
「あ、いや、その……。というか、男の人だと……」
「ケツに弾ぶちこんで殺すぞ!」
「だって、そういうこと言うし、基本的にFPSのプレイヤーって男ばっかりでしょ?!」
「女も多いだろ。VTuberとか実況者とか、見ろよ」
「僕、影響を受けたくないからプレイ動画は見ないし……。あ、いや、僕、悪くない。Sinさん、アバターが男でしょ! プロフィールも男!」
「ナンパ避けだよ。女アバター使ってるとフレンド申請がウザいんだよ」
「ほら。ナンパされるってことは、男プレイヤーが多いってこと!」
「唐揚げ食ってんじゃねえよ」
「唐揚げ?! ……それ、言いたかったの、揚げ足とるね!」
「ツッコミ、
「ちょうど学校で習ったし」
「でさー、カズはボイチャしてんだから、オレが女だって気づけよ」
「あ、あー……。ワンチャン女性かなーとは思ってましたけど、声が高い男の人だよなーって……」
「急に敬語でウケるんだが。おいおい、カズ~。お前、女子との会話が苦手なタイプか~」
「い、いや、フレ全員年上だし、いつも丁寧に喋ってるし!」
「ま。緊張すんなって。オレとお前の仲だ。今までどおり行こうぜ、相棒」
「お、おう!」
なんか嬉しい。
え、あ、いや、別に下心があるわけじゃないけど、同じ趣味の女性と遊べるのって、なんか、いい。
陰キャ中学生にすぎない僕が、リア充に一歩近づいた気がする。
こうして僕は、バーチャルな戦場限定だけど異性と親しくし、深い絆を結んだ。
クランを追放されたときは、もうこれからはソロプレイだけしようと思いもしたけど、新たなゲームフレンドも増えて、充実したゲームライフを送った。
僕が受験生になったり、Sinさんが仕事で忙しくなったりして、一緒に過ごす時間が減った時期もあったけど、ベストフレンドの絆は途切れることはなく、あっという間に2年が過ぎた。
VR・FPSで野生のプロに鍛えられた僕、最強クラスの実力に気づかないまま、姉妹VTuberに招待されて大会に出場することになりました。リアル世界でメスガキと美人お姉さんに翻弄されながら優勝めざします うーぱー(ASMR台本作家) @SuperUper
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