第18話 嘘から出た実

夕暮れの薄暗い部屋で、僕は幼なじみの健太と向き合っていた。健太の拳は、テーブルの上で固く握りしめられていた。


「響、何を考えてるんだ?」健太の声は低く、抑えられていた。


僕は深呼吸をした。「凛さんと付き合うことにした」


健太の目が、鋭く僕を射抜いた。「冗談じゃない!」テーブルを叩く音が部屋に響く。「あの事故で君の夢を奪った女と、どうして…」


「健太」僕は静かに、しかし毅然と言った。「凛さんだって事故の被害者なんだ」


健太は一瞬、言葉を失う。


「大体、ドライバーがどう考えても悪いんだよ、凛さんに落ち度は無いはずなんだ」


健太の拳がゆっくりとほぐれていく。怒りが、戸惑いに変わっていく。


「君は本当に彼女のことを…」健太の声が揺れる。


「愛している」僕は、迷いなく言った。


部屋に静寂が流れる。外では、夏の最後の蝉が鳴いていた。

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