第11話 完璧な作戦
私と葵は電車を何本か乗り継ぎ動物園にやってきた。
動物園特有の匂いに鼻を刺激されながらチケットを買って中に入った。
「しーちゃん!はやく、はやく!」
「そんなに急がなくても動物は逃げないわよ」
葵は目をキラキラと輝かせ待ちきれないといった様子だ。
私の手を必死に引っ張っていくので自然に手を繋げてるのも良い。
「最初は何見るの?」
「うーん………決められない!!」
「それじゃあ、道にそって歩く?」
「そうする!!」
うっ、笑顔が眩しい。穢れを知らなそうな純粋無垢な笑顔をしてる。ほんとに可愛いわね。
「あっ!次はゾウだって!!」
道にそって進んで行くだけでもほとんどの動物を見れるようになっているのでここまで何匹も色々な動物を見てこれて。
キツネは葵の方が可愛い、レッサーパンダも葵の方が可愛かった。けどこの動物達も、もちろん可愛いので葵とこの動物達を合わせたらもっと可愛くなるんじゃないかって考えたりしてた。獣耳葵、ありね。
そうこうしてる間に太陽は真上まで上がり動物園に併設されているレストランでお昼ご飯を食べることにした。
本当はピクニックみたいな感じで作っても良かったけど来るのが決まったのが今日の朝のため作る時間と材料がなかった。料理するの葵だけど。
「うーん、カレーとオムライス、どっちにしようかな」
葵はメニュー表を何度も行ったり来たりして悩んでいた。
子供みたいですごく可愛いくて思わず動画を撮ろうとしてしまったがなんとか抑え眺めていた。
そして完璧な作戦を思いついた。
つまり、これは、チャンス!
「じゃあ私がカレーを頼むから、葵はオムライスを頼んで半分こする?」
「えっ!いいの!?」
「もちろん、私もどっちを食べようか悩んでたから」
「じゃあ半分こする!」
「わかったわ」
作戦の第一段間が成功したことにほっとしつつ店員さんを呼んでカレーとオムライスを注文した。
「よしっ」
「どうしたの?葵」
「言い忘れてたことがあって」
「言い忘れてたこと?」
なんだろう?全く検討もつかない。
葵は基本的に思ったことを良いことならすぐに教えてくれるので、もしかしたら何か嫌なことがあったかもしれない。
「えっとね」
「うん」
「きょ、今日のしーちゃんの服す、すごく似合ってるよ」
「へ?」
ニアッテル、にあってる、似合ってる。
頭の中で何度も繰り返し、やっと理解する。
「に、似合ってる!?」
「うん、すっごくかわいいよ」
「かわいい!!??」
もう頭の中はパニックだ。街中にゾンビが現れて逃げ惑う人々ぐらい入り乱れている。
「そ、そう?ありがとう」
「うん!」
「葵も服似合ってるよ」
「えへへ、ありがとう!」
かろうじて返答に成功した私はふと気づく。
今の会話カップルぽい、と。
もちろん普通の男女でも服装を褒め合うぐらいのことはするだろう。
しかし、葵は分からないけど、私は葵の傍で一生一緒にいたいと思っている。
ずっと葵のことを護って愛し合いたいのだ。
だから、この普通の会話でも私の心は満たされていた。家でいる時は基本的にラフな格好をしているのでちょっとおめかしした今の私を褒めてくれたのは凄く嬉しい。
「おまたせしました、オムライスとカレーライスです」
私たちがラブラブカップルトーク(主観)をしていると注文した商品が運ばれてきた。
「わぁぁぁ」
葵は目の中に星があるのかを疑うほど目をキラキラさせていた。
「「いただきます」」
冷めないうちに食べようということで会話もそこそこに食事を始めた。
「うん、美味しいわね」
「美味しい」
葵はほっぺが落ちるんじゃないかってぐらい頬を緩ましていてすごく可愛い。
さて、そろそろ作戦を本格的に始めましょうか。
「はい、葵、あ〜ん」
「ちょ、ちょっと待って」
「どうしたの?半分こするんでしょ?」
「そうだけど!じ、自分で食べるから大丈夫だよ!」
葵は頬を赤く染めながら首をブンブンと振り始めた。
「ほら、口開けて」
「だから、自分で食べるって!」
「いいから、いいから」
「もぉ〜」
葵は恥ずかしそうにしながら小さな口を開けた。
そこから白い歯とか可愛い舌が見えて少しイケないことをしてる気分になったがなんとかその気持ちを抑えて葵の口の中にスプーンを入れた。
「どう?美味しい?」
「うん、美味しいけど……」
「けど?」
「恥ずかしかった」
葵は俯きながら消え入りそうな声でそう言った。
そう!これぞ私の作戦『関節キスでドキドキさせちゃおう作戦』だ。
「じゃあ、はい」
「ん?」
私が内心で作戦の成功を喜んでいると葵がスプーンにオムライスを乗せて私の方に差し出してきた。
「しーちゃんもオムライス食べるんでしょ?」
「あっ、そ、そうだったわね」
完全に忘れてた。葵と関節キスをするために私のスプーンを使ったけどよくよく考えればこれ私も食べなきゃいけないやつじゃん。
なんならこのあと葵が口をつけたスプーンでカレーを食べ進めないといけないし。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないわ」
私が少し固まってしまったのを見て葵が声をかけてきた。少し首を傾げていてそこも可愛い。
「じゃあ、いただくわね」
「うん!」
葵の差し出してきたスプーンに意を決して口の中に入れた。
「どう?美味しい?」
「えぇ、すごく美味しいわ」
味は分からなかった。
クールな幼馴染の夢を見てると思っていたら現実だったらしい ねねろ @nenero666
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