戦士長たち
「…その言葉が聞けて、安心しました」
彼女の哀しみを乗り越えた顔付きを見て、微笑みを浮かべる。
その素顔があまりにも愛おしくて、思わず彼女の髪に触れて、頬を擦った。
「
トワイライトも、その背中に、愛する者の魂を背負う。
それが妄想であろうとも、そうであると信じる事で、トワイライトは、彼らと共に戦っているのだと思えた。
「そして、彼らが死んでも、きっと、その魂は我々を支えてくれると信じています」
両手を重ねる。
祈りの姿を見せると、彼女も頷く。
「はい…なので、トワイライトさん、あなたも」
トワイライトの顔を見て、心配そうな顔で言った。
「どうか、悲しそうな顔をしないで下さいね?」
そう言われて。
普段は表に出さない顔が出ていた事に気が付く。
自らの頬に手を触れて、自分がどの様な顔を浮かべるのか察する事が出来た。
「…私、そんな表情していたのね、ふふ、ダメですね、こんな顔をしちゃ」
気を付けなければならない。
トワイライトは最高峰の
憂う表情は他の
にっこりと微笑を浮かべるトワイライト。
教えてくれた彼女に感謝の言葉を口にした。
「教えてくれて、ありがとうございます、…少し疲れたと思うから、これで、失礼しますね?」
軽く手を振る。
廊下を歩き出すトワイライト。
金色の髪が左右に揺れる。
麗しい姿に目を奪われる者は多い。
しかし、彼女の姿を見て、ひとりの
「あ、はい…あの、本当に、今日はありがとうございました!」
それでも。
彼女が心配した所でトワイライトが止まる事は無い。
声を掛けるのはこれ以上は出来なかった。
「…ふふ、えぇ、それじゃあ、また」
そうして二人は別れる。
乱れなく綺麗な歩き姿。
(…あぁ、素晴らしい武器だった、あの輝きを放つ武装人器の為に、私は全力で愛したい、けれど)
しかし、内心では。
失った武器の事だけを考え続けている。
(私が全身全霊で愛してしまえば、武装人器が壊れてしまう、なんて、悲しい事なのでしょうか)
誰も居ない廊下。
無意識に憂いの表情を浮かべてしまう。
武器の喪失感は、彼女の感情を低下させてしまう。
己が触れて、愛した武器は、己が触れて、武器を壊す。
どうしようも無いジレンマを抱えるトワイライト。
ここまで思い詰めてしまうと、全身から寂しさが浮き上がる。
寂しくて寂しくて仕方が無い、そう思ってしまった。
そう思いながら歩いている最中。
彼女は威圧感を感じた。
その威圧感に反応し、顔を振り向かせる。
其処には、六名程の女性が居た。
彼女達の姿は見覚えがある。
否、見間違えてはいけない、希有な存在である。
ヴァルハラに属する戦処女神には階級が存在する。
それが戦士長と呼ばれる者たちであり、現状、戦士長は十二名存在する。
その内、その廊下を歩いているものたちは、彼女と同じ戦士長であった。
「トワイライト、ここに居ましたか」
その内の一人。
修道服と軍服を混ぜた様な黒の基調をする衣服を身に包む、黒髪の妙齢の美女が語り掛けた。
「これは…レアンカルナシオン総戦士長」
哀しみを隠しながら、彼女は頭を下げる。
レアンカルナシオン、それが戦処女神としての、総戦士長の名前であった。
現状・ヴァルハラのトップたちが向かう先は、廊下の奥にある会議室であり、其処で今後の話をしようとしているらしい。
「今回の魔装凶器、大量発生の事件、私たち、戦士長が集まり会議をする事となりました、ひいては、貴方にも参加をして欲しい所ですが…」
戦士長ならば、集いに参加する事は義務だ。
しかし、レアンカルナシオン総戦士長は言葉を濁す。
「最重要人物を確保している、魔装凶器から武装人器へと戻った希有な存在だ、その人物の監視役を、トワイライト、貴方にして頂きたい」
そう言われる。
大きく目を見開くトワイライト。
顔を真っ赤にしながら、エメラルドの瞳を細めて微笑みを浮かべた。
「宜しいんですか?」
人肌寂しく思っていたトワイライト。
監視役と言う事は、絶対に傍から離れてはならない。
肉体を密着させる程に近しくしなければならない。
ならば衣服を脱いで抱き締めても良いだろう、と。
トワイライトの思考回路はそう繋がった。
戦闘で疲れている為に変な方向に思考回路が曲がっている様子だった。
「…心配ですが、…まあ、貴方なら、大丈夫でしょう」
心配。
その言葉は即ち。
トワイライトの方では無く、武装人器の方が心配、と言う事である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます