#6「屋敷生活のルーティン」A
朝が来た。
小鳥の囀りが耳に入り、カーテン付きベットから起床し、パジャマから私服に着替える。ベットで寝た事なんてなかったし、パジャマなんて子供の時以来だ。
大人になってからはいちいち着替えてから寝る余裕なんてなかったし...
「由ちゃん起きてる〜?」
防子が部屋の外から声をかけてきた。
「朝ごはん出来たから入っていい〜?」
「ああ。いいぞ。」
「じゃあ、失礼しま〜す。」
防子は料理をワゴンに乗せて、僕の部屋のテーブルに配膳していく。料理は食パンと目玉焼きにソーセージ等の朝食の定番とも言える料理が揃っていた。
「ありがとう。いつも部屋に持ってきてもらって悪いな。」
「そんなの気にしなくていいよ。これも私の務めだからね。」
「そうか。それじゃあいただきます。」
僕が食事もしている間、防子は部屋でじっと待っている。それにしても、この現状を自分ではまだ受け入れられていない所もある。
アパート暮らしで工場勤めの一人暮らしをしていた僕が、何人もの人達がいて、専属メイドが付いて(しかも幼馴染)屋敷で生活するなんて。あんな休日の気が向いて書いた下手な絵のおかげで。仕事も今はこれといった事もしてないし。
「ご馳走様。」
「はい。お粗末さまでした。」
「防子もさ、次からは一緒にここで朝食取らない?」
「え、でもそんなの...」
「やっぱり一人より、誰かと一緒の方が良いかと思うんだ。駄目かな。」
「...私も由ちゃんと一緒に食べたいと思ってたの。由ちゃんがそう言ってくれるなら...喜んで!」
「...ありがとな」
防子は本当にいい人だなぁ。そう思うと何だか超戦士にしてしまったのは、何だか申し訳なかったかな...と僕は心の中で思った。
「防子、僕屋敷に来てからなんか何もしてないんだけど、何かする事ってない?」
「何かって?」
「仕事だよ。いくら何でも何もしないで、人様の家に居座るなんておこがましすぎるよ。」
「で、でも、未央理様は由ちゃんは何もしなくて良いようにしていいと仰っていたので...」
「だけど、これじゃあ僕の気が許さないんだ!お願いだ!防子!」
「う〜ん。そこまで言うなら...」
防子に頼みこんで、僕はいくつかの手伝いをする事になった。
まずは皿洗い。屋敷内の食器を洗うとのことだ。なので数がもの凄く多い。
フォークやスプーン、皿はもちろんの事、箸や調理器具、その他諸々とにかく数が多い!僕は次々に食器を洗っていった。
「お上手ですね!由人様!」
「そんな、大袈裟ですよ...。」
「私達も毎日大変ですので、助かります!」
「皿を洗うのは、子供の頃からずっとやっているので。僕で良ければ毎日やりますよ。」
使用人の人達に褒められた。人に褒めてもらえるなんていつ振りなのだろう...
次は掃除。屋敷というのもあって広いが、戦いに身を投じる者からすれば、掃除をトレーニングの一つと言っても過言ではないだろう。
掃き掃除や拭き掃除にモップ掛け、場合によってはゴミ出しに行く事も頼まれる事もあるだろう...と思われる。
「 由人様、ご無理はなさらない方が...」
「大丈夫ですよ。それに体を動かしていたいというのもありますので、無理のない範囲でやりますよ。」
そして庭の手入れ。庭の草刈りや高枝を切ったりする。今は夏という事もあって、汗が身体中からダラダラと流れてくるのを感じる。
「由人様!あまり無茶をしてはいけません!十分な水分補給をとって、休憩をきちんと取って下さい!」
「は、はい...分かりました。」
ちょ...ちょっと無茶しちゃったかな...屋敷なので当然広くて大変なのは重々承知しているけど、これも自分を鍛えるには必要な事だ。
今後生きていく上で役に立つ事だってあるかもしれないからね。
これが僕が現状の屋敷での仕事だ。
「お疲れ様。由ちゃん。炎天下の中での庭でのお仕事は大変だったよね?」
「汗が止まらなくてね。けっこう心配されちゃったかな。」
「でも、どうしてそこまでしてお手伝いをしたいの?」
「これから戦いに身を投じるんだから体を動かしておかないとね。それにやっぱり住んでいるからには、
一緒に住んでいる人達の役に立ちたいんだ。未央理さんに多くの使用人の人達。それに防子にもな。」
「由ちゃん//」
それにしてもこんな急に転がり込んでおいて、様付けで呼ばれるなんて、なんか申し訳ないような気がするな...
さっきからずっと申し訳ないと感じてばかりな気がする。どうしても気を使っちゃうのかな...
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