第9話

 それから数日後、久しぶりに大希とのデートの約束に漕ぎ着けた美紀は、朝から浮かれていた。


「今日めちゃくちゃ可愛いじゃん。仕事終わりにデートだな?」


 顔を合わせるなり海斗に聞かれ、「やっとです」と美紀ははにかんだ。

 不意に、海人が何かを思い出したように、ぽん、と手を打った。


「美紀ちゃんも甘いもの好きだって言ってたよね? もうすぐさぁ、駅前にパンケーキ屋ができるみたいなんだけど、そこ人気店の二号店ですげぇ旨いらしくて。オープンしたら一緒に行ってみない? 婚約祝いに腹一杯ご馳走するよ」


「えーっ、ほんとですかぁ? 私パンケーキ大好きなんです! 行きたーい!! てか私、めちゃくちゃ食べちゃいますよ!」


 スイーツ男子の海斗と、この日はパンケーキの話で盛り上がった。


「そろそろ行く?」


 海斗に促され、美紀は残りのコーヒーを飲み干し、一緒に店を出た。

 そうして、自転車を押しながら歩く海斗と駅に向かう。


「今日も一日頑張ってください」


「美紀ちゃんもね」


 そう言い合って海斗は自転車に股がり、駅前で別れる。それがこのところの美紀の日課になっていた。


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