第2話 祭りの夜に
──────結月、高二の夏。
「結月、来週の祭り一緒に行かないか?彼氏とか居ないんだろ?」
「彼氏は居ないですけど、その日用事があって。」
「用事?そんなに大事じゃなきゃ一緒に行かない?毎年うちの店、14時頃には店閉めるから行けるよ?」
「でも、用事あるし、ごめんなさい。」
結月は少し困った顔をしていた。
だから間に入った。
「結月、俺と雑貨屋行くんだよな。店の物探しに行くって話してたもんな。」
「そう。店長と約束してたんだ。ごめんなさい。」
真っ赤な嘘。
男性社員がその場から居なくなると結月の手を握った。
結月は微笑んでいた。
───────────────閉店後。
「結月。」
「なに?」
「ちょっと話あんだけど、仕事の話だからここでいい?」
「どうしたの?」
結月を事務所の椅子の隣に座らせる。
「結月、来週の祭りの日なんだけどさ、14時くらいまでか、もしくは午前中だけ。もしくは今までやったことないんだけど夜にかき氷とか酒とか出してみるかなとか考えてたり、でも、昼間のあれみたら腹立ったから一日休みにしてやろうかなとか考えてたりまとまんねぇのよ。」
「確かに怒ってたよね。」
「だってさ!俺だってお前と行きたいし!」
「行きたかったの?」
「当たり前だろ!」
凄く自然に結月が僕の膝の上に乗る。
「涼ちゃんヤキモチ妬いたの?」
「…だって、お前は俺のものだろ?」
「あたし達付き合ってた?」
「……だけどさ!」
「あたしはいいんだよ?」
「…ただ遊びたいだけじゃない。」
「わかってるよ?だから言ってるんだけど?」
「…付き合えよ。」
「何?聞こえない。」
「…俺と付き合って。頼むから他の男見ないで。」
「……よく言えました。」
結月はひたいを重ねて微笑んだ。
「…ゆづ、お前俺のものなんだよ。」
「そうだよ。」
「結婚しよ。お前がその気になったらでいいから。」
「わかった。そうだな。高校卒業する頃かな。」
「大学は?行かねぇの?」
「うーん。ここの店で涼ちゃんといたいなとも考えてた。」
「後悔しねぇの?」
「後悔はしないよ?大学は行きたい時に行けるから。ならあたしは今したいことをしたい。」
結月は情けない顔した僕にキスをした。
結月が愛しすぎてたまらない。
可愛くてたまらない。
目に入れても痛くない…。
────────────お祭り3日前。
「前から話してた通り、店は午前中で締めます!以上!」
「そうだよね。お昼超えるとバタバタ来はじめるしなかなか閉められないもんね。毎年の事だけどさ。」
「そうなんですよね。なんで、当日は金宮さんにはご家族との時間にあててもらえるようにして、結月は僕と店の仕入れに隣町に行ってきて夜はそのままお祭りに行こうかなと考えてます。」
「…さらっと言ったけど、そういう事??」と少し驚いている。
「一応僕は先々考えて動きたいってゆづには話しました。」
「ゆづちゃん、いいの?店長で。」と結月の不安を煽る。
「そうですね。気が変わるかもしれないですね。」と笑う。
「捨てられないようにね。」とからかわれる。
苦笑するしかなかった。
─────────お祭り当日。
「閉めるよー。」
「はーい」
「はーい。」
僕はまたこの日、男性社員が結月に話しかけてるのを見ていた。
すると、結月が少し声を荒らげて、
「しつこいって!無理だって言ってんじゃん!」と言っていた。
僕は傍に行って、思わず結月を抱き寄せた。
「どうしたよ。」
「コイツがしつこいの!涼ちゃんがいるって言ってんのにずっと言ってくんの!」
「ごめんな。」
「なんで涼太が謝んの?!」
「わかったから。落ち着け…。」
職場で相応しくないのは分かっていた。
でもこうしたかった。
「涼ちゃん…」
「ごめんな。」
「涼ちゃんは悪くないよ…」
「西野くん、もうやめたら?さっきも聞いたでしょ?涼ちゃんと結月はもう出来てんの。あんたの入る隙はもうないよ。諦めて。見苦しい。」
金宮さんは、僕と西野が入った時から傍で見てくれてる人。
たまに厳しい事をぶつけてくれるお姉さん的な人でもある。
西野も僕も、結月もみんなを可愛がってくれている。
「わかったよ…。」西野は肩を落としていた。
─────────閉店後。
「金宮さんごめんね。」僕が金宮さんに謝ると、
「ゆづちゃん可愛いからね。男はほっとかないでしょ」と笑ってくれていた。
「でもあたし、ああいう人苦手で…」
「いいの。びっくりしたけどちゃんと言える子でよかったわ。」
「…喧嘩したら負けそう。」
僕がぼそっと言うと、
「あのね、痴話喧嘩なんて男が折れとけばいいの。その方が上手くいくんだから。」と金宮さん。
「今もそうでしょ。」と結月。
「そりゃねぇ、お前が可愛いから。」
「本当に馬鹿なんじゃないの?誰の前でもサラっと言わないでよ、恥ずかしい。」
「恥ずかしい?事実なのに?俺、全っ然人前でお前とキスできるけど?」
「それがヤバいんだって!」
「そうか?お前可愛いからなぁ。」
「でもよかったわ。涼ちゃんがここまで変わってくれて。こんなに笑う子じゃなかったからね。」
「そうなんですか?」
「そうよ?結月ちゃんが来てからだから。」
「…いや、俺、結月に怒られてんのよ。固すぎる、私が嫌いなのかって。」
「え?言われちゃったの?良かったんでしょ。言ってくれる子で。」
「そうだけど、怖かったよ?」
「涼ちゃんは言う時言わないとちゃんとしないから。」
金宮さんがそう言うと、
「そうですよね」と結月。
僕は口から魂が抜けていた。
────────────店を出た後。
結月を助手席に乗せて隣町に向かっていた。
「結月、今日うち泊まんねぇか。」
「心の準備が…」
「なんの。」
「え?色々あるじゃん!下着とか、パジャマとか、何持ってこうとか。。もっと早めに言ってよ!」
「……なんでそんな可愛いの。」
「うるさい!」
結月が顔を真っ赤にしている。
「なぁ、ゆづ。」
「なに?」
「真面目によ、お前がいい時でいいからな?焦る事ないから。」
「うん。ありがとう」
「極力一人で我慢するから。」
「ごめんね」
「謝んなよ。焦ることない。痛い思いなんて楽しくないだろ。」
「ありがとう。」
「大丈夫。手とか口とかでしてもらうから。」
「あたしまだ高二なんですけど。」
結月が笑いながらこっちをみる。
少し安心した。
───────────────。
雑貨屋を数件回ってまた町内へ戻ってきた。
一旦結月を実家へ届けて後から徒歩で合流しようとしていた。
だが、実家で結月を降ろそうと車を停めて結月を見ると名残惜しくなってお互いが吸い寄せ合うように唇を重ねた。
「ゆづ…これ以上はダメ。」
「どうして?…」
「出したくなる」
「あたしの中で?…」
「……」
自分で言っときながら顔を赤くする僕を見て、
「じゃあ、あとでね」と急にいつもの結月の笑顔に戻って帰って行った。
少し唖然としながら、抑えられなくなっていたのもあって、すぐ家に戻って解放した。
その後、結月と合流して会場へ。
荷物は一旦店に置いた。
その時も抑えられなくて結月を抱きしめた。
すると、結月の方から「今日はいつもと違うね」とまた煽られる。
「触るか?」というと、
「まだ高校生なんですけど」と少し妖艶に笑う。
「お前が大学生ならこのまま突っ込んでるな」
「かわいそうに」
結月は1ミリもぶれることなくタイプな子だった。
その後、店を出て会場に行き2人で焼きそば買ったりクレープ買ったり、金魚釣ったり、射的やったりなんだかんだ楽しんで、花火が始まる時間になる少し前に高台の公園に連れて行った。
「誰もいない。」
「もう少ししたら来はじめる。」
椅子に結月を座らせると、そのまま抱き寄せた。
「我慢できない?」
「ギリギリ。」
「…」
結月は僕にキスして下を触ってきた。
「…出したくなんだろ。」
「出して欲しいんじゃなくて?」
「先にお前をそうしたい。だから俺は今じゃない」
そう答えると結月は離れて買ったものを食べ始めた。
そうこうしてると人が増え始めた。
───────────────花火直前。
「ゆづ、もう少しで上がるぞ。」
スマホを見ながらそう言うと、
結月が体を預けてきた。
そのまま優しく頭を撫でていると、やはり手の置き場所が気になる。
すると、急に耳元で「花火終わるまで我慢出来る?」と聞いてきた。
なので「お前次第だな。」と答えると、
急に手を引かれて茂みに連れていかれた。
その瞬間、花火が上がった。
結月は一瞬笑ったかと思うと、その場にしゃがんだ。
────────────「はぁっ!!……」
飲み込まれる前に結月にキスして分け合った。
「結月、お前もな。」
「するの?」
「大丈夫。……やっぱ俺好みだわ。」
「やっ…ダメ……」
「後で風呂入るから気にすんな。」
暫くすると体を震わせて僕に身を任せた。
……その頃には僕の腕は結月で滴っていた。
────────────。
帰宅して、結月に先に風呂に入るように促した。
その間に収めようとしたから。
けど、耽ってる最中、「シャンプー忘れたぁ!」と呼ばれ急いで片付けて見に行くと、
「…ねぇ、一緒に入ろうよ」
と結月がそのままで立っていた。
「ダメ。まだダメ。」そう口では言ってみたものの、
「それ、どうするの?」と聞かれた。
「え?これ?大丈夫。だからゆっくり入ってて。」
そう言うと、結月に無理やり脱がされた。
「ほら、入れるでしょ?」
──────────────────。
本当に何もしてない。
ただ、風呂の中で抱きしめてた。
何回か「いいの?」とは聞かれたけど断った。
────────────結月が寝た後。
シャワーを流しながら耽った。
でも、気付かれていた。
無言で入ってきて、抱きついてきた。
「ゆづ……手でいい…」
「キスくらいして。」
「…立っとけそのまま。」
────────────翌朝。
「涼ちゃん…」
「ん?…」
2人の体温で暖かくなったベットの中で結月の頭を撫でていた。
「結局ちゃんとしなかったけどいいの?」
「もし出来てもお前がこの先後悔するだけだぞ?なら入れることにこだわんなくてもいいんじゃない?」
「でもああやって一人でするならって思うじゃん。」
「それとこれとは別。お前が足りないだけ。」
「…寝ちゃってごめんね。」
「寝るの我慢してまでする事じゃない。…あぁやってお前の事考えてするのも俺は幸せだったりする。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「ずっとあたしの事考えてるの?」
「そうだよ。お前でいっぱい。」
「……。」
「……。」
「こんな可愛い顔してお前も俺と一緒だな?」
「嫌い?」
「大好き。」
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