第7話 心の傷


帰り道、久しぶりに軽い会話を楽しんでいた。凛の笑顔が、微かに戻ってきたような気がした。


突然。


カーッ!!


大型トラックのクラクションが、耳を刺すように鳴り響いた。


凛の体が固まる。目が泳ぎ、呼吸が止まったかのように。


「あ、あ、あぁ…」


彼女はその場に座り込んだ。歩道の端で、震える手を前に出し、うわ言のように呟き始めた。


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


トラックは通り過ぎ、周りの人々は不思議そうな目で彼女を見ている。僕は松葉杖を置いて、彼女の横に座った。


「凛」


彼女は聞こえていない。ただ、同じ言葉を繰り返すだけ。心の中で再生される、あの事故のトラウマ。一瞬の音が、彼女の中の傷を抉り返す。


僕は彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫だよ」


触れた瞬間、彼女の震えが少しずつ収まっていく。


刻まれた傷跡は、思ったよりも深かった。

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