戦士長会議

暫く、廊下を歩き続ける。

広く、長い廊下であるのに、トワイライト以外の戦処女神に出会わない事に、何故だろうと言う気持ちになる刻。

そうして、歩き続けた際、手首に巻かれた手錠に痒みを覚えて来た頃合い。

ようやく、トワイライトの歩く足が止まった。

刻は、自分の背丈よりも何倍も大きな扉を前にして、思わず上を見上げてしまう。


「此処から先は、戦士長たちがいらっしゃいます、行動一つでも気分を害する可能性がありますので、どうか、慎しんでいただければ」


慎みを持つべきなのはお前の方だろう。

と、刻はそうは言わなかった。

彼女の口調には、真剣さが伺えた。

戦士長が集っていると言う話だ。


(戦士長…俺の様な武装人器が出会える事なんざ、無いと思ってたが…)


固唾を呑み込む刻。

こほん、と咳払いをすると共に、扉をノックするトワイライト。


「私です、トワイライト、件の方を連れて来ました」


その言葉に、反応は無かった。

だが、トワイライトは了承を得たと察したのか、扉に手を掛けて開く。

ぎぃ、と音を鳴らして、扉を開けると、トワイライトが先に入り、次に、刻が部屋の中へと入った。

壮観だった。


(ここ、部屋の中、だよな?)


電灯では再現出来ない蒼穹の景色。

空を連想させる青色の景観と、白い雲が空を泳ぐ。

部屋の中心には一つの、巨大な円卓があり、其処を取り囲む様に、複数の戦処女神が集う。

十二の席の内、過半数が埋まった状態で、話し合いが行われていた。


「お待たせしました」


そう言って円卓の中心へと向かう。

そこで、一人の戦処女神が話を止めて、トワイライトと、次に刻の顔を見た。


「あー…あんたが、話のあれー?魔装凶器の力を使える武装人器って」


気怠そうに言う。

瞼が重たく、眠たそうな表情をしている戦処女神。

円卓に足を伸ばして、椅子を傾けながら刻を見ている。

刻は頷こうとした、だが、他の戦処女神が刻に殺意を向けていて、動くだけでも処罰されそうになる為に、頷く事が出来なかった。


(これが、戦士長…戦処女神を指揮する者の頂点…)


ヴァルハラに所属し、魔装凶器の対処や、犯罪者の取締りを行う。

戦処女神を従え、命令をする権利を持つ戦士長たちの集いに、恐れ多い気持ちを抱く刻だった。


「本当、最悪なんですけど、どーして主犯を殺しちゃうかなー?」


目を細めてグチグチと刻に言い放つ、銀髪にメッシュを入れた戦処女神。

刻が行った行為が、最悪だと言いたげに刻を責めている様子だった。


「まあまあディセンバー、仕方が無い事よ?彼もまた、〈狂械律の歯車イリーガル・ギア〉によって魔装凶器にされてたんだから」


そう言うのは、眼が細い女性だった。

眠っているかの様に両目が塞がれている。

おまけに椅子に優雅に座っているのに、他の戦処女神よりも背丈が高い所を見るに、立ち上がれば、かなりの巨体なのだろうと刻は思った。


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