第7話 幼馴染との学校
しーちゃんと再会した次の日の朝、いつもより早く起きてしまった僕はソワソワした気持ちで時間を潰していた。
(今日から一緒に登校できるのかな?)
今までは隣に住んでる人が誰なのかも知らなかったからしーちゃんだと知ってすごく驚いた。
昨日はずっと驚きっぱなしだったと思う。
やっぱりしーちゃんは大人っぽくなったけど根の部分は変わらずイタズラ好きな女の子なんだなと思った。
それにしてもしーちゃんの背、僕より高かったなあ。
昔からしーちゃんの方が大きかったし、この身長で勝てると思ってなかったけどやっぱり男の僕の方が小さいのはちょっと悔しい。
まぁ、気にしてもしょうがないか。身長が急に伸びるわけでもないし。それより今はしーちゃんの再会を喜ばなくっちゃ!
今の時刻は7時55分、学校までは徒歩15分ぐらいだからそろそろ出ようかなと悩んでいるとチャイムが鳴った。
急いで玄関までいくとしーちゃんが制服に身を包んで立っていた。
「おはよう!しーちゃん!」
「おはよう、葵」
「もしかして、一緒に登校してくれるの?」
「えぇ、今日からは一緒に行こうと思って」
「やったー!すぐに荷物もってくるからちょっと待っててね!」
しーちゃんとまた一緒に登校できるなんて嬉しいな〜
――――――――――――――――――――――――
葵が部屋の奥にカバンを取りに行ったのを見て私は息を吐いた。
「フゥ〜、朝から葵成分を補給できて幸せ」
正直、一緒に登校しようかは悩んだ。悩んだけどちょっとでも長く一緒にいたかったので一緒に登校することにしたのだ。
「「いってきまーす」」
そう言いながら葵と私は外に出た。
誰もいないのにいってきますを言うのは少し不思議気分だったけど葵と一緒に住んでる気がしてなんだか嬉しかった。
よし、それじゃあ計画を実行しますか。
「ねぇ、葵?」
「どうしたの?しーちゃん」
「手、つなごっか」
そうこれこそが私の葵と仲良くなろう計画第二弾「葵と手を繋いでさらに仲良くなろう」である。ちなみに第一弾は「葵の部屋の前で待って話そう」である。
まぁ、正直、成功するとは思ってない。
葵も見た目こそかわいいがもう高校生の男の子、流石に恥ずかしがって昔みたいに手を繋いではくれないだろう。
「うん!!」
ほら、やっぱり断られ……てない!?
え?ほんとにいいの!?手繋いでもいいの!?
やばいどうしよ、手汗とかかいてないよね!?
そうこう悩んでる内に葵が私の手を取って隣を歩き始めた。
「しーちゃんとまたこうして一緒に歩けて僕すっごく嬉しい!」
「え、えぇ、私もすごく嬉しいわ」
ハァハァ、葵の手、すべすべで柔らくて、少しもちもちしてる。やばい昨日クールキャラを崩さないように鏡の前で練習した大人のお姉さん顔が崩壊してるのを感じる。
「?、どうかしたの?しーちゃん?」
やばい、手を繋ぐだけでも精一杯なのにそんな上目遣いなんてされたらいよいよ限界に……いや!耐えるのよ高西栞!クールな幼馴染として、葵に大人のお姉さんとしての余裕を見せつけるの!
「い、いえ、なんでもないわ」
少しどもったけど多分セーフね。うん。セーフだと思えばセーフになるのよ。
「そっか!あっ、もしかして僕と手を繋ぐの嫌だった?」
「ち、ちがう!そもそも私から提案したから嫌なわけないでしょ?」
ほらだからそんな悲しそうな顔しないでよ。なんだかいじめてるみたいで不安になっちゃうから。
私もアイツらと同じようなことしてるんじゃないかって。
「ほんとに?嫌じゃない?」
「えぇ、ほんとよ、なんならずっと繋いでたいぐらいだわ」
「そっか、なら良かったよ。嫌になったらいつでも離していいからね?」
「大丈夫、嫌になることなんてないから」
そう、絶対にね。例え死んでもこの手だけはもう絶対に離さない。
校門が近づくにつれて当然私たちの周りにも人が増えてくる。みんな何故か私たちのことを見てくるし、正直少し居心地が悪い。
なによ?この天子様は私のよ。そんな感じの意味合いを込めて少し睨むとすぐに目を逸らして早歩きで学校へと向かっていった。けど、周りで小声で話してる人もいる。
「おい!高西さんが手を繋いで登校してるぞ!」
「高西さんの隣の男?あれ?ほんとに男か?あれ?」
「男子の制服来てるし多分男だろ」
「高西さん、弟でもいたのか?」
「まさか、彼氏?」
「いやいや、あんな小さいのが彼氏なわけないだろ」
「じゃあ迷子の子供かなんかってことか」
「多分そんな感じだろ、知らんけど」
なるほど、葵が私の弟……うん、それもいいわね。
ていうか手を繋いで登校したからみんなあんなに注目してたのね。
ふふん、私の葵だから絶対あげないわよ。
けど、葵は嫌じゃないかしから?
そう思い葵の方を見てみると、鼻歌混じりにすっごいニコニコして歩いていた。
「天使か?」
「ん?しーちゃん、なんか言った?」
「い、いえなんでもないわ」
あぶないあぶない、思わず声に出してしまった。
とりあえず嫌がったりはしてないようね。
もしかして私と登校できるのが嬉しすぎて周りの反応に気づいてない?
ふっ、そんな自惚れはしないわ。葵は案外寂しがり屋だからこの一ヶ月誰とも話せてないのが爆発してしまっただけね。うんうん。
―――――――――――――――――――――――――
(しーちゃんとの登校楽しいな〜)
――西宮葵は普通に高西栞との登校を楽しんでいて周りに全く気を配ってなかっただけだと気づくのはもう少し先のお話。
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