刻の処遇


「武装人器の魂が、部品の一部として複数組み込まれたのが、黒い歯車なんです、それを他の武装人器に植え込む事で、魔装凶器へ発生させる、歯車で、魂が残っているなら、俺はそれを探し出す事が出来ます」


その言葉に、マスクを装着した、男性の総てを嫌悪する戦処女神が反応する。


「…なるほど、過負荷の魂による魔装凶器へ変貌させる、と言うものですか」


ゴム手袋を嵌めた手で、自らの顎に手を添えて、ぶつぶつと独り言を口にしている。


「その理論ならば、確かに魔装凶器へ変化させる事が出来る、けれど…何の為に?」


そして、深く、哀しみを覚える戦処女神の姿もあった。

それは、刻の隣に居る、トワイライトであり、その事実を知った今、彼女は深く傷ついた様子だった。


「…なんて、酷い真似を」


武装人器を誰よりも愛する彼女だからこそ、無垢なる武装人器が犠牲になった事に怒りと悲しみが両方湧いて出ていた。

その表情に、刻は、他人のベッドに潜り込んで発情するだけの変態女では無い事を察する。


(トワイライト様が、何時に無く真剣な表情をしている…それ程までに、武装人器を想ってくれているのか…)


感服すら覚える刻。

そして、レアンカルナシオンは、刻の話を聞いて、話を脳内で整理する。


「話は分かりました、次に、貴方の処遇についてですが…」


刻の処分はどうなるのか。

此処で決めようとしているのだが。


「しょ・ぶ・んッ!し、しょ・ぶ・ん!!」


何分、外野が五月蠅くなった。

それを嗜める様に、ディセンバーと呼ばれた戦処女神が外野を黙らす言葉を口にする。


「やかましーですよ、レアンカルナシオン先生、どーするんですか?」


ディセンバーだけは、レアンカルナシオンを慕っているらしく、先生と呼んでいた。

彼女の言葉に、レアンカルナシオンは再度頷き、結論を口にする。



「もしも、〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉の所在を知り得るのだとすれば、是非ともその力を貸して頂きたいと思います、ですが、それが嘘だった場合…魔装凶器から武装人器へ戻った事例の一つとして、八百比丘尼やおびくにの管轄下とします」


八百比丘尼。

それは一体、何処の戦処女神なのだろうかと刻は周囲を見回す。

その中で、溜息を吐いて、繭を顰めるマスクを装着した戦処女神の姿を見かける。

どうやら、男性を嫌悪する彼女こそが、八百比丘尼と言う名前であるらしい。


「え、え?しょ、処分…」


レアンカルナシオンの決定に落胆する戦処女神。


「ふぅむ、まあ、妥当じゃの」


その結論に異論は無いとする戦処女神。


「…面倒ですが、レアンカルナシオン様がそう仰るのならば…」


八百比丘尼は、嫌そうな表情をするが、決定事態に文句をつける事は無かった。

刻は、彼女の結論に、自らの頭の中で、どういう事かを簡単に並べる。


(つまり…〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉を見つけるのが俺の仕事、そして、もしも見つからなかったら…あの八百比丘尼って言う戦処女神に、俺の身柄が渡されるって事か…)


男性に嫌悪感を抱く戦処女神。

彼女に自らの全てを任せられたら、どの様な目に遭うのか、考える事すら憚れる気がした。



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