第24話 『モリトーク』の撮影という名の修羅場 6
スタッフたちが騒ぎながら平松ディレクターに問い詰める間、俺たちは雑談をしながら過ごす。
そして、スタッフたちが落ち着いたところで収録が再開する。
「俺の父さんは赤星白哉です」
俺は先ほどと同じように大きな声で言う。
「ふぅ。やっと公表できました。ここにいる人たちは皆んな俺が父さんの息子であることを知ってましたが。そういえばモリタさんはなぜ、俺が父さんの息子だと分かったんですか?」
「クロくんが小さい頃、白哉くんの撮影に付いてきたクロくんと何度も話したからね。気づくのは当たり前だよ。それに今のクロくんは白哉くんに似てるし」
「そ、そんなに似てますか?」
「あぁ。とても似てるよ」
そんな感じで話題を広げ、父さん関係の話題で盛り上がる。
そして次に俺が萌絵や南條さんと出会った頃の話となる。
「私とクロくんは小学生の頃に通ってたボイトレ教室が一緒だったんです。そこでクロくんと出会いました」
「ボイトレ教室で1番仲が良かったのは萌絵でしたね」
「あ、私もクロくんが1番だったよ!」
そう言って嬉しそうに笑う。
「むぅ」
そん俺たちを他所に、なぜか南條さんが頬を膨らませる。
(南條さん、その顔撮影されてるからやめた方がいいぞ)
そんなことを思いつつも萌絵との出会いや関係性を話していく。
「そういえば以前、岩見さんは『私以上の歌唱力を持った男の子が一緒のボイトレ教室に通ってた』と言ってましたね」
話題転換のためにモリタさんが話し混ざる。
「もしかして、その男の子って……?」
「はいっ!クロくんのことです!白哉さんの血を引いてるからというのもあるとは思いますが、とても歌が上手いんです!」
萌絵が笑顔で肯定する。
「なので今も私以上にクロくんは歌が上手いはずです!」
「そ、そんなことはないぞ。ボイトレ教室を辞めてから歌を歌うことなんてなくなったからな。今は絶対萌絵の方が上手だ」
「でも子供の頃は岩見さん以上の歌唱力を持ってて白哉くんの血を引いてるから歌手としての才能はあると思うよ。これはいずれクロくんが歌手デビューする日が来るかもしれないね」
「そうなったら私、絶対クロくんのことを応援するよ!いつか一緒に歌おうね!」
笑いながらタモリさんが言い、萌絵も嬉しそうに俺の歌手デビューを話す。
そんな感じで萌絵との会話に花を咲かせた。
萌絵との話を終え、南條さんとの出会いを話す。
「私とクロさんの出会いは白哉さんと共演した時です。その時、困ってた私をクロさんが助けてくれました。あの時のクロさんはヒーローに見えましたね」
「そんな大袈裟に言わなくても」
「大袈裟ではありませんよ。本当に……本当に私にはヒーローに見えましたから」
そう言って見惚れるほど眩しい笑顔を向ける。
「っ!そ、そうか。困ってた南條さんを助けることができて良かったよ」
俺は頬を掻きながら見惚れたことを誤魔化す。
「むぅ」
(だから収録中にそんな顔するなって。放送されるぞ)
隣に座る萌絵に向かい、心の中で呟く。
その後も南條さんとの会話に花を咲かせる。
「クロさんとは助けていただいた8年前以来お会いしてませんが、一度も忘れたことはありません。特に私のことを優しく抱きしめてくれた時の感触は今でも鮮明に覚えております」
懐かしいことを思い出すかのように南條さんが呟く。
「あの時、私はクロさんの優しさを感じることができてすごく嬉しかったです」
そう言って何故か萌絵を見る。
「むぅ」
すると頬を膨らませた萌絵がジトーっとした目で俺を見てくる。
「クロくんは8年前、南條さんのことを抱きしめたんだね」
「あ、あぁ。泣いてる南條さんを見て思わず抱きしめてしまったんだ。妹が『泣き止むには抱きしめるのが1番!』って言ってたからな。で、でも!あれは子供の頃の話だ!セクハラとかで訴えないでくれよ!」
「やっぱり抱きしめたんだね」
そう言った後、萌絵が南條さんを見る。
「わ、私だってクロくんから抱きしめられたことあるもんっ!しかも泣いてる私の頭を撫でてくれたし!」
「その話、要らなくないか?」
変なところで萌絵が対抗し始める。
しかし、俺の言葉をガン無視して萌絵が語り出す。
「クロくんの手は暖かくて気持ちよかったなぁ。今でもクロくんから撫でられた時の感触が鮮明に残ってるよ。愛華ちゃんには分からないと思うけど」
「うぅー!」
南條さんに対して頭を撫でたことはないので悔しそうな顔を見せる。
「で、でも!私はその後、手を繋いでくれました!そしてクロさんとたくさん散歩しました!」
「そ、それくらい私だってあるよ!手を繋いで歩いたことはないけど……い、一緒に買い物に行ったことあるもん!」
「なっ!わ、私だってクロさんと自動販売機まで行って……!」
等々、言いながら2人がマウントの取り合いをしている。
(仲良くしてぇぇぇっ!)
そう心の中で叫ぶ。
そして俺はモリタさんへ2人の会話を止めるようアイコンタクトを送る。
(止めなくていいんですか?)
(え、どうしてだい?こんな面白い話を止めるわけにはいかないよ)
(………)
そんな返事が返ってきた気がした。
(平松さんは……っ!)
こうなったらディレクターに止めてもらおうと思い平松さんを見ると…
「面白いことになってきたぁ!!!」
すごくテンションが高そうだった。
(ダメだ、止める気配がない)
今も2人は俺との仲をアピールしており、様々なことを言い合っていた。
(なんでこの2人は仲が悪いんだよ……)
そんなことを本気で思った。
『読者モデル』の表紙を飾った結果、知らぬ間にハーレムが完成していた。 昼寝部 @hirunebu
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