二人のいさかい


「武装人器とは即ち、私たち、戦処女神の為に、共に戦うものを指すもの」


戦処女神に使われる事で、初めて武装人器は輝き出す。

現に、彼女達に使われ続ける事で、武装人器は更なる領域に到達する事が出来るのだ。

なので、気に入った武装人器を使い、共に成長する事で、更なる高みへと近付く事は、何も悪い事では無いし、彼女の発言も正しい部類に入るだろう。


「それ以外に、彼らの価値は見いだせないと思いますが、貴方の考えは違いますの?」


これが典型的な戦処女神の思考回路である。

武器は武器として使用し、熟練度を上げ、偶に異性として愛する事で進化を齎す。

それこそが、武装人器と戦処女神の正しい在り方であると。

だが、彼女の考えは少数派である、もっと言えば、折紙千代姫の考えは、折紙千代姫しか考える事の出来ない主張であった。


「他の武装人器が、何人死のうがどうでもいい、けど、だけど…刻ちゃんだけは別、あたしの、大切な人、刻ちゃんが死んだら、あたしも死ぬ、それ程までに、あたしは刻ちゃんを大切に思ってんの、悪いけど、他の人間が、割って入るなんてあり得ないんだから」


ただ一人。

一つの武器を、人として扱い、愛する。

別次元の世界であれば、此方の主張の方が共感性を得られるだろう。

だが、あくまでもこの世界では異端に分類される考えである事は確かである。

無論、彼女の言葉を聞いて、四葩八仙花は、不愉快そうに眉を顰めた。


(…武装人器を、人として扱うなど…そんなの、間違ってますわ、…この人は、刻にとって、悪影響でしかない)


こんな頭がぶっ飛んだ折紙千代姫と刻が一緒に居れば、永遠に刻は輝く機会を失ってしまうだろう。

それが例え、契約を結んだ間柄だったとしても、引き離す事こそが、刻にとって良い結果を齎す。

故に、四葩八仙花は怯む事無く、湯舟を歩きながら折紙千代姫に接近する。


「…先程の言葉、確か、割って入るなんてあり得ないと申しましたけれど」


腕を組む。

豊満な胸なので、胸部に当てる様に腕を組む事は出来ず、胸を押し上げる様に腕を組んだ。

張りのある胸元が、折紙千代姫の方へ向けられた。


「それは逆にこちらの台詞でしてよ、刻は貴方の傍に置くには勿体無い、言うなれば豚に真珠と言ったところかしら?」


悪役令嬢さながらな悪口を一つ添える。

当然の様に、折紙千代姫は反感を覚えた。


四葩八仙花を睨みながら、身体を隠す事無く、腰に手を添えて目を細める。


「は?あんた、何を言ってんの」


聞き間違えだろうか、我が耳を疑う、と言うよりかは、相手の口を疑う折紙千代姫。

しかし、四葩八仙花は常に正しい事を口にする。


「武器は武器として扱う事で真価を発揮する、それに、既に刻は一人で戦える程に成長していましてよ?」


魔装凶器と成る為の〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉。

それを使用する前から、四葩八仙花は、刻が一人で魔装凶器を討伐した所を見ていた。

しかし、折紙千代姫にとって、問題点はそこでは無かった様子だ。


「刻ちゃんは一人で戦える?傍に人が居ないと、刻ちゃんは無理をするんだからッ、だから、あたしが、壊れる前に、何とかするのッ!!それだけが、あたしの役目なんだから!!」


決して一人にしない。

刻の傍に居続ける。

それが、折紙千代姫の存在価値だと言いたげに。

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女性が最強な女尊男卑な世界で武器化人間の主人公は戦処女神たちに色んな意味で狙われている。性欲、崇拝、欲情、ヤンデレ、ハーレム、現代ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou

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