第5話 微かな光
リハビリの合間、僕は決意した。このままじゃ、凛が駄目になってしまう。
「気分転換したいんだ」と、彼女に電話した。「一緒にどこか行かないか」
電話の向こうで、凛は小さく息を呑んだ。驚きと、わずかな期待が声に滲んでいたと思う。
「あ、あなたが望むなら…」彼女の返事は、いつもの震える声。罪と償いに縛られた少女の、微かな解放の瞬間。
待ち合わせは、街外れの小さな公園。僕は松葉杖を頼りに、のろのろと歩いてきた。
凛は黒のワンピース。いつもの制服とは違う、少し大人っぽい装い。目は落ち、緊張で固まっている。
「落ち着きなよ」僕は苦笑した。「別に特別なことするわけじゃない」
実際は、ただ近くの喫茶店に行き、お茶を飲むだけ。でも、それだけでも彼女にとっては大きな一歩のはずだった。
僕の足は痛む。でも、今は彼女の心の痛みを少しでも和らげたいと思った。罪悪感という名の牢獄から、わずかでも彼女を解放したくて。
「.........コーヒーは、お好きですか?」彼女は緊張した笑顔で提案した。
「...大好きだよ、甘くないと飲めないけど」
僕は笑った。これが、彼女の償いという名の感情から、少しずつ抜け出す最初の一歩になることを願いながら。
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