雪原の少女

浅海澄

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彼女は孤独であった。


彼女の力は強大で、誰もそれを止めることができない。彼女は生まれ育った祖国が大好きだった。彼女は祖国のため敵兵を殺戮し続けた。敵兵を殺せば殺すほど人々は歓喜し国が大きくなっていく。


されど、人々はそんな彼女を恐ろしい存在として誰1人近づこうとはしなかった。強大な力を持つがゆえ、敵兵も彼女に勝てるものはいなかった。どんな兵器を持ってしても彼女の前では無力だ。彼女が氷を出せば出すほど周りに冷気が漂い、地は凍りつく。しまいには祖国は誰一人として住めない土地となってしまった。祖国にはたった1人。彼女しかいなくなってしまったのだ。


雪原の真ん中で彼女は嘆いた。

「寂しい、誰でもいいから人に会いたい。」

すると遠くから人がゆっくりと彼女に近づいてきた。吹雪く中、どんな姿かは分からないが、1人ではなく多くの人が近づいてくる。彼女の姿を吹雪の中見つけると人々は彼女に銃を構えはじめた。1人が吶喊し始めると皆が続き、怒号の轟音となって押し寄せる。


服装は…敵国兵のではない。見知った祖国の服装を身にまとっていた。彼女は恐怖した。今まで感じたことのない感情に、そして自分が殺されるかもしれないという恐怖に。


しかし彼女は笑った。

「…祖国のために。」

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雪原の少女 浅海澄 @librarian-A9

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