第14話 異変


最初に気づいたのは、彼女の目の異常さだった。


虚ろで、光を失った瞳。笑顔は張り付いたように硬く、声は機械的。まるで感情が抜け落ちたように。


「どうした?」


問いかけても、彼女は少しずつ歪んだ笑みを浮かべるだけ。


「何もないよ」


嘘だとすぐに分かった。幼なじみと会ったようだが、それから彼女の様子がおかしい。まるで心の中の何かが、プツリと切れてしまったかのように。


「凛」


彼女の肩を掴んだ。今までの震える少女とは違う、異様な強さで立っている。


「何があった?」


彼女は笑った。本当に笑った。これまでの涙と罪悪感とは全く違う、冷めた笑い。


「何もないって」繰り返す。「何も、何も、何も」


直感的に分かった。このまま帰したら危険だと。


彼女の心が、今まさに崩壊しかけている。

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