おしおきへ


だが、ディセンバー戦士長は違った。

気怠そうに、銀髪の前髪を指先で梳かしながら折紙千代姫を手招きする。


「じゃあこっちー、とりあえずは、あーしが遊んであげる」


反抗すると言うのならば、それを武力で圧制するのが、ディセンバー戦士長の役目だ。

折紙千代姫は誘われて、震えていた。

それでも、刻の事を思えば、恐怖を踏破出来る自信があった。

首根っこを掴まれた折紙千代姫は引き摺られる。

戦処女神として、命令違反者に対する処罰だが、それでも折紙千代姫は屈する事無く刻の方に手を伸ばしながら叫んだ。


「でぃ、ディセンバー戦士長…ッ!ま、待ってて、刻ちゃん、すぐに終わらせて、迎えに行くからっ!あたしが、刻ちゃんを自由にしてあげるからっ!!」


最後まで刻の事を考えての発言。

如何に鬱陶しく思う刻でも、今回は少し彼女に対する温情があって欲しいと願う。

なので、隣に立つ女性、レアンカルナシオン総戦士長に向けて話し出した。


「…えっと、総戦士長」


話し掛ける。

既に、レアンカルナシオン総戦士長の表情は穏やかなものだった。

刻の発言に、彼女は視線を向ける。

ルージュの口紅を塗った唇が、艶やかで色っぽく見えた。


「レアンカルナシオンでも構いませんよ?」


そう言うが、いきなり呼び捨てに等出来るはずがない。

立場と言うものを弁えている刻は、咳払いをした後に改めてレアンカルナシオンに話し掛ける。


「レアンカルナシオン様…折紙千代姫は、根は悪い奴じゃないんです、ただ俺の事になると熱くなりすぎるっつうか、だから、あんまり、痛めつけないでやって下さい」


それは幼馴染としての関係性もあっての事だ。

刻の訴えに関して、レアンカルナシオンは迂闊に首を縦に頷ける様な真似はしなかった。


「それは…ディセンバー次第でしょう…今は、彼女達の事では無く、自分自身の事だけを考えておきなさい」


そう言うレアンカルナシオン。

現状、尤も心配すべき事は、彼女では無く、刻の方なのだ。


「今回の、〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉回収の件、もしも見つける事が出来なければ…今後、貴方の自由は保証出来なくなりますので」


脅迫にも似た言葉だ。

刻は冷や汗を流しながら頷く。


「…了解しました」


その言葉に再度、レアンカルナシオンは頷き直す。

そして、刻の隣に居た黄金の髪を持つトワイライトに向けて言った。


「それでは、トワイライト、彼の監視をお願いします」


その言葉に、トワイライトは胸に手を添えて頷いた。


「はい、お任せ下さい、レアンカルナシオンさま」


そうして、刻の処遇をどうするかの会議は終了した。

刻は、〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉を回収する重要な役目を担う事となった。

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