第21話 タクミくんのお気持ちファーストなんよ♡

僕は中層に初進出する新3軍のみんなと、上層に稼ぎに行く新4軍のみんなを見送りに迷宮の入口まで来ていた。いつもだと門で見送りなんだけど、今日は初編成ということで、門番さんにも事前に許可をもらっている。ちなみに新4軍は、御堂健太郎くんをリーダーとして、誰一人変更がない。


「なぁ、タクミ。せめて新発田さんだけでも加入してくれると、俺たちもやる気が5割増しなんだが……」


御堂くんの言葉に、残る4人が一斉にうなずく。


「何が悲しくて、またこいつらとつるむ日々なんだ……御子柴のヤツなんて、旧3軍でも新3軍でも女子に囲まれるという羨ましい編成だというのに……」

「あぁ、せめて貴重なフリーである新発田さんに良いとこ見せたいんだよ……」


切実な思いが伝わってくるけど、当の新発田さんが『あいつらと一緒に潜るとか、初日に輪姦されそうだからゼッタイ嫌!』と拒否したのでどうしようもない。お前らが性欲をむき出しにした発言を頻発するから避けられるんだよ。大人しく娼館に行っとけ。


「お前らはそういうけどな、女子に囲まれるというのもプレッシャーなんだぞ」


御子柴一心くんが苦々しげに答える。ちなみに中学校は違うんだけど、御子柴くんの無害エピソードは僕も聞いたことがある。『先生、男子がエッチな目でこっちを見てきます!』という女子の訴えにより、プールの授業の際に『男男男御女女女』というコース分けをされたという逸話だ。だから、女子軍団にも安心して混ぜ込める。うちの中学? 銀河くんが真ん中役を務めたよ。


ちなみに御子柴くんも普通に娼館に行くけど、なぜかその点も嫌がられない、結構お得なキャラなのだ。


「とりあえずよろしくね、日花里ちゃん。無理はしないで良いから」


僕たちが持ち物の再点検をしていると、ガヤガヤと音を立てながら、政府軍の皆さんが到着した。彼らは訓練を兼ねて、重要なエネルギー源である魔力石を回収しているのだ。その中には、僕たちの師匠ともいうべきカナレ隊長さんの姿があった。ということは精鋭部隊で、中層にチャレンジするのか。


「あぁ、君たちか。中層に挑戦するんだったね。部下から報告は受けているよ、チナツとハルカが相当強くなったらしいね」


カナレさんは歴戦の武人と言った風情を漂わせつつ、僕たちにも丁寧な態度を崩さない人格者だ。若い頃は序列も800位台まで上り詰めたことがあるらしい。


「レクチャーはさせてもらったけど、くれぐれも無理はしないように。特にオパール・ケルベロスは難敵だから、遭遇したらすぐに撤退しなさい。活性化すると他のパーティに危険が及ぶ可能性があるから、入口に待機している連絡兵に知らせるように」

「分かりました。よろしくお願いします」


リーダーである日花里ちゃんが丁寧に応対しながら、いくつかのアドバイスを追加でもらっている。カナレさんのおかげで、僕たちはだいぶ助けられてきた。僕は2人の様子を見ながら、迷宮の入口に視線を送る。上層・中層・深層と区別されているけど、実はそれぞれの迷宮は繋がっていない。あくまで難易度に応じて名付けられたのだ。


そして、深層は普段は入口自体が建物に囲まれて、万が一の侵入事故が起きないようにされている。大隊レベルの軍が送り込まれて、壊滅状態で成果ゼロで逃げ帰ってきたのが深層という魔窟だ。


「ところで、タクミくん。マクガレフにあの『神速』のウィードさんが滞在しているんだよ。いやー、私も一手指南をお願いしたけど、軽くひねられてしまってねぇ。『果し合いをするまでもないわ』と言われてしまったよ」


あ、僕たち、そのおじさんのことはよく知っています。千奈津ちゃんと果し合いをして、千奈津ちゃんが瞬殺いたしました。このマクガレフでは最上位の実力者であるカナレさんが相手にされないウィードさんを瞬殺した千奈津ちゃんって……


「タクミくん、チェックは大丈夫よ」


遥香ちゃんと御子柴くんが声をかけてくる。その声は自信に満ち溢れていて、とても頼もしい。


「この結果次第では、銀河くんたちに連絡をして、戻ってきてもらおう。この稼ぎのペースなら、みんなが市民権を購入することも夢じゃない」

「そうね。私たちが普通の仕事をして生活できる未来が来るのね……諦めていた未来が、目の前に来てるなんて……」


遥香ちゃんが涙ぐみながら、日花里ちゃんと手を取り合っている。


「……その、ゴメン。そんな時に、あれなんだけど……」

「良いってことよぉ。私たち的には、順番が早く回ってくる方が良いんだしさぁ」

「うん、私も。……その、今日はきっと興奮で身体が火照るから、タクミくんに冷ましてほしいの……♡」


僕たちは男子の視線を避けて、こそこそと言葉を交わす。そう、今日の僕はすごく大事なミッションを抱えているのだ。


「じゃあ、行ってくるねぇ。さぁ千雨、ご馳走がたくさん待ってるよ。楽しみだねぇ」


そして迷宮に転送されていくみんなの姿を見届けから、僕は詩織ちゃんのお店に向かう。精力回復薬を買い求めるために……。


********


「お帰りなさい、タクミくん。お風呂にする? お食事にする? それとも、うちの処女にするん?」


拠点に帰宅した早々、僕はリラちゃんから積極的なアプローチを受けていた。ちなみに他に拠点に残っているのは八橋くんと高田ほのかちゃん、島崎くるみちゃん、遠藤紗季ちゃん、新発田皇子ちゃんとなっている。


なぜこんな展開になっているかと言うと、一番最後に処女をもらう予定だった遥香ちゃんが、『中層って激しい戦いになるんだよね……できたら、初日はタクミくんに抱かれて寝たいの』とリラちゃんに順番を譲ってくれないか相談したところ、『じゃあ、うちはお昼のうちに抱かれて処女喪失しとくから、遥香ちゃんは夜にしっぽりと抱いてもらいよ♡』と答えたためである。


八橋くんもほのかちゃんとすでにセックスをしたらしく、こっそり相談をしたところ『お前みたいな主人公タイプは好きにすれば良いんだよ。俺は俺なりに幸せだから、気にすんな』と割と男らしい返答をいただいた。くるみちゃんたちも異論なかったので、今日の僕のお仕事は、リラちゃんと遥香ちゃんを抱いてあげることなのだ……いつからAV男優にジョブチェンジしたんだろう、僕って。


「じゃあ、リラちゃんで」

「うん、ええよ。たっぷりとサービスしてから、処女をあげるなぁ♡」


僕たちは軽くキスを交わしてから、手を取り合って僕の寝室へと向かう。


「なぁ、千奈津ちゃんは制服で、日花里ちゃんは娼婦さんみたいなエッチな服やったんやろ?」

「うん、そうだよ。リラちゃんも、何か特別な服を着てくれるの?」

「もちろんやわぁ。タクミくんが見ただけで襲いたくなるようなカッコしてくるから、ちょっとだけ待っててな♡」


リラちゃんはちょっとウェーブがかかってふんわりとした黒髪にふんわりとした口調をかぶせながら、廊下でもう一度キスを求めてきた。


「あっ、羨ましいなぁ……でも、今日はリラの特別な日だもんね」


ちょうど通りかかったくるみちゃんが、羨ましそうに僕たちを見つめている。


「じゃあくるみちゃん、時間があったらあとで3人でしよかぁ♡」


リラちゃんがとんでもない発言をさらりと入れてくる。千奈津ちゃんが乱入するのを除けば、3人でするとか僕も経験ないんだけど?


「えっ、でもリラのロストバージンの日なのに、それは悪いよ」

「ええよ、最初の一回だけ思い出に残れば。私やのうて、タクミくんのお気持ちファーストでいかんと、奴隷失格やもん♡」


リラちゃんはにこにこしながら僕の腕をつかんで、クラスで最高級のお山を押し当ててくる。いや、奴隷はあくまでスキルの熟練度を高めるためのものだからね?


「じゃあ、お言葉に甘えて一緒にしようかな……セフレとしては、何でもできる女の子にならないといけないもんね」


くるみちゃんも乗り気になって、3人ですることがほぼ確定してしまった。女の子同士で合意したら、僕に拒否権はない。


「じゃあ、待っててなぁ。エロエロなお洋服着て、タクミくんを誘惑したるから♡」


そして僕は、リラちゃんのエロ可愛い衣装を妄想しながら、お部屋で待たされるのだった。精力回復薬、余計に一本買っておいて良かった……。

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