第4話

 エマの魔法で、救助に当たっていた男性達の身体能力が少しだけ向上する。

 その勢いに筋力は任せつつも、指示は何故かフィンリーがいつの間にか出しており、気づけば救助活動は終わっていた。

 幸いにも死者は出なかったが、怪我人が複数おり、それをエマが治癒魔法で癒して行く。

 だが……


「エマ。そこら辺でおやめなさい? 貴女、魔力かなり消耗したのでしょう?」


「で、でも! まだ怪我している人が……!」


 フィンリーの言葉で消耗を自覚したのか、エマの身体がふらつく。それをいつの間に近づいたのか、フィンリーが支えエマを近くの木陰に連れて行く。


「ここで休んでなさい。大丈夫、貴女のおかげで沢山の人が助かったわ!」


「うっ……は、はい……」


 消沈するエマに、フィンリーは優しく微笑む。そこへ、一人の青年がやって来た。砂埃で汚れた金髪と服をしつつも、エマの方へ視線を向けると彼は一粒の涙を流す。エマが驚いた顔をしていると、青年が口を開いた。


「うぅ……ありがとよ、エマ! お前がいなきゃ、俺達……今頃どうなっていたか! 本当に感謝しているんだぜ……うっうう! 祖母ちゃんにも、無事だって伝えねぇと! じゃあな、エマ……と、占い師のあんちゃん!」


「え、あ、う、うん。じゃあね、ルイス」


 ルイスと呼ばれた青年は、近くで待っていた茶髪の少女と共に連れ立って歩いて行く。そんな彼を見て、フィンリーが口を開いた。


「あの子、宿屋のマダムのお孫さんね? 中々良い子じゃない」


「うん、ルイスは……良い人。でも……」


 仲睦まじい姿を見つめながら、エマが切なそうに微笑む。それを見たフィンリーが、エマを抱きかかえた。


「わっ!?」


「アタシ達も、村に戻りましょう? ほら、見てごらんなさい? ミスターエイベルが、後はなんとかしてくれそうだもの」

 

 言われて視線を向ければ、確かに採掘場の責任者のエイベルが救助の後始末をしており、怪我人達もエマの治療もあってある程度回復したらしい、歩いて村に戻れる者もおり、これならエマがこれ以上魔力を消耗する必要性はなさそうだった。

 安堵すると、急激な眠気がエマを襲う。

 気付けばフィンリーの腕の中で、寝息を立てて眠っていた――


 ****


「うぅ……ん?」


「気が付いたわね? エマ」


 目が覚めた場所は、宿屋の休憩場のソファーの上だった。その近くで、フィンリーが微笑んでおり、宿屋の老婆は、無事だった孫のルイスとその恋人の世話をしている様子だった。

 上半身を起こし、周囲を見渡せば、他にも何人かが宿屋で引き続き手当てを受けていた。

 だが、その表情は皆助かった安堵で溢れていた。


「重傷者は、村のドクターが治療に当たっていて、酷い人については、街の方の大きな病院へ運ばれたらしいわ」


「そう、ですか……」


「エマ、誇りなさい? 貴女がいたから、重傷者も命に別状がなかったの。死者もいないなんて、あの状況では奇跡よ? もっと、自分を褒めてあげなさい?」


 そう言われても、エマは後悔の方が大きかった。もっと自分に力があればと思ってしまう。

 だからこそ、彼女はある事を決めていた――

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