#2「互いの説明」B

「そういえば、あのカテラスって怪物は何ですか?」


「私もまだ詳しい事は分からないけど、分かっているのは人々を脅かす存在という事だけだわ。」


「倒したら人間に戻りましたよね?」


「...原因不明の失踪事件を聞いた事ない?」


「...!それって!」


「恐らく、失踪した人々がカテラスになっているのだと、私は読んでいるわ。」


 まぁ、そうか。それしかないかもしれない。そうじゃなきゃ千人も攫うのは難しいと思う。考えたくないけど。


「まぁ、とりあえずあなたはもう今の仕事はやめた方がいいわね。住む場所も変えなきゃね。」


「いや、急に言いますね!どうするんですかそんなの!」


「住む場所はこの住所に書いてある所に行けばいいわ。仕事をやめるのは自分でどうにかしてね。」


「えぇ...というか今更なんですけど、僕より他の人を超戦士すれば良かったんじゃ...」


「自分が考えた物は、一番最初は自分が身につけないと思いませんか?由人さん?」


 自分の身は自分で守れ。って事なのかな?まぁ、それだと納得いく...のかな?



 一回自分の住んでいるアパートに送ってもらい、早急に引越しと退職をする準備をする事になった。

 早急なので、退職については退職代行をお願いするしかない。引越し先である住所は、あの廃小屋と同様の能野町だった。


「それにしても、あんな廃小屋に住んでいるのに、住む場所をすぐに用意する事なんて出来るのだろうか...?」


 しかし、仕事も住居も変えて僕は一体これからどうやって生きていくのだろうか?まぁ、どうなってもいいか。本当の親はもういないのだから。友達も言うほどいないし。


「あっ、そういえば一人いた。色んな事があって度忘れしてたけど、親戚の家に来た時に隣の家で僕が高校を卒業するまで仲が良かった。そんな親しい友人が一人...僕より少し年下だけど。」


 すると、突然アリツフォンから音が鳴り始める。


「ビックリした!この点滅してる所に行け!って事?」


 僕はアリツフォンのマップに点滅している場所へ向かう事にした。



 現場の町に着くと、人々の悲鳴が響く。そのカテラスは全身が銃の形をしていて、頭上の銃口から真上に空砲を撃ち上げて人々に恐怖を抱かせる。


「うわーー!!」「きゃーーーー!!」


「ほれほれ〜逃げねぇと、俺様の銃弾が当たっちまうぜ〜!」


 うわ...喋れるカテラスもいるのか...あれって、変化している人間の意思なんだろうか?僕は人気のいない物陰に隠れ、武着装する事にした。

 アリツフォンにアリツチップを挿し込む。...名前、アリツチップでいいんだよね?


[Weapon In]


 電子音声の後に待機音が鳴る。


「武着装!」


 掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップした。


[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]


 再び電子音声が聞こえた瞬間、僕の周りに光が纏い、武器の超戦士「アリツウェッパー」に武着装した。

 武着装を完了させた僕はカテラスの前に姿を現す。


「人々に脅し撃ちをするのはやめろ!」


「あ〜?誰だ?このピストルカテラス様に口答えする奴は?」


「俺はアリツウエッパー!あんたも元は人間だろ?何故こんな事を...」


「あー!そうさ!俺が死刑を執行されそうになった時に、急に何者かに攫われてよ〜!もう死ぬかと思ったが、目を覚ました時にはこんな体になっててよ!」


「それで、何故町を襲う!」


「俺は人がビビってるトコ見んのが大好きなんだよ!今まではちと手間だったが、この体だと好きに銃が撃てるから最高だぜ〜!バッハハハハハ!」


 攫った人の中には、こんな人もいるのか...でも怪物にするには、ある意味打って付けなのか。この人は人間に戻っても、どの道生きてはいられないだろう...。


「というワケでテメェも死ねぇー!」


 頭のピストルから銃弾が発射されて、僕は何とか躱したが、後ろの大木に当たると、大木は粉々に粉砕された。あんなの当たったらヤバいな...


「あっ...」


 すると、幼い少年が腰が抜けて動けなくなっている姿があった。


「ビビってるガキはっけ〜ん!!」


 そう言ったピストルカテラスは頭の銃口も少年に向けた。

 おいおい!こんな少年に撃とうとするとか、本当に碌でもねぇ奴だな!僕はすぐさま少年の元に駆けつける。


「うわ〜ん!!」


 そしてビストルカテラスは発砲し、僕は少年を庇い背中を撃たれてしまった。けど、武着装していると言うほどダメージはなく、ちょっと痛いくらいだった。


「大丈夫かい!」


「う、うん。でも...」


「僕は大丈夫だ。さぁ、早く安全な所へ!」


「...うん!」


 少年は逃げていった。


「逃すか!」


「させるか!」


「ぐぉ!?」


 逃げる少年を撃とうとしたが、僕は銃を出現させ、カテラスに撃ち阻止した。少年は無事逃げていった。


「もうちょっとでチビるかと思ったのに、何しやがる!」


「こっちの台詞だ!あんな幼い子を躊躇なく撃とうして何考えてるんだ!」


「何考えてるって殺す事を考えてるんだよ!」


「この...!」


 僕は銃にアリツブレイクチップを挿し込む。...名前はもうこれでいいか。


[Break Standby]


 電子音声が聞こえた後に待機音が鳴り、トリガーを引くと四発のエネルギー状の巨大な針弾が発射された。


「へ!?」


 針弾はピストルカテラスの両手足に命中し、岩壁に貼り付けられた。


「た、助けてください〜!殺さないで〜!」


 えぇ...自分が殺されそうな立場になると、すぐ命乞いしたよ...本当にあるんだこんな事...。


「人間に戻って、改めて裁かれるんだな!」


 銃口にエネルギー弾が大きく溜められ、目の前に現れ、トリガーを引く。


[Weapon Break]


 音声と共にエネルギー弾が発射された。


「ゼイアーーーー!!」


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ピストルカテラスにエネルギー弾が命中し、ピストルカテラスは人間に戻った。その姿はコワモテでいかにもな人物だった。

 僕は人気のいない所で武着装を解除し、しばらくしてその人物は救急車に運ばれた。

 本当にこれから一体、僕はどうなちゃうんだろうか...?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る