第6話 討伐隊の朝

「ふっか~つ!」


「いい天気~さいこ~!」


「元気が有り余ってる馬鹿ども、お肉取ってきて」


は~いといい返事が返ってきて、拓魔と剣一は森へ走り出しだ。数秒後森からはモンスターの叫び声が聞こえてくるので、楽しく狩りができているんだろう


火事の後、動きたくても動けなかった拓魔を知っているので自然と笑みがこぼれる。その様子を見られていたのか、後ろから声をかけられた


「随分うれしそうな顔をするんですね」


少し、薄暗い雰囲気を醸し出している男性。スマホをいじりながらこちらに話しかけてきた


「確か…影浦さん?」


「はい、撮影を始めても?」


「もちろん、拓魔が決めたことなんでしょう?」


「はい。…コメントを表示することもできます。見てみますか?」


「そうですね。見せてもらいましょうか、まぁ私を映してもつまらないと思いますけど」


そんなことないですよ。と笑いながらスマホをいじり続ける。カメラが起動できたようで、こちらにスマホを向けてきた。右側にはステータス画面と同じ背景が現れ、信じられない量の文字が下から上に流れていく


「これは…すごいですね」


「読めないですよね。あまり重要なものはないので気にしなくても…」


「いえ、読めますよ。スキルが目覚めてから、身体能力が上がったんです」


そう答えると、影浦さんは困ったように笑った


「私はそんなことないんですよね。環境の違いでしょうか」


「えっと…」


「お~い!とってきたぞ~」


「猪だけどいいよね?」


気まずい雰囲気を壊せる二人が帰ってきた。影浦さんの話していた話がよくわからないけれど、聞いてみればわかるかしら。そんなことを考えていると


「そ~いえばさ!おじいちゃんからのメール見てなかったなって思って、ここで読んでもいい?」


拓魔が笑いながらそう言った。メール…確か、独りでここに落ちたときに送られてきたもののことだろうか。意思疎通ができるものだったということを知らなかった。もっと早くに知っていたら、孤独を和らげたかもしれないのに


「あと、昨日俺たちのスキル言ってないよな?自己紹介だからいらねぇかと思ったけど、戦闘の時に困るよな。俺は経験値補正とダメージ補正。職業は勇者。拓魔が全部の魔法使えて、MPの消費量が少ない。職業が…なんだっけ?」


「あなたねぇ…」


「職業は賢者だよ!んでおじいちゃんって勝手に読んでるんだけど、メールの相手に聞いてみたんだ。僕の職業強いらしいんだけどなんで?ってそしたら…」


そういいながら空中で指を動かしている。きっとウィンドウを操作しているんだろう。お!できたという声の後大きなウィンドウが表示された。じっと見てみると、彼の言うおじいちゃんとのメール内容だということがわかる


「おじいちゃんが言うには、それまでその人がしてきた功績、その人の性格、それらを基に職業が決められるらしい

職業を与える側の名前は、サポーター。サポーターのランクは全部で8ランクあって、ランクが高いサポーターほど、与えられる人数が少ないんだって


このチームだと、僕と剣一が最高ランク、灯が準最高ランク、重友さんが四番目くらいで、影浦さん六番目だってさ」


「なるほどね、私のメールがあまり動かないのは、二番目だからかしら」


「シャイなんじゃね?」


「でも、灯のは少し変で、職業自体は二番目なんだけど、精霊憑きはそれより珍しいだってさ。よかったね」


果たして、よかったといえるのだろうか。私に水の精霊がついているのは、拓魔の件がきっかけだろうし


“”

とりあえず、俺たちには縁のない話ってことであってる?

悲しいこと言うなよ

俺がウィンドウに向かってきいてみたら帰ってこなかったからそういうことなんだろうな

変な奴やん

お巡りさんこいつです

“”


鍋を煮ながら、ソワソワした様子を隠さず、矢筒さんが問いかけてきた


「おい、俺はどうなんだ」


「えっと矢筒さんはぁ」


無駄に長いメールから探すこと約十秒。あ!という声とともに矢筒さんの方を向いた


「成長型のサポーターだってさ!レベル20までは、逆に能力値が下がってるらしい」


「なれない服で動きづらいだけかと思ったが、そういうことだったのか。あと…16レベルか。長いな」


“”

デバフ喰らってあれ?

矢筒は素のスペックが異次元ってことであってる?

道理で昇進が早いわけだ

成長型で食らいついたんだ。こわ

“”


コメントも様々な反応であふれかえっていた。こういうのを見れると息抜きになるからありがたい


「よし、できたぞ、イノシシ鍋。……なんか知り合いが紛れ込んでるみてぇだが、仕事しろよ」


「はは、今一番頑張ってる人たちでしょ。自衛隊なら功績あってランクも高そうだし、上がった身体能力を使ってダンジョンによる被害とか抑えに行ってるんじゃない?」


呑気な声で話しながら肉を食べる拓魔を尻目にため息をつく矢筒。心底あきれたように器に入っている具材をすさまじいスピードで食べ、おかわりのために腰を上げた。その道筋に器を差し出す黒崎がいた


「ふぉれのもいれてくらはい」


剣一は頬を膨らませて、もごもごしゃべった。行儀が悪いからやめてほしい


コメントでも、その様子を叱るコメントもたくさんあった。なぜかかわいいというコメントあったが


「ごちそうさまでした。食べながらでいいので聞いてください。左にあるけもの道を抜けた先に、開けた岩場があります。そこの中央に主がいます。その主に物理攻撃はあまり通じなかった、というかそもそも毒で近づけなかったの


だから、この作戦は拓魔にかかってるわ。…体調はどう?」


Yes以外の答えはないとわかっていても聞いてしまう。私の心情に気づいているのかいないのか、こちらに満面の笑みを向けた


「余裕だよ!さっさと倒して早く帰ろう!」


セラピー効果のある笑顔に触れ、自然と口角が上がる。いつのまにか硬直していた体の力が抜ける。いつのまにか緊張していたみたい


「よし、片づけはここの人がやってくれるらしいし、俺たちはさっさと向かおう」


「そうですね!私先頭で行きます!道案内お願いしますね!」


「一本道なので必要ないですよ」


「そ、そうですか…すいません」


肩を落としてわかりやすく落ち込みながら歩く重友さんを慰める。少しきつい言い方になってしまったのだろうか。この人と話すときはもう少し気を付けないと…


嗅ぎ覚えのあるツーンとする嫌なにおいが漂ってきた。この地点から急に命の気配がなくなる。動物は勿論、植物でさえもこの岩場にはない


「つきました。あのくぼみ、あそこに主がいます」


「何も見えねぇな。どう思う?」


「寝ているんでしょうか。まだ朝早いですし」


「矢でも射ってみるか?」


「皆さん見えますか?あれが毒沼だそうです。画面越しではわからないでしょうけど、鼻が曲がるほど嫌なにおいが漂っています」


“”

みえるよ~

いろいろな色が混ざってどす黒いな

石でも入れてみようぜ~

“”


「そうだね、主がどんな形かわからないし、石でも入れてみようか。重友さん、構えて」


「え、は、はい!」


「アド ムンディ ソムニア」


そう唱えたとたん、沼の上に直径10メートルは優に超える岩が現れた。それは重力に従いそのまま、沼へと落ちる


ドボンッ!


重い音の後、周りの岩が溶けた。岩を入れた衝撃で波が発生し、毒沼の中身がそのままあふれ出たのだ。私たちは、重友さんの盾に守られて無傷だった


「それは、石じゃなくて岩!!」


「あはは~ごめんごめん。でもみんな案外早く終わりそうだよ?」


「はぁ?何言ってんだ,、拓魔?さっきと変わって……あ?」


拓魔が、早く終わりそうだと指さした方向へ目を向ける。そこには毒沼が盛り上がっていた。いや違う


Gyaaaaaa!!


とけたたましく響く叫び声に気圧される。白髪の青年は不気味な笑顔を浮かべていた

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