第7話 ボス戦ってやつだね!
なな修正
毒沼が盛り上がりそれから咆哮が聞こえてくる。どうやら、主は毒沼と一体化しているようだ
「……っおい!絶対主怒ったって!やばい!」
「拓魔あんたねぇ!いつもいつも変なことしてかき乱して!!」
「たは~許してちょ?」
「「許さん!!」」
拓魔を軽く揺らしながら叱る。昨日判明した最高ランクの職業。そのランクなら身体能力も向上しているはずだからこのくらいなら大丈夫だろう
「ぎゃあー」
それに本気じゃない悲鳴も聞こえているから大丈夫だろう。そんな小競り合いをしていると、矢筒さんに止められた
「そろそろやめなさい。それとあの主、沼から動かなそうだな。矢を目印に監視していたが…まったく変わっていない」
「そうですね。前に私たちが来た時も、あの沼に近づかなければ大丈夫でした」
「なら…拓魔、さっさと終わらせてくれ」
「いいよ~ちょうどいいし、リクエスト募集しようか。どうやって倒してほしい?」
そういいながらカメラに向かって話しかけた。途端にコメント欄が活発になる。いま日本中か注目している配信だからか、早すぎて白色の何かがあるということしかわからない
ただ、白野は読み取れたようだった。頷きながら、ボツボツとつぶやいている。ジッとコメント欄を見続けている
拓魔なら大丈夫だろうと思いつつ、いやな予感がして、沼の方を見つめる
主は、今も沼をまといながら左右に揺れている。ぽたぽたと紫の液体が飛び散り、周りを溶かしている。気のせいかもしれないが少しだけ大きくなっているような気がする
「よ~し決めた!解毒してから、蒸発させる!じゃあ準備するから、十秒ぐらい待ってて!」
腰に携えている杖を手に取り、目をつぶる。杖の先に白色の光が集まっていって神秘的だ。まじまじと見つめていると、沼の方向からジュワジュワと何かが溶けるような音か聞こえてくる
何事かと振り返ると、明らかに先ほどより大きくなっている主がいた。寝ているところを起こされて気でも立っているのだろうか
「へ?なんかでかくね?」
「気のせいじゃないかしら?今までそんなことは…」
「いや、大きくじゃなくて近づいてきているんじゃないですか?矢筒さんが打った矢が見当たりません」
「よし!アド ムンディ ソムニア!!」
大声で唱えられた呪文のあと、白い光はまっすぐ、主の方へ向かっていく。白い光は主の周りを囲むように回りだす。先ほどまで聞こえていた。ジュワジュワという音は聞こえなくなっていた。その代わり、主の咆哮が、いや悲鳴が響きだす
その間に白野は大杖の準部をして力をためていた。大杖には赤色の光が集まり、マグマのようにはじけている
蒸発させる準備は整った。その間わずか5秒ほど。その間も悲鳴はやむことはなかった
「攻撃魔法は使う機会が多いから、慣れてきたかも!」
大杖を主に向ける。解毒の魔法が効いたからなのか、先ほどよりも薄い色になっていた
「もうただの液体なら蒸発してきえちゃえ!アド ムンディ ソムニア!」
大杖から熱風が漏れる。吹き飛ばされそうな強風が襲ってきた後、沼は跡形もなく消えていた
先ほどまで苦しんでいた悲鳴も、悪臭もなくなっていた。残っていたのは青白いゲートと沼だった大穴のみだ
「ふ~討伐せいこ~さっさともどってかえろ~?」
「……あっけな。あんなに威圧感あったのに」
“”
えぇ…
主キュン可哀想
もうちょっとさ、戦闘というか…
カメの戦いの方が盛り上がったな
無事でよかった…でもさぁ
“”
「ちょっと文句言いすぎ!戦ってない人たちは黙ってくださ~い」
その一言で静かになるコメント欄。この配信は本当に命を懸けているからか、こういうことを言われると痛いのだろう。そんなことを感じ取れなかったのか、バグでも起こったんじゃないかと心配し始める白野に小さく溜息をついてから声をかける
「大丈夫だよ、何もない。森にはまだ危険がたくさんあるから、注意しながら帰るぞ」
「は~い」
「あそこにいる人は全部で36人。そのうち毒に侵されているのは20人余り。早く戻って治療しましょ」
歩きながら、周りを警戒する。食料調達のために森に入った際、数歩進むだけでモンスターに囲まれた
あの洞窟が崖の上にあるとはいえ、必ずしも安全とは限らない。いつ戦闘が起こってもいいように体力を温存しながら進んでいく…が何かがおかしい
行きはこの辺までなら避難者の声が聞こえてきたのに、今はかけらも聞こえない
「なんか…静か過ぎないか?」
「そうでしょうか?モンスターの呼吸とか聞こえてきますけど」
「まぁでもこの辺だったら、避難者の声が聞こえてもおかしくないですよね」
黒崎の言葉に、静寂が訪れる。そういえば、行きの送迎の声はこの辺まで聞こえていた。そのあとの雑談の声もこの辺ならば聞き取ることができた。一週間前の自分たちではできなかったことが、サポーターによって強化された身体能力が可能にしていた
白野は眉を顰め、大杖を二回地面に叩く。それを合図に、白野の体は軽やかに宙に浮いた
「う~んなんかこわいなぁ、僕浮いてみてみるよ」
「私たちもスピードを上げましょうか、影浦さん大丈夫ですか?」
「はい、配信をご覧の皆さん。酔いやすい方は目をつぶっていてください」
影浦の注意喚起を合図にそれぞれが行動を始める。影浦を中央に置き他のメンバーで周りを固めて走る。モンスターの姿が捉えられないスピードになった時、空から焦ったような声がした
「洞窟がふさがれてる!入り口付近にモンスターがいるし血痕がある!急いで!!」
そういった後、さらにスピードを上げるため、杖を腰から引き抜く。急に片手を大杖から外したからか、バランスを崩しかけて大杖に何とか捕まった。浮遊魔法を無理矢理前に進めている関係上、この移動方法は少し不安定だ。これ以上スピード上げたら危ないかもだけど、魔法を重ね掛けして…
バランスを整えてから、杖を片手で手が白くなるまで握る。早く着きたいから僕自身を軽くして…
魔法の組み合わせを考えていたら、下から切羽詰まった声がかかる。灯だ。
「まって!洞窟がふさがっているのはスキルの可能性があるわ!モンスターに襲われたかもしれないけど
独りで行く方が危ないわよ!」
「……」
白野は分かりやすく顔をしかめる。その顔のまま顔を上げて空中をじっと見つめた。サポーターとやらにアドバイスを求めているのだろうか。彼はサポーターとの関係は良好で移動中や寝る前もよく話している様子を見る。彼は何かつぶやいた後、杖の先端に青い光が集まる。杖を一振りしたら、先端にあった青色の光は地上を走っている五人に降りかかった
「うおっ」
その瞬間、思わず声が漏れる。明らかにスピードが上がったのだ、踏み込む力が強くなり、一歩が大きくなる。身が軽くなった感覚もある。風になった気分だ
「スピードバフかけたから!急ごう!」
これなら問題ないだろうといわんばかりの笑顔でこちらを向く。なれない装備や緊張感で疲れていた体が言えていく感覚もある。感謝を伝えたいところだが、早すぎてうまく声が出せない。とりあえず洞窟に向かって足を進めた
けもの道を走る。息よりも速いスピードでたどり着いた洞窟だった場所は、焚火の近くに数多くの血だまりを残し、それをすする白犬のようなモンスターたちがいた
そいつらは三つの目を持っていて、そのうち一匹は額にある三つ目の瞳からは血が流れていた。誰かが抵抗したのだろうか
三つ目の犬のようなモンスターは全部で五匹だが、その大きさは3Mを余裕で越している
「なにこれ、襲われたってこと…?」
「そんな!あんなモンスター見たことない、私たちがここについたのは四日前よ!その間近づきもしなかったのに…」
「精霊が守ってくれてた…とかな」
大杖を握り締めながら怒りをあらわにする白野、手で口元を覆い、いまにも崩れ落ちそうなスミス、顎に手を当てながら可能性を示す黒崎
しかし、彼らの顔は青を通り越して白くなっている。その強さゆえにあまり残酷な現場というものに触れてこなかったからだろう
強いサポーターがついている彼らには力はあるが、精神は子供のままだ。モンスターと大量の血液を目の前に体は固まっていた
最悪の場合、避難者たちは……
そんな彼らの横を五つの矢が通り抜けた
動くことができない彼らを尻目にモンスターに攻撃し始める矢筒。矢を放ち終わった瞬間、飛び上がって木に登る。木に紛れ、位置を悟らせないためだろうか。その状態で、弓を構えてまたモンスターを狙う
「今を嘆くのは後にしろ。とりあえずモンスターをつぶすぞ」
しっかりと矢を命中させ、動けない彼らに忠告をした後、違う木に移っていった。先頭にいた重友は、持っていた盾を構えて叫ぶように言葉をつなぎながらモンスターたちへ走っていく。その顔は高校生組と変わらず青くなっていた
「前に出ます!黒崎さん!ついてきてください」
その状態でも前に出る重友さんの言葉にハッとした俺は急いで剣を抜き、ついて行く。剣をしっかりと握りしめ重友さんの盾に飛びついてくるモンスターを切っていった
地面を踏みぬくほど力を込めたからか、豆腐を切るように切ることができた。大きな切り傷から血を浴びる。べっとりと張り付き気持ち悪いが、そんなことを気にしている暇はない
次へ走り出す前に、一体もう一体と倒れていく。凍り付いて大きな氷塊となったモンスターを確認してから、まだ生きているモンスターへ剣先を向ける
「おらぁ!」
今度は血を浴び過ぎないように、通り過ぎるように切る。どのくらい血がかかったのかわからないほどべとべとだったので確認はできなかったがきっとうまくいっただろう
残っていた一匹も凍り付いていた
「制圧完了、だね。とりあえず剣一と重友さんの血落とすね。アド ムンディ ソムニア」
「ありがとう。それで、避難者たちは…」
「大丈夫よ。この中にいるみたい。精霊が教えてくれたわ」
洞窟の入り口だった場所に手を置きながら灯が答えた。ゆっくりとこちらを振り向いた彼女の顔は安堵でいっぱいだった
「そう、それならよかった。じゃあ急いで出てきてもらおうか」
「それが…肝心のスキル使用者がかみつかれて重傷を負ったみたいなの。だからこの壁を壊してちょうだい」
「お!僕の見せ場かな!よ~しダイナマイト以上の爆発見せちゃうぞ~♪」
腕を回しながら、洞窟の入り口に近づいていく白野。彼の様子に幼馴染たちは頬を引きつらせながら後ろに下がっていく
「このテンションの高さ…加減間違えそうだな…重友さんの後ろで待機しようぜ」
「そうね。その間、コメントでも見ましょ。剣一、一個だけ質問に答えてあげて」
灯は無理矢理気味に剣一の腕を引いて、一番後ろでコメント欄を表示している影浦さんのもとへ引っ張っていく。えぇ、と困惑しながら灯の提案に従い、抵抗せずに質問を探す。その間背後から白野の鼻歌が聞こえていた
「え~とじゃあ、これ!好きなラーメンは?…う~ん悩むけど、豚こ」
ドゴォォン! パラパラ…
突然背後から響く爆音と衝撃に、森がざわつく。その後、叫び声と一緒に地面が揺れる。おそらくモンスターが逃げて行ったんだろう。振り返ると大杖に載って空中にいる拓魔が頬をかきながら目をそらしていた
そのまま、ゆっくりと下降していき、五人の前におりる
「人が三人くらい通れる穴を作ろうとしたんだよ…ほ、本当だよ。こんな威力になると思ってなくて…」
大杖に隠れるように体を縮め、目をそらしながら弁解を始める白野
黒崎とスミスはゆっくりと白野のもとへと近づき言った
「「威力をちゃんと考えてから魔法を使いなさい!!!」」
「ご、ごめんなさい~!!」
森が揺れるくらいの叱り声に、涙目になりながら大声で謝る拓魔。その三人の様子に苦笑いをしながら、大人組は洞窟の中へと入っていった
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