第11話 潰れる前に

「結月…結月…」



――――――「…涼ちゃん?!」


ある冬の寒さ厳しい日、資材庫で倒れている僕を結月が見つけた。


「結月…ママ来てもお金渡すなよ…」

「わかってる。渡すわけない。金宮さんもいるから大丈夫だよ。」


「ゆづ…」

「涼ちゃん、病院行こう。」

「ルイは?…」

「いるよ。」


「涼太…あんた最近遅くまで居たんだって?そりゃ体調も崩すって。病院行くよ。」



―――――――――――――――。


原因は分からないが数回意識を飛ばした。


夢の中にはママが居た。

優しくて甘いママ。


でも僕はルイを呼んでいた。


『ママじゃない!!ママじゃない!!ルイがママなんだ!!ルイ!!…ルイ!!…助けて!!僕はこの人と行きたくない!!…行きたくない!!…ルイ!!!!』



――――――――――――「ルイ!!!!…」


「ルイ…」

「ルイさんトイレだよ。すぐ帰ってくるよ。」

「ルイ…ルイがママなんだ…ママはママじゃない!!ルイ…どこ?…ルイ!!…」

「大丈夫。落ち着いて。すぐ帰ってくるからね…。」

結月は子供のように泣きじゃくる僕を小さな体でら包み込んでくれていた。


「どうしたの?」

「涼太がちょっとパニックになってて。」

「ゆづちゃんとはこんなことなかったの?」

「たまにありました。私を探してました。」

「ルイ!!…ルイ!!…」


結月から交代してルイが僕を抱きしめてくれた。


「涼太、どうしたの。嫌な夢でも見た?」

「…ママが来た。僕を連れてくって…。」

「大丈夫よ…。連れてかせないから。大丈夫。あんたの事は私がちゃんと見るから。大丈夫…。寝なさい…大丈夫だから…。」


僕は優しく背中を叩かれてまた眠りに着いた。


「結月あんた大丈夫?潰れそうなんじゃない?」

「大丈夫です。ルイさんがいて下さるので。」

「またアミが…母親が連絡してきたの?」

「はい。『お金貸してほしい』って。」

「着信拒否にすればいいのに。」

「涼太の携帯に電話してくるんですよね。だから無理矢理は出来なくて。」

「…いつまで期待してんだろうね。」

「え?」

「期待してんだよね。『いつか迎えに来てくれる』『いつかまともになった母親が来てくれる』って。」

「もう大人なのに?」

「涼太の奥底に子供がいるの。。こんな顔してガタイしてね。…耐えられる?」


「大丈夫です。私の前では子供なんで。何するのも私にくっついて回って、たまにうっとしいときもあるけど、でも居ないと居ないで寂しくなっちゃって。」

「…きつくなる前に言っていいからね。」

「ありがとうございます。」




「ゆづ…」

「いるよ。大丈夫だよ、」



―――――――――――――――。


結局、疲労から来る熱と脱力感だった。

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