第24話

 郵便受けを開けると、数枚のチラシがひらひらと落ちた。広い集めていると、一枚のチラシが目に留まった。

 パステルカラーで描かれた可愛いイラスト。

 パンケーキの文字。

 それは、数ヵ月前に海斗との会話に出ていた、駅前のパンケーキ店の週末オープンのチラシだった。



 土曜日。

 美紀はチラシのパンケーキ店に行ってみることにした。そこでもし海斗に会えたら、今度こそちゃんと謝ろうと考えていた。

 

 人気店のオープン初日とあって並ぶのは覚悟していたが、遠目からでも分かる程の予想を上回る長蛇の列を目にして、美紀は尻込みしていた。 

 少し立ち止まって考えていると、最後尾に並ぶカップルの後ろに一人の男性が並んだ。それを見た美紀は、慌ててその男性の後ろについた。

 これがバンドワゴン効果というものなのだろうか。美紀の後ろにもすぐ二人の女性が並んだ。

 美紀は頭を傾け、店の入り口まで続く列を順に目で追っていったが、そこに海斗の姿はなかった。

 漠然と「会えたら」と思っていたが、海斗とはオープン初日に行こうと話していたわけでもなく、二階建ての広い店内では、席をひとつづつ回らない限り見付けることはできないだろう、と気付いた時には既に美紀の後ろに十数人が並んでいた。

 このまま列から抜けるのが惜しくなった美紀は、大人しく順番を待つことにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る