第6話

撮影中、ずっとこんな調子なんだからやりにくいったらない。



この男を相手にする仕事は極力したくないのに、今話題沸騰中ということもあってどこの現場でも鉢合わせてしまうのが今一番の嫌なこと。



「勿論、仕事なんでがんばりますよ。でも仕事中にしか喋ってくれないじゃんアキさん。」


「仲良くもないのにそんなことする必要あるっすか?」


「じゃあ仲良くしましょーよ。俺、あの時言ったこと本気ですよ?」


「………あたし、年下に一切興味ないんすわ。」



ジト目で見下ろしつつも、カメラが向けられれば笑顔になる。



あたしたちは脆くも、人を騙せるガラスの仮面を被った仕事をしているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る