第4話 変わらない
「結月…結月…」
結月が透明になっていく。遠くに消えていく…。
「結月!!…」
ある日の昼下がり、僕は結月の膝の上で飛び起きた。
「危ないから。どんな夢見てたの。」
「結月?…」
「そうだ…」
起きて早々に結月を抱きしめた。
「またあたしが居なくなる夢みたの?」
「うん」
「大丈夫だよ。ずっとここにいるから。」
「…うん。」
「不安なの?」
「うん」
「大丈夫だよ。」
「うん」
───────────その日の夜中。
ベランダで涼んでいた。
暑すぎず寒すぎず、次の日が休みでウイスキーを瓶のまま飲んでいた。
「…寝れないの?」
「寝とけよ。疲れ取れねぇぞ。」
「……。」
小さな体の結月が後ろから僕に抱き着く。
「なんでお前はそんな可愛いの。」
「涼ちゃん大好きだよ。」
「大丈夫。俺の方が大好きだから。今から証明してやるか?」
「…ねぇ、なんでなのにそんなに不安なの?」
「わかんね。わかんねぇけど幸せ。お前が居て幸せ。」
一瞬力が抜けた隙に結月の方を向いて包み込んだ。
「ゆづは俺の宝物だよ。」
「わかってる。」
「不安なのはどうしょうもない。店でお前が俺意外と話してるのも気に食わねぇのに。なんなら電話も気に食わねぇ。」
「病気だよそれ。」
「仕方ないだろ。」
「…でも気にされなくなるのも嫌。」
「居心地いい?」
「うん。ウザイけど、でも、それがいい。」
「…結月。愛してる。」
「あたしもだよ?」
「…苦しい。」
「大丈夫。」
「……」
「……」
結月にキスした。
でもこんなんじゃ足りない。
でも我慢した。
───────────────。
翌日、なんの前触れもなくLINEで結月へ思いの丈を送った。
溢れて溢れて止められなくなりそうでおかしくなりそうだったから。
僕はリビング、結月はキッチンでコーヒーをいれている時だった。
彼女はずっとそれを読んでくれて、暫くして、
「涼太、来て。」と呼ばれた。
結月が僕を呼び捨てにする事はあまりない。
僕がちょっと恐る恐る結月の傍に行くと、
僕に抱き着いてきた。
「涼ちゃん、ありがとう。」
「いいえ」
僕は結月を思い切り抱きしめた。
そのままキスして…抱き上げて…そのまま寝室へ…。
───────────────。
「涼ちゃんはバカだね。」
「なにが?」
「あたしを好き過ぎる。」
「ダメか?」
「四六時中あたしのこと考えてるでしょ?」
「そうだよ。どうやって気持ちよくしてやろうかなって。」
「ちょっとは仕事しろ。」
「してるよ?結月の10分の1くらい。」
「100分の1ね。」
「そう見えてるのか。」
僕が自分でひたいを叩くと結月が笑う。
僕はこの間もずっと結月を抱きしめている。
「…結月。」
「ん?…」
「離したくない。ずっとこのままでいたい。」
「いいよ。このままで。」
「マジで離したくない。」
「わかってる。」
「……」
「なに?」
結月の目の奥を見つめた。
「浮気してねーだろうな?他の男みてねーだろうな?」
「あのね、他であたしが満たされると思ってるの?あたしは涼ちゃんしか知らないんだよ?」
「どうすんだよ。俺よかいいのわいて出てきたら」
「ゴキブリじゃないんだからさ。」
「害虫でしかない。」
「でもそうだな。あたしもそう。たまに金宮さんも嫌な時あるから。涼ちゃんと近すぎて。」
「一緒じゃん。」
「一緒だね。」
「…ゆづ。」
「うん…」
──────────────────。
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