第9話 赦しの淵で
響の母は、私を自分の子供のように接してくれた。
最初は疑心暗鬼だった。「私なんかを、なぜ?」と何度も思った。でも、彼女の温かさは、私の心の硬い殻を少しずつ溶かしていく。
家族全員が優しかった。あまりにも優しすぎて、私は耐えられなかった。
ある日、夕食の後。
「凛ちゃん、デザートどう?」響の母が微笑んだ。
その瞬間、私は崩れた。
激しく、制御できないほどに泣き崩れる。優しさが、私の中の感情を一気に噴出させた。罪悪感。悲しみ。申し訳なさ。全てが絡み合って、涙となって溢れ出す。
響の母は、黙って私の背中を優しくさすった。
「泣きなさい。全部出しなさい」
その言葉が、さらに私の感情を解放した。
そして、今日の彼とのデート。
少しずつ、赦されてもいいのかもしれない。そう、かすかに感じ始めた矢先—
カーッ!!!
突然の、耳を劈くクラクションの音。
全身が、電流に打たれたかのように震え始めた。
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