第3話 8年後。

─────────8年後。


「結月…結月…結月!!…」


「また探してる。」

「探してるね。」


僕が昼ご飯を食べて少し寝ているとまた寝言を言っていた様で、金宮さんと結月が話していた。


「ゆづちゃん居ないとダメだもんね。」

「本当に。どうにかなんないかな。」

「でも可愛いでしょ?」

「うん。後ろついてくる子供みたい。」


「……」

「起きそう。」

「……」

「店長、お店ですけど。」

「おうちです。」

「いえ、お店です。」

「…可愛いね。」


そばに居た結月に抱きつくと、

冷静に対応される。


「わかったから早く起きて。」

「……うん。」



────────────。


「結月、」

「なに?」

「午後にウォーターサーバーの入れ替えくるから。」

「わかったよ。カレンダー書いてあったもんね。」

「うん。書いといた。」

「結月、」

「なに?」

「…可愛いな。」

「仕事して。」



あまり関係は変わってない。

子供もまだ居ない。

多分どちらかに問題があるんだと思う。


何度も話して何度も喧嘩した。

でも、時に任せる事にした。



西野は数年前に辞めた。

残ったのは僕と金宮さんと結月。


居づらくなったのが原因。

でも今でも2人で飲みに行ったりなんか詰まると連絡を取り合う仲ではある。


また、年月が経つ事に結月への縛りも強くなって行った。

でも結月はそれに反発することもなく、受け入れてくれていた。



───────────────自宅。


「結月。」

「なに?」

「疲れたなら息抜きしてきていいからな。」

「ありがとう。金宮さん?そんな事言わせたの。」

「別に誰って訳じゃない」

「あたしが視界に入ってない時間を涼ちゃんは耐えられるの?」

「がんばる。」

「気持ちはありがたいけど、断る。」

「……。」

「あたしは、涼ちゃんのそばにいる時間が好き。ずっと見てたい。この気持ちは受け入れてくれる?」

「うん。お前がいいなら。」

「あたしはいいよ。それがいいの。」


家にいる時、2人の時は基本的に結月に触れている。手を握ったり、結月の膝に頭を乗せたり、抱き寄せたり、結月が膝に乗ってきたり…。


何一つ変わらない、日々可愛く綺麗になっていく。


「結月…結月…結月……」

「なに?」

「だいすき。」

「あたしも大好きだよ。」

「…しよ?」

「後でね。」


そう。変わったこと。

なんのしがらみもなく後ろめたさを感じることも無く結月を愛せるようになったこと。───



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