底の底
ナオ「別れよう」
あずさは涙が止まらなかった。
何度も言おうとして言えなかった言葉。
今までのことは悪夢みたいに感じたのに、この言葉だけは現実味を帯びていて、本当に終わりなんだと突き刺さる言葉だった。
ナオと別れて2週間。
仕事にも行かず、まともに食べられず体重は5キロ減った。
あんな男のために、どうしてこんなにボロボロになっているのか
わからない
忘れたいのに、ナオの笑った顔や寂しそうな顔が忘れられない。
あずさは、部屋を引き払い実家に戻ることにした。
風俗の仕事も辞めて、昼職に戻った。
どん底にいたのに、底の底は空っぽでそこから先は何もないのかもしれない。
半年後
あずさは、コールセンターの仕事に就いた。
マニュアル通りに読んでいくだけ。
時間がたつとナオのことも忘れて元気を取り戻していった。
今までのことはなかったみたいに穏やかな時間が流れた。
ある日、仕事を終えて帰ろうとするとナオの友達のアキトが会社の前に立っていた。
あずさ「久しぶり。どうしたの?」
アキト「あずさちゃん。ナオがさ…ヤバいかも」
アキトが何か言おうとした時
後ろからあずさを呼ぶ声がした。
同僚の冴島だった。
冴島「どうしたんですか?会社の前で。もしかして絡まれてます?」
あずさ「あ、いいえ。大丈夫です。」
アキト「いきなり来てごめん。やっぱり何でもない!」
アキトはあずさの変化に気づいて、帰っていった。
あずさは自分でも気づいていなかった。
派手な髪色もメイクもネイルもやめて、風俗嬢の面影はない。
今のあずさはナオと会うべきじゃない。
アキトはそう思った。
あずさは久しぶりにナオの名前を聞いて、懐かしくはなったが、戻りたい、会いたいとは思わなかった。
駅まで冴島と一緒に歩き、世間話をしてから帰った。
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