第20話 許されない求め

君のままでいい、と言われて抱きしめられた私。

不意打ちだった。顔が真っ赤になり、感情が抑えられなくなる。

「...響、私を、抱.........」


(...今、何をしてもらおうとした?)


その瞬間、私は自分の歪められた感情に震える。何を勘違いしているんだ。私には求める権利などない。


事故で彼の夢を奪った私。それなのに、今、彼に何かを求めようとしていた。恥じなければならない。


深呼吸。


心の奥底で渦巻く感情を押し殺す。罪。欲望。歪み。それらが入り混じって、私の理性を揺さぶる。


「...? 何か言った?」「...いいえ、何も」


「...ごめんなさい」


今度は誰にも聞こえない声で、つぶやいた。


窓の外。夏の終わりの空は、冷たく、遠く、そして静かだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る