勝ち組

もうすぐ、バレンタインデー。


同僚に誘われ義理チョコを買いに行った。


義理チョコのつもりだったが、自分が食べたくなるような魅力的なチョコばかりだった。


あずさは、部長に一つ。部署のみんなへ一つ。

それから、自分へのご褒美に一つ買った。


バレンタインデー当日、山本があずさのもとへ来た。


山本「聞いたよ〜あずちん。バレンタインチョコ。本命にあげるって。誰なの?」


あずさ「あずちん?本命?ツッコミ所多すぎます!本命用じゃないですよ。自分へのご褒美です。」


山本「あ、そうだったの?冴島さんに期待させるようなこと言っちゃったわー」


あずさ「冴島さんなら、沢山貰えるだろうし私からのチョコなんていらないんじゃないですか?」


山本「あずちん!そういう考え方良くないよ!」


あずさ「っていうか、あずちんって呼び方なんですか。」


山本「冴島さんはあずちんのチョコ待ってると思うなぁ〜」


本命のチョコなんて、いつから渡してないんだろう。


最後に渡したの…



ヒロトかな?



そういえば、ロクな恋愛してこなかったな。私。



夜の世界はお客さんから山ほどもらうから、バレンタインデーにチョコは見たくなくなるし


誕生日なんて、本当の誕生日を忘れるくらい何日も嘘の日用意してたし



あずさの誕生日はバレンタインデーの翌日だった。



プレゼントや会いに来る客を分散させるために、ずっと偽りの誕生日をしていくうちに本当の誕生日を忘れるようになっていた。



冴島はやはり人気者で、バレンタインデーもたくさんチョコを貰っていた。



その日の夜


残業でいつもより遅く会社を出たあずさ



会社の前にナオがいた



出入り口でナオを見つけたあずさはその場に固まってしまった。



ナオは会社の前に座り込んでスマホゲームをしていて、まだあずさに気付かない。


固まるあずさの後ろから冴島がやってきた。


冴島はあずさの肩を抱き、そのまま歩き出した。


ナオがあずさに気づいて、顔を上げるとあずさの肩を抱く冴島にも気づいた。


冴島はひとりで訳のわからかいことを話はじめた



冴島「あずさ、帰ったらこの前作ってくれたシチューまた食べたいなぁ。」


冴島「明日はあずさの誕生日だから、俺が何か作ろうか?それとも外食がいい?」


冴島「あー結婚式待ちきれないよ。あ、その前に指輪買わないとだよな」


そのまま、歩き続けてナオは見えなくなった。



あずさ「あの、冴島さん。ありがとうございました。もう大丈夫です。」


冴島「ごめん!」


冴島がいきなり深々と頭を下げた


あずさ「あの?冴島さん?」


冴島「前に、女性社員が絡まれないように見張ってるって言ったのは、嘘。あずさちゃんが心配で、ずっとあずさちゃんの帰るタイミングに合わせてた。」



冴島「それで、さっきの男と一度話したことがある。元カレ…なんだよね?前にも会社の前に来ていて、追い返したんだ。」


あずさ「冴島さんが謝ることじゃないです。ごめんなさい。巻き込んでしまって。」


冴島「それでさ…追い返す時に、言っちゃったんだ。あずさは俺と結婚を前提に付き合ってるって」


あずさ「え?」


冴島「本当にごめん。勝手なことして。でも、俺は本当にそうなったら良いなと思ってる。」


あずさ「あの、それで…」


冴島「さっきの彼、言ってくれたんだ。あずさをお願いします。勝ち組の幸せな女にしてやってくれ!って。」



冴島「あずさちゃん、まだ俺のこと何とも思ってないかもしれないけど、これから俺のことを彼氏候補として見てもらえないかな?」



あずさは、黙って頷いた。


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