第8話 贖罪のはじまり


あの日、私は全てを失った。いや、失ったのは私ではない。私を救ってくれた彼の人生だった。


事故の翌日、病院で初めて彼の状況を知らされた。担当医の冷静な声が、私の心を引き裂いた。


「右膝の靭帯と軟骨に重大なダメージ。プロサッカー選手としてのキャリアは、ほぼ不可能です」


私は、その瞬間、世界が崩れ落ちるのを感じた。


学校に戻った私は、響の過去を知った。部活の先輩たちが、彼の活躍を語る。


「響は違うよ。普通の選手じゃない。全国大会で活躍し、プロスカウトも注目していた逸材だったんだ」


その言葉一つ一つが、私の心に鋭いナイフを突き刺すように痛かった。


誰かの命を救うために、自分の全てを犠牲にした彼。私は、どう償えばいいのか分からなかった。


最初は、家事や世話を必死にした。でも、それでは到底足りない。私にできることは、彼の人生を、せめて少しでも良いものにすることだけ。


私の中で、贖罪の誓いが生まれた。


彼のために。彼の夢のために。たとえ、どんな形であっても。

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