#11「二輪と四輪」B

 公園にやって来た僕は愛剥路に質問を投げた。


「愛剥路はあのカテラスが許せないか?」


「乗り物を人殺しに使うなんて許せないわ!」


「その言葉で許せないのは分かったけど...一応メットを外した状態でも聞いておこうかな。」


 僕はメットを外して、控えめで気弱な愛剥路の状態でもう一度同じ質問をした。


「だって自分の大好きな物が悪く思われた嫌じゃないですか...私は子供の頃から乗り物に乗る事が好きでした。お父さんのバイクに乗っていろんな所に行ったりしました。お母さんの車でも色んなな所に行きました。」


「両親も乗り物が大好きなんだね。」


「そんな私の大好きな車やバイクに襲われて嫌な思いをしてしまったら、その人は車やバイクを見かける度に襲われた出来事がフラッシュバックしてしまいます。だから私はあのカテラスが許せません...!」


 本心だという事が完全に分かったので、僕は愛剥路にアリツフォンを渡す決意をした。しばらくしたら防子の乗った車が来た。


「防子、アリツフォン持って来たか?橙色の方。」


「ちゃんと持って来たよ!由ちゃん!」


「それは?」


「愛剥路のアリツフォンだ。」


「私の...ですか?」


「そのカテラスが許せないのなら、これ以上大好きな物が利用されたくないないなら、自分で阻止すればいい。」


「由人様...分かりました。私が止めます!」


 渡してしまった。でもさっきの言葉は本気だし、きっと大丈夫だろう。

 するとアリツフォンから警告音が鳴る。今度こそ止めて見せます!と言うと愛剥路はメットを被ると、僕達は防子の車に乗って現場に向かう。


 現場は能野町のスーパーマーケット「NOUYA MARKET」の駐車場だった。

 近くのバス停で停車していたバスが急に動き始めた。バスの乗客の悲鳴が駐車場に響く。

 僕と防子は車の中で武着装をして車を降りてアリツハンドを発動して二人掛かりでバスを止めた。


「みなさん、今の内に逃げてください!」


 バスのドアを開けて乗客を非難させる。そしてカーバイカテラスが姿を現す。

 僕は愛剥路を連れて武着装をさせるので、防子ことシーリアにその間足止めするように言った。


「なんだ、今度は緑色の女が相手か?」


「私が止めて見せる!」


 シーリアとカーバイカテラスが戦っている隙に愛剥路を人気のない所に連れて行った。


「愛剥路、メットは外した方がいい。多分苦しくなるから...」


「分かったわ...は、外しました...」


「よしじゃあ武着装のやり方だけど...」


「それなら、さっき由人様のやり方を見てたので大丈夫です!このチップを挿し込むんですよね?」


 愛剥路は「Chip (Vehicle)」と書かれたアリツチップをアリツフォンに挿し込んだ。


[Vehicle In]


電子音声の後に待機音が鳴る。


「ぶ、武着装!」


掛け声を言って、愛剥路はCERTIFICATIONの文字をタップした。


[CERTIFICATION. In Charge of Vehicles.]


再び電子音声が聞こえた瞬間、愛剥路の周りに光が纏って、愛剥路は武着装を完了させた。


「出来たわよ!由人さ..君!」


 姿はアリツフォンと橙色で額に車とバイクが交差したマークが入っている。それ以外は概ねアリツシーリアと同じだった。そして顔が隠されている状態なので傲慢で自信がある状態の愛剥路だ。


「で、これはアリツ何なの?」


「それは...アリツビークラーだ。」


「分かったわ!では防子さん...もといシーリアの所に向かうわよ!」


 ビークラーはアリツフォンを取り出してアリツバイクを出現させた。

 風防とヘッドライトの間にビークラーに付いている車とバイクが交差したマークが入っている。

 キーシリンダーに当たる所が二つのチップの差し込み口になってておりアリツチップを二つ持っていたビークラーはもう一個のチップを挿し込んでエンジンを掛ける。

 アリツバイクに乗ったビークラーはシーリアの元に向かったが、僕は置いて行かれたので、自分の足で向かう事にした。


 その頃、カーバイカテラスはシーリアにウエッパー同様に二台の車で挟み撃ちにしており、シーリアは二台の車を止めていた。

 しかしそこで正面がガラ空きになったシーリアにもう一台車を操り、シーリアに衝突させようとしていた。


「死ねぇ!」


「このままじゃ...」


 その時、目の前に急いで走って来たウエッパーが現れて、正面衝突させようとした車を見事に止めたのであった。


「ウエッちゃん!」


 僕は死に物狂いで急いで駆けつけてシーリアに迫っている車をアリツハンドを発動させた両手で止めた。危なかった...


「何だと!?」


 するとアリツバイクに乗ったビークラーがカーバイカテラスを轢いて吹っ飛ばした。


「ぐは!橙色の奴だと、こんな奴は聞いた事ないぞ!」


 アリツビークラーはアリツバイクから降りてアリツバイクを引っ込めた。


「カーバイカテラス!あんたはこのアリツビークラーが成敗するわ!」


「よ、よくもこのカーバイカテラス様を弾きやがったな〜!だったら奥の手を見せてやる!」


 カーバイカテラスは四台の車を操り、僕達三人を交差に挟み撃ちに轢かせようとする。


「これなら止める事も、避ける事もできん!三人まとめて轢かれ死ね!」


 四台の車は僕達に迫って来た。


「カッカッカ!これが交通事故と言う奴だ…少々過激だったかな~?」


 しかし僕達は、シーリアの発動したアリツバリアーで襲撃を防いでいた。危なかった...


「なっ!?バリアー!?」


 アリツビークラーは再びアリツバイクを出現させた。アリツバイクの二つ目の挿し込み口に「Break Chip(Vehicle)」と書かれたチップを挿し込む。


[Break Standby]


 待機音がなり、右ハンドルを捻った。


[Vehicle Break]


 アリツバイクのビークルブレイクを発動した。同時にシーリアもアリツバリアのディフェンスブレイクを発動させていた。


「こうなったらそのバイクを操ってやる!」


 カーバイカテラスはアリツバイクを操ろうとしたが、特に何も変わらなかった。


「音波を出しているのに操れないだと!?何故だ!」


「う〜ん、やっぱり普通のバイクとは違うって事なのかしらね?」


 困惑するカーバイカテラスにシーリアが指を挿し、バリアが猛スピードで飛ばして命中させた。

 怯んだカーバイカテラスにビークラーがアリツバイクで風が突き抜けるスピードで突撃し、吹っ飛ばした。


「カー!?これが衝突事故って奴かーーーーーーー!?」


 吹っ飛ばされたカーバイカテラスは爆発した後に人間に戻った。例の如く通報して僕達は車に戻ってその場を後にした。


「愛剥路...そのどうだった...?」


「こ、怖かったけど、でもこれでもう乗り物が悪く使われる事はありませんよね?」


「でもまた、そういう奴が現れないとは限らないよ。」


「その時はまた倒します。それに乗り物じゃなくても好きな物が悪い事に使われるなんて許せませんから。」


「そっか。これからもよろしくな愛剥路!」


「はい!」


「愛剥路さんヘルメットはどうしたの?」


「えっ?...あー!忘れて来てしまいました!」


 好きな物が人々を襲われるために使われるのは許せないのは僕も同じだ。

 同じ気持ちの愛剥路ならこれからもきっと心強い味方になるだろうと思った僕だった。

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