二人の会話

他の人間などどうでもいいと豪語する通り、彼女は四葩八仙花の顔を忘れていた。

マジマジと見つめて、どこかで見た事がある顔だとぼんやりと思い出すと、途端に、彼女の事を思い出す。


「…あんた、刻ちゃんの傍にいた、戦処女神…」


女性である為か、折紙千代姫は警戒した。

どの様な相手であれ、刻に惚れる可能性のある人物は警戒するのが彼女なりの流儀である。

彼女の勘が冴え渡っているのか、刻の名前を出したと同時に、四葩八仙花の表情が変わる。


「あのお方を知っているのでして?」


知り合いである事に、彼女は驚いていた。

とすると、四葩八仙花は、折紙千代姫との関係性を気にしてしまう。

それは武器としての興味と、異性としての興味、両方を覚えていた為だった。

さも当然の様に、折紙千代姫は答える。


「知っている?知っているも何も…あたしの大切な人だけど?」


更に、四葩八仙花は驚いた。

彼女が恥ずかし気も無く、大切な人と言った事にだ。

それが本当であるのならば、既に刻は、この折紙千代姫のもの。

それを、間に割って入って、奪おうとするのは、やってはいけない事だ。

残念さと、無念さ、更にショックを覚えながら、彼女は手を垂らす。

胸元を隠していた手が離れた事により、折紙千代姫よりも大きな胸が、彼女の目に入っていた。


「…あ、そ、そうなんですの?」


その様に、分り易く項垂れる四葩八仙花に、眼を光らせる折紙千代姫。


「…は?なにその目の泳ぎ方、まるで、あたしの刻ちゃんに惚れてる様な態度してるじゃない」


彼女はそう言った。

四葩八仙花は、ずばりと言い放つ折紙千代姫に、どう答えるのか詰まる。

だが、言葉をどもらせて解答しなかったら、それこそ、刻に恋慕を抱いているようなものであり、それを悟らせぬ様に、咳払いと共に思考を巡らせる。


「…えぇ、あのお方、刻は、良い武器であると思っていますわ」


武装人器として。

武器の性能は置いて、で考えれば、刻以上に気骨のある武器は早々居ないだろう。

誰かを守る為に己を犠牲にする、自分の武器としての矜持を保つ為に、強敵へと立ち向かう。

この、如何に戦処女神に点数を貰う為に見せつける様な武器とは違い、刻と言う武装人器は武器として優秀だと、四葩八仙花の中では、中々の高評価であった。

素直にそう告げると、折紙千代姫は大きく目を見開く。

四葩八仙花の評価など、彼女からすれば、刻を武器として利用する気満々な、泥棒猫でしかない。


「はあああ!?刻ちゃんを武器って、何言ってんの!?刻ちゃんを、戦場に出す気!?」


怒り狂いながら、彼女はそう叫んだ。

風呂場であるので、彼女の言葉は風呂の中で良く響く。

思わず耳を抑えたくなるほどに大きな声。

ばしゃばしゃと、音を立てながら風呂を掻き分けて、四葩八仙花へと向かって来る折紙千代姫。

臆してはならぬと、彼女は豊満な胸を張って、自らの主張を彼女に告げた。

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