無理やり契約しようとする
「ただ、刻ちゃんだけが生きてくれるだけで良いの…なのに、戦地でも無いのに、魔装凶器が出るなんて、考えもしなかった」
これ以上、この世界が危険なものになると言うのならば。
その様な場所に、刻を野放しにする事など出来ない。
だから、折紙千代姫は刻の手を掴んだ。
優しく、口先を近づけて、刻の指を噛む。
ぎちり、と指の皮を噛むと、真っ赤な血が刻の指先から出て来る。
それを、折紙千代姫は舌先で舐め出した。
生暖かく濡れた舌先が、刻の指の傷を舐め出す。
「ッ、なにすんだよ!」
刻はあまりの唐突な行動にそう叫んだ。
だが、折紙千代姫は刻の手を離そうとはしない。
強く握り締めて、指を何度も何度も舐める。
「ちゅっ、んぅ、痛い?ごめん、ごめんね、刻ちゃんっちゅっ…でも、こう、しないと…ね?」
刻は更に強い力で手を引き剥がした。
両手を空に向ける折紙千代姫。
舌先から透明な唾液と刻の血が混ざり合って、糸の様に舌先から垂れている。
「刻ちゃん、あたしと契約しよ?、そして、一緒に居よう?ね?あたしが全てを管理してあげる」
混ざり合い。
戦処女神と武装人器が契約する為に必要な儀式。
それを、彼女の独断で行おうとしていた。
刻は指先の傷を見詰める。
躊躇いも無く、指の皮を噛んだ彼女に少なからず恐怖を覚えている。
「…好い加減にしてくれよ、俺の人生を奪おうとするな」
流石に、彼女の凶行に刻はうんざりとしながらそう言った。
酷い言い方だろうと思うが、そうでも言わなければ、彼女が全てを決め兼ねなかった。
「俺の意思を曲げる様な事をさせて、そんなに楽しいか?もう決めたんだよ、あの時に、俺は無価値な武器にはなりたくない」
子供の頃の事を思い出す。
おぼろげで、あまりにも恐ろしい記憶。
同じ武装人器が、無価値として扱われるだけで、あそこまで変貌するなど思いもしなかった。
なによりも、その事を今まで忘れて、同じ無価値な武器として生きようとしていた事に、身震いをしてしまう。
もう、そうならない様に、刻は、武器として価値を得ようとしているのだ。
そんな刻の言い様に、酷く悲しい表情を浮かべる折紙千代姫。
「刻ちゃん…なんでそんな事を言うの?何時だって、どんな時だって、あたしはッ!刻ちゃんの為に、刻ちゃんの為だけに、考えているのに!!」
胸元に手を添えて、悶える様に叫ぶ。
刻に否定されてしまうと、心が張り裂けそうになって、苦しくて仕方が無い様子だった。
そんな彼女の訴えに、流石に我慢出来ずに割って入る、一人の戦処女神。
人器殺し、と言う異名を授けられた金色の美少女・トワイライトであった。
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