#14「滅亡の貯水」A
「由君。私、秘密にしていた事があるんです...」
愛剥路は由人と防子にある秘密を打ち明けようとしていた。
「な、なに、愛剥路。秘密って?」
「私、ヘルメットを被ると強気になるって言いましたよね?」
「そうだったね。」
「実はこのヘルメットはね...私のお姉ちゃんなの。」
「...え?」
するとヘルメットから声が発されてた。
「やっとこの状態でも喋れるようになるわ。」
「しゃ、喋った!」
由人達は驚いた様子を見せた。
「いや、私としては、あの武装を纏った姿になれる方が驚きなんだけど。」
「え、えっとあなたは愛剥路のお姉さん...ですよね。」
「そうよ。姉の
(姉妹揃って当て字みたいな名前...)
「あれ?でもこの前武着装した時は強気な感じだったよね?」
「そ、それは頑張ってお姉ちゃんに似せてました。」
分部家と蔵馬家は古い付き合いがあった。
姉の路宇都は三年前に交通事故で亡くなったが、分部博士と知り合いだった路宇都は愛剥路の事を心配してヘルメットに意識を移植させて愛剥路の傍にいる事にしたのである。
故にこのヘルメットも普通の代物ではないという事である。この黄色のヘルメットを被ると、その被った人物の身体は路宇都が自在に動かす事が出来る。
「え?愛剥路ってバイク乗る時、路宇都さんのヘルメット被ってるけど、自分でバイクって運転できるの?」
「で、出来ますけど、最近はお姉ちゃんも運転したいって言うので。」
「車も運転したいなー。」
「レースならともかく普通の道で被るのはどうなのかな...」
「じゃあ運転出来るかどうか見せてよ。ちょっと近い所まで行ってさ。」
由人の発言により、一行はガレージに集合する事になった。愛剥路は白色のヘルメットを被って、アリツバイクを出して跨った。由人も赤いヘルメットを被り愛剥路の後ろに跨った。
「それで、どこに行きますか?」
「う〜ん...言うほど行く所もないし、NOUYA MARKETでいいんじゃない?」
「分かりました。それじゃあお姉ちゃん、防子ちゃん行って来ますね。」
「由ちゃん、愛剥路さん。いってらっしゃ〜い。」
防子に見送られ、由人達は出発し、早速NOUYA MARKETに向かう事にした。
「それじゃあアタシも追いかける事にするわ。防子ちゃん、身体借りるわよ。」
「え?」
路宇都のヘルメットは一人でに浮き始め、防子の顔に装着し、防子の身体を自在に動かす事が出来るようになった。
路宇都は防子のアリツフォンを取り出してアリツバイクを出現させ、妹の後を追うように出発したのだった。
愛剥路の運転は車からの一定の距離を保ち、スピードを出し過ぎず、文句なしの安全運転であった。
「良かった。普通に運転出来てる。」
「あ、ありがとうございます...」
「まぁ、免許持ってるから当然か...それにしても女性のバイクに跨らせてもらっているなんて、なんだかめちゃくちゃ情けない気がするな。僕も早く免許取りに行かないとね。」
「そ、そんなに焦らなくていいですよ。行きたい場所があったら、私が連れて行ってあげますから。」
「そう言ってくれるなんて、ありが...あれ?後ろから来るバイクって...」
「お、お姉ちゃんですね。防子ちゃんの身体を借りて付いて来てるんですね。」
「他人から動かせるって結構厄介じゃない?」
そして由人達はNOUYA MARKETに到着したのだった。後から路宇都達も到着した。
付いて来た路宇都に愛剥路は呆れている様子を見せ、路宇都は由人に自分で運転出来るようになるように忠告をした。
「あの、路宇都さん。あなたを被っている人はその間は自分で身体を動かせないんですか?」
「そうね。私を被っている間はその人間の意思をアタシが乗っ取っているからね。」
「反発とかされないんですか?」
「まぁ、愛剥路以外に被らせたのは初めてだから今後そういう人が現れるかもしれないわね。」
「そうですか...」
するとアリツフォンから警告音が鳴る。
「出たな。このまま行くぞ!」
「はい!」
「しょうがないわね。付いていくわ!」
由人達は直様、カテラスの出現した現場に向かった。
カテラスが出た現場はダムだった。カテラスは右手に付いているバキュームでダムの水を吸い取って、チューブを通って背中に付いているポンプに溜め込んでいく。
由人達が到着した頃には、ダムにいる人達はすでに避難した。
「おい!その水をどうするつもりだ!」
「この水は我らカテラスが頂く。そうすれば人類は水が飲めなくなり、やがて飢え死ぬ事になるだろう。このウォレスカテラスの手でな。」
「あなたも元々は人間のはず、なのに何で!」
「命令だからだ。」
「そんな事はさせません!」
由人達は武着装をするが、流石に路宇都を被ったままにはいかないので一旦外してもらうように頼み、路宇都はアリツバイクに置いた。
路宇都を被っていた防子はこの状況の事態を飲み込めてなかったが、とりあえずカテラスが出現した事は理解した。改めて武着装をする体制に入るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます