第21話

 午後の陽射しがカーテンの隙間から降り注いでいる。今しがたまで布団の中でゴロゴロしていた。

 忙しない生活から解放された美紀は、こんな時間までパジャマ姿で過ごすこともできるのだ。

 コーヒーメーカーをセットして、カーテンを開ける。ベランダでしばらく放置したままだった多肉植物は、相変わらず元気そうだ。最後に水やりしたのは、確か半月前だった。一度水を与えると半月放ったらかしていても平気なのだ。そして次の水やりの日を健気に待ち続ける。

 人間はそうはいかない。

 そんなことをしているうちに、浮気をされたのだから――。


 観る気もないテレビを付け、ソファーに凭れてぼんやりと窓からの景色を眺める。

 コーヒーをテーブルに置くと、次はファッション雑誌の頁を捲り、そしてまたソファーでうとうとした。


 頬の辺りに温かさを感じて目を覚ますと、もう西日が射し込んでいた。

 美紀は大きな溜め息を吐いた。

 ここ数日、一歩も外に出ていない。

 冷蔵庫の食材が、昨日の夜で底をついていた。


 数日ぶりに化粧をして、散歩も兼ねて駅前のスーパーまで出かけた。

 店内をのんびりとひと回りして、食材を集める。

まだしばらくは『まほろば』には行けそうにないかな、と食パンを手に取りカゴに入れた。

 特売のお米は――今日は歩いて来たからやめておこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る