第2話 武器ゲットだぜ(所持金40)
「……ああ……なんて……!
なんて美しい出来映えなんだ!!」
勇者キンケツが慣れない手付きながらも、石を砕いて加工した石は、不格好ながらも鋭利さを含む凶器となりました。匠(初心者)の技によって、無骨な石は鋭利な刃物へと生まれ変わったのです。
「とうとう完成したぞ……! 僕の最初の武器が!!」
勇者キンケツは自画自賛し始めました。
完璧とは到底言えませんが、彼にとって初めての武器――それも自分の手作りときたものですから、評価が甘くなるのも仕方ありません。
古代の人々は、狩猟や日常生活で使うための道具を自然のままの石はそのままでは使いにくかったので加工したといいます。キンケツが作った武器は、そんな先人の知恵を借りて作った歴史ある武器でした。
キンケツは鼻息を荒くして興奮しました。この武器なら敵に凄まじいダメージを与えれると予感したからです。
その武器の名こそ――、
「
――打製石器!!
なぁーんということでしょう!
石は、打製石器☆へと昇華されたのでした!!
打製石器こそ人類の原初の武器。その観点から考えても魔王を打ち倒す勇者の最初の武器としてもこれ以上無い適任です!
殺傷力は店屋で売られていた木の棒を遥かに上回り、敵を撲殺★出来ることでしょう。
勇者キンケツは、そんな打製石器と王城の立派な木をへし折って手に入れた木の棒とで道具屋で買ったロープで括り付け――とうとう完成。
見た目としては、モーニングスター寄りの石斧。
打製石器――石斧モードです。
そして……この打製石器は恐ろしいことになんと――魔製石器という更に強力な武器となる強化出来るポテンシャルを残していました。
「我こそは、打製石器の勇者!」
勇者キンケツは、テンションが上がり心の中に思い浮かんだ名乗りを上げました。
残るは、防具と薬草。
本来なら、仲間の分も作らなければ可哀想ですが……キンケツが勧誘予定の仲間の事を考えると心配は入りません。
【勇者の装備】
武器 打製石器(NEW)
防具 無し
アイテム 無し
所持金 40マネー
勇者キンケツは打製石器を大切に持つと、立ち上がり、防具を求めて次の目的地へと歩き始めました。
―――――――――――――――――――
防具はとてもとても大切です。
攻撃は最大の防御。勇者キンケツは積極的に打製石器を振り回す予定でした。とはいっても、丈夫な防具を身に着けていることに越したことは無いのです。
アイテムも大切ですが、防具さえちゃんとしていれば使用頻度も少なくなります。
勇者キンケツは、いい防具があったのなら所持金の全てを使う覚悟をしました。
……40マネーでマトモなものが買える訳が無いというツッコミは野暮です。
勇者キンケツは街で一番、防具の品揃えがいいことで有名な店に辿り着き、物色し始めました。
店内には、様々な防具が所狭しと並んでいます。壁には精巧に作られた鎧が掛けられ、棚には輝く兜や頑丈な盾が整然と並べられていました。
デジャヴを感じながらも、勇者キンケツは、防具の値札をピラリ。視界に映る絶望の桁数を見て、瞼を閉じるとそっと離れました。
買える範囲では、布で出来た旅人用の服がありましたが、アレは普通の服とあまり変わりは無さそうだったので今回は見送りです。
「……バザーでも見てみるか」
勇者キンケツは、トボトボとバザーを見る為に、街の中心広場へと歩を進めました。
中心広場では、今の時期にはバザーが開かれています。
広場では色とりどりのテントが立ち並び、各地から集まったガチ勢の商人から、エンジョイ勢の町人たちまで様々な人達が、品々を並べていました。
勇者キンケツは広場をくるりと一周しようとした所――途中で誰かが言い争っているのが聞こえてきました。
気になったのでその場所へと向かってみると、辿り着いたのは、色とりどりのドレスが並んでいるバザーの店。
その中でもひときわ目を引くエメラルドグリーンのドレス。そのすぐ近くでお婆さんとバザーの商人さんが言い争っていました。
状況を見るに、彼等が声の主なのでしょうが、両人とも見覚えの無い他人。
キンケツはひとまず静観して、事態の推移を見守ることを選びました。
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