#3「豪邸と再会」A

 全ての事を済ませ、ついに新しい移住先に行く日がやって来た。

 退職もして、アパートの荷物も全て移住先に運送済みだ。

 今日は特別に彩絵花さんが移住先に送ってくれると言い、今は正にその移動の真っ最中だ。それにしてもよくこんな二日で用意出来たものだ。

 まぁこれからも一人で生きていくのだろう。己の身は己で守る。だから僕にこの力を与えたのだろう。窓を見て、そんな事を思い景色を眺める。

 すると一際目立つ屋敷が目に入った。遠目でも分かるくらい広く、大きな庭がある事が一目で分かるくらいだ。段々近づいて、つい釘付けになってしまう。


「こんな屋敷に一生で一度でいいから住んでみたいな〜。でも僕には一生縁はないだろうな〜。」


 思わずこんな事を言ってしまった。すると屋敷の門前で止まってしまった。贅沢言いすぎて怒らせちゃったかな...?


「なら良かった!今日からここがあなたの新しい住処よ。良かったわね!縁があって。」


「...はい?」


 そして彩絵花さんに無理矢理降ろされ、後は中で詳しく聞いてねと言って彩絵花さんは帰ってしまった。


「うそ...ここが今日から僕が住む所なの?間違えてるんじゃないよね?」


 あれ?でも、表札に分部って書いてある...って事はあの人の家なのかな?

 僕は門のインターホンを恐る恐る押した。すると茶髪のメイド服を来た女性が門にやって来た。本物のメイドさんなんて初めて見た...。


「どちら様でしょうか?」


「あ、あの〜彩絵花さんに連れられてここに来たんですけど...」


「あなたが彩絵花さんの言っていた方ですね。話は聞いています。どうぞお入り下さい。」


「あっ、ありがとうございます...」


 どうやら合ってたみたいだ。まさかこんな豪邸に住むなんて。いいんだろうか?


「私はこの屋敷のメイド長を務めている大類 桃江おおるいももえと申します。」


「あっ、武響由人です。」


「まずは、家主にご挨拶をして下さい。ここが家主の部屋です。」


「えっ!?あっ、はい。」


 桃江さんがノックすると中から声が聞こえ、部屋に入った。するとそこには、セミロングのブロンドカラーでスタイルの良い女性が座っていた。


「君が叔母さんの言っていた武響由人君だね。私はここの主人兼家主の分部 未央理わけべみおりです。」


「む、武響由人です。あの...僕今日から本当にここに住むんですか...?」


「えぇ、そうよ。今日からここを自宅だと思ってくれていいわ。」


「いや、それは...」


「聞けば、両親はもう亡くなっているとか?辛かったでしょう?両親がいなくて一人で住んでたなんて。でももう大丈夫。ここには何人もの使用人がいるから寂しい思いはしないと思うわ。」


 まるで天涯孤独のような感じに言われてる気がするけど、親戚と住んでて良くしてもらっててたけどね...。まぁ四年くらい一人で暮らしていたけど。


「あっ、じゃあ僕ここで働くって事ですよね?何でもしますのでよろしくお願いします!」


「えっ?しなくていいわよ?」


「...えっ?」


「叔母さんがあなたは恩人で重要人物だから、あまり大事にしたくないと言ってたから、ここに住むだけでいいのよ。」


「いやいや!それは流石に悪すぎますよ!何か仕事をしないと申し訳ないですよ!」


「そうなの?あんまり怪我させないように言われてるけど...じゃあ皿洗いでもしてもらおうかな?」


「あっ、分かりました...。」


 流石に皿洗いだけじゃ、駄目だと思うな...まぁほかの仕事も徐々にやっていくようにしよう...


「あなたがあのアリツシステム...だったっけ?考えたのなら重要人物なのは間違いないかもね。」


 ...重要人物なのに、その用語は初めて聞いたのですが。


「それにしてもこんな屋敷に住めるなんて夢みたいですね。」


 いや、もしかして夢なのかもしれない。試しに頬をつねってみよう。...痛たた!夢じゃない!


「ど、どうしたの!?由人君!?」


「い、いえ、夢かと思いまして...つい」


 あ〜こんなお嬢様の目の前で、つい変な事をしてしまった。


「そういえば、彩絵花さんの事を叔母さんと言っているけど、未央理さんとはどういったご関係で?」


「叔母さんは私の父親の妹なの。昔はここで一緒に暮らしてたんだけど、ちょっと前に息子の拳也君と一緒に出ていったんだ。」


「そうだったんですか...未央理さんのお父様はどこに?」


「今は海外に行ってるの。でも気にないで。よく仕事で海外に行くから日常茶飯事なの。」


「そうなんですか...。」


「だから、私がこの屋敷の家主をしているの。まだ二十三歳だけど、桃江や環助のおかげでなんとか務まってる...って感じかな?」


「環助?」


「あぁ、執事長よ。」


 執事までいるんだ...僕と一歳差なのに、余裕のある感じで豪邸の家主を勤めて、使用人の人達を面倒を見てるんだよね。すごいな。自分とは何もかも違うな。僕も今日からここに住むんだから未央理さんの役に立てるように、頑張っていかないと!


「そうそう。君には専属メイドをつけるから。桃江、あの子を呼んできて。」


「かしこまりました。」


 桃江さんは部屋を出で行った。


「い、いいですよ!そんな専属なんて、恐れ多い!」


「重要人物だからね。世話係が必要かと思ってね。」


 そして、桃江さんは一人のメイドを連れて部屋に戻ってきた。


「あっ、来たわね。それじゃあ挨拶を。」


「は、初めまして!専属メイドを務めさせていただきます!壁玉 防子です!よろしくお願いします!」


「さ、防子!?」


「...えっ!?由ちゃん!?」

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