第10話 募る罪悪感


目が覚めると、見慣れない光景が目に入る。そこは響のベッドだった。


昨日の記憶が、モザイクのように頭の中でちらちらする。クラクションの音。へたりこむ自分。そして、真っ暗な視界。


「起きた...良かった...」


横に座る響の声に、ほっとしてしまう自分がいる。


「どうやって…」


「お母さん呼んで、家に連れて帰ってもらっただけ」彼は淡々と言った。「ベッドが一つしかなくって...ごめんね...」


彼の部屋には、まだサッカーの匂いが残っていた。ユニフォームの一部、トロフィー、部屋の隅に置かれた今は使えなくなったスパイク。


私は彼の目を恐る恐る見た。


「ごめん」


彼は深いため息をつき、私の額に手を置いた。


「ん、熱とかはないか...しばらく安静にしててね」


不思議な言葉だった。私が謝るべきなのに。私が心配されるべきではないのに。


「心配することない」と彼は続けた。「もう大丈夫」


彼の目に、トラウマへの理解と、優しさが宿っていた。


まるで、私の傷を癒すかのように。

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