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森田 縁の纏った光はすぐに収束し、彼は全身を緑色の輝く鎧を身に纏っていた。黒いバイザー越しに見える目は正義の炎に燃えており、彼を止めることは誰にもできそうにない。
ここで彼の変身プロセスを紹介しよう。サイボーグである森田 縁が右手を挙げて「深緑」と叫ぶことがスイッチとなり、空気中に漂う光の粒子を体に吸収し、全身を覆う緑色の輝くアーマーを展開。ちなみにこの変身を終了するまでの時間は0.3秒程である。
煌めくスーパーヒーローの名は……
「エメラルダー、参上‼」
両手を前で付き合わせての名乗りは二度としないだろうと考えていたエニシだったが、まさか異世界転生から5時間後にその考えを改めさせられるとは思いもしなかった。
突然異形の姿へと変貌したエニシを前にしてオーク達は狼狽したが、正義の宝石戦士エメラルダーは悪人に対して容赦するつもりはなかった。
「エメラルドパンチ‼」
エメラルダーが掛け声と共に光エネルギーを込めた右の拳を近くに居たオークに向かって突き出すと、バァアアアアン‼という音が鳴ってオークの頭は爆散した。
「むっ、威力が上がっている?」
オークの首から湧き出る返り血を浴びながら、エメラルダーは自分の力がいつもより増していることに気が付いた。これは光エネルギーと共に、この世界のマナも取り込んだことによる副作用なのだが、現段階の彼がそこまで気付くことは無い。
仲間を瞬間的に殺され、周囲に居たオーク達は恐怖に駆られたが、一匹のオークが勇気を振り絞り声を上げた。
「おめぇら何を怖がってやがる‼敵は一人ださっさと殺しちまえ‼」
これを聞くとオークたち全員が奮起。斧や剣を片手にエメラルダーに襲い掛かって来た。
「エメラルダーマグナム」
エメラルダーが右の腰のホルスターからリボルバー式のマグナムを取り出して構えるや否やトリガーを引いた。
“バァン‼”
銃口から撃ち出されたエメラルダーの装甲と同じ材質の弾は、オーク一匹の体を貫通し、更に後ろに居たオークの体も貫いた。
血を流す倒れる二人のオーク。これにはギョッとするオークも多かったが、尚もエメラルダーに襲い掛かろう輩も存在した。
そんなオーク達に向かって、エメラルダーは弾丸を撃ちまくった。撃鉄が動く度にリボルバーが回転する。弾は自動生成されるので装填する手間は無い。半永久的にエメラルダーマグナムは弾切れを起こす心配はないのである。
“バァン‼バァン‼バァン‼……”
見る見るうちに辺りがオーク達の死骸と流す血でいっぱいになった。戦闘中のエニシに慈悲は無い。そのことで生前は他の仲間と言い争いになることはあったが、彼は結局のところ戦闘中に慈悲など必要無いという考えを変えることは無かった。
他の奴の考えなど知った事ではない、俺は俺のやり方を貫く。それが愛しい者を全て失った男のたった一つの矜持なのである。
「エメラルダーソード」
今度は左手で左腰についた刀の丸い円筒上の物体を握り。その先から緑色の光を放つエネルギーソードを形成する。そしてそれを使い斧を持ったオークに斬りかかるエメラルダー。
“スパン‼”
横の一閃で斧ごとオークの体を真っ二つにするエメラルダー。上半身と下半身が分かれたオークは、自分が斬られたことすら認知できないまま絶命した。
「さぁ、じゃんじゃん来いよ‼」
右手に銃、左手に剣を持ったエメラルダーはオーク達を煽る。たいがいのオークはこの挑発に乗って怒りに身を任せて攻撃しようとしたが、中には完全に戦意を喪失してしまって逃げ出す輩も居た。だが今回は後者の方が賢明であると言えよう。だって立ち向かったところで瞬殺されるのだから、彼らの生き残る道は逃走以外は無かったのである。
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