第19話 僕の性癖が共有されすぎ問題☆
「ねえ、タクミくん。今日はパーティの再編成をするから、探索はお休みなんだよね?」
野獣こと日花里ちゃんとのセックスから解放され、水浴びをしようと思って中庭に移動していた僕に声をかけてきたのはくるみちゃんだ。ちなみに日花里ちゃんは、セックスの内容の詳しい事情聴取をしようとする千奈津ちゃんに連行されていった。他の女の子とのセックスにまで興味津々なのって、何でなんだろう……。
「うん、そうだよ。久し振りの休みだから、みんなぐっすり寝てるみたいだね。八橋くんも、朝ごはんはゆっくり作るって言ってたし」
「そう、良かった。ねぇ、私ってセフレ宣言したけど、全然セックスできてないでしょう? だから、気になっちゃってて」
くるみちゃんの視線が、僕の下半身に注がれる。とても素晴らしいシチュエーションなんだけど、ちょっとタイミングが悪い。僕のあそこは日花里ちゃんとの壮絶な行為の痕跡でべっとべとに汚れて生臭いし、残弾は残り1発くらいだ。え、あれだけヤりまくったのにまだ残弾がある僕ってすごくない?
「いや、悪いよ。実は……」
「知ってるよ? 日花里ちゃんの処女をもらってあげてたんでしょう?」
くるみちゃんは不思議そうに首をかしげる。そうだった、僕が誰とセックスをするかは、抜け駆け防止のために女子の間で共有されているんだった。
「でも男の子って、エッチなこと大好きでしょう? デザート代わりに、セフレの身体を食べてみない?」
「はい、お願いします」
「良かった。実はね、タクミくんが来るかもって、日花里ちゃんたちに連絡をもらったから待ってたんだよ。じゃあ、私の部屋へ行く? もちろん、タクミくんがここでシたいなら、変態なセフレとしては従うけど……♡」
みんな、僕に対するサービス精神が旺盛すぎませんか? いや、嫌いじゃないんだよ、むしろ大好物だよ。ここでするとか、開放感があって興味はあるけど、もし男子の誰かが起きだしてきてくるみちゃんの裸を見られてしまったら申し訳ない。
「ありがとう。じゃあ、くるみちゃんのお部屋に行こうか」
こうして僕は、女子のお部屋にお持ち帰りされてセックスという、なかなか羨ましいシチュエーションでおかわりをしたのだった。
なお、匂いを嗅がれながら「タクミくんってアレが好きなんでしょう? 千奈津ちゃんに教えてもらったんだ」と言われた時には、思わず天を仰いだけどね。先日の件もそうだけど、僕の性癖って共有されすぎだろう……。
********
今日の議題は、中層に潜るメンバーの選抜とパーティの再編成だ。本来は中核メンバーの戦力を温存するために他のメンバーが随伴や増援の露払いをして、メインである大型エネミーの相手を主力がするのがセオリーだ。しかし、僕たちの実力では、中層ではサポートどころか足手まといになりかねない。
「当然ながら、メインアタッカーは千奈津ちゃんで、サブアタッカーが遥香ちゃんだね」
というか、ほぼアタッカーは千奈津ちゃんだ。スキルの発動には基本的に魔力を必要として、強力になるほど指数関数的に魔力を消費する。アギラウスの杖のおかげで恐ろしいほどに効率化されたけど、遥香ちゃんが得意とする儀式魔法自体の燃費が最悪なので、乱発すると赤字になるのだ。
逆に、千奈津ちゃんのスキルである「武器強化」は弱スキルに分類されており、消費魔力も大したことがない。儀式魔法を戦車に例えたら、武器強化は原付レベルだ。化け物じみた戦闘継続能力を兼ね備えているため、魔力には問題がない。
残りの体力的な部分は、詩織ちゃんの『キンベーン商会』から体力回復薬を大量に買い付けることで解決させる。ブラック企業感があることはさておき、遥香ちゃんの出番は、主に大量に接敵した時の数減らしとなる見込みだ。
「あとは、残り2人の人選か」
2人で良いかな?と思って、政府軍に所属して僕たちの軍事教官も務めてくれたカナレさんのところに相談に行ったけれど、最悪の事態の際に1人でも情報を持ち帰る必要があるため、最低でも4人はいないと中層での活動は認められないらしい。
「1人は日花里ちゃんでええんやないかなぁ?」
挙手をして、吉崎リラちゃんが発言をしてきた。
「千奈津ちゃんともお友達で相性がええし、冷静な判断が必要やろうから、リーダーとアタッカーは分けた方がええと思うんよ」
「確かに、冷静な判断をして指示できる人が必要だな」
御堂くんがいうと、ほぼ全員が一斉にうなずく。普通、リーダー役は遥香ちゃんが任されるところなのに、どれだけ迷宮でやらかしたんだろう、千奈津ちゃんと遥香ちゃんって……。
「それになぁ、日花里ちゃんがいた方がええような気がするんよ。うちの『直感』スキルがなぁ、閃いてん」
リラちゃんは不随意に発動するという珍しい『直感』スキルを所有している。悪い方向には作用しないらしいので、これはリラちゃんの提案どおりに日花里ちゃんをメンバーに加えた方が良いだろう。確認をしても全会一致だったので、3人目は日花里ちゃんに決定した。
「残りはもう一人、最低限レベルの戦闘能力とか、日花里ちゃんのガードとか、サポートに役立つスキルのある人が良いんだけど……」
「いや、無理だよ。僕のスキルはサポートできるタイプじゃないし、足手まといにしかならないのは昨日も痛感した。……それに、女子の中に僕1人だけはもう勘弁してほしいんだよ……」
僕と目が合った3軍の御子柴一心くんが、必死になって辞退してくる。まぁ、自分に気がない女子に囲まれて過ごすのってキツいよね。
「個人的な要望を言えば、タクミくんに一緒に来てもらいたいんだけど……」
「ダメよ遥香。それって一緒にいたいだけでしょう? タクミくんがいなくなったら、こっちが困るんだから」
「うう、やっぱりダメか」
ちなみに、残ったメンバーは今まで通りに上層に稼ぎに行く組と、拠点に残ってサポートに回る組に振り分ける予定だ。メイドスキル持ちの船越アリアちゃんが抜けた穴は大きすぎて、洗濯等々の家事が回っていないのだ。
「ただ、残り1人を決めないと中層に行けないんだよね」
戦闘力で言ったら残りは3軍の遠藤紗季ちゃんか、4軍リーダーの御堂健太郎くんだ。ただ、御堂くんは上層組のリーダーを務めてもらう必要がある。
「消去法で言ったら、遠藤さんなんだけど……」
あ、やっぱり嫌だよね。顔がすでに引きつっている。内向的な性格の遠藤さんが、これまでに迷宮に潜ってこれたのは奇跡的だった。みんなで助け合わないといけないという意識があったんだろうけど、潜らなくて良い選択肢があるならそれに飛びつくタイプでもある。
僕も元々、遠藤さんには政府に提出する報告書の作成役を代わってもらうつもりでいた。最初の頃は僕と詩織ちゃんしか読み書きを習得できていなかったけど、遠藤さんもかなりできるようになっている。ちなみにくるみちゃんが経理担当だ。
「うーん、どうしようか。やっぱり御子柴くん、お願いできない? 中層で通用することが分かったら、銀河くんたちに連絡を取って戻ってきてもらって、もう一度再編成するから」
「……分かったよ、でも早めに再編成してくれよ? ……何が悲しくて、タクミの彼女3人に囲まれて1日を過ごさなきゃいけないんだ……」
うん、そうですよね。ごめんなさい。逆の立場だったら僕でも嫌です。こうして僕たちは役割分担などのその他の話題を決めて、会議を終了させたのだった。
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