第9話 くるみちゃんは『お礼の前払い』をする。★

詩織ちゃんが自宅へ、夏帆ちゃんが住み込み先である『キンベーン商会』に帰っていく。治安がすごく良いとは言えない街なので、御堂くん4軍の男子たちが送っていってくれた。今日は拠点に来てくれたけど、明日からの2人の奴隷売買はお店でやらないといけないなぁ。僕たちは明日からのスケジュールを確認し合い、先にそれぞれの部屋へ戻っていた。


「タクミくん、いるかなぁ?」


もう寝ようかなと思った矢先に、部屋のドアがコンコンと鳴った。ノックと共に聞こえてきた声は、千奈津ちゃんだ。


「うん、いるよ」

「じゃあ、ちょいとお邪魔しますねぇ」


千奈津ちゃんがノックをして入室してくるなんて珍しい……と思ったら、後ろからおずおずと入ってきたのは島崎くるみちゃんだった。しかも2人とも、普段はみんなが大事にしまい込んでいる、学園時代の制服を身に着けている。


「あのねぇ、タクミくん。くるみちゃんが『お礼』をしたいんだって」


くるみちゃんはもじもじとしながら、耳まで真っ赤になっている。言われなくても、2人の表情からお礼の意味は分かっている。これまでに5軍の女の子たちは自主的に援助の『お礼』をしてくれていたけど、3軍の女子には特に大きな援助もしてこなかったので、今まではそんな機会もなかった。


「えっと、本当に良いの?」

「ええ、3軍の女子は私と遥香と紗季だけでしょう? 2人とも処女だったし、日花里ちゃんのパーティもみんな処女だっていうから、立候補してきたの」


くるみちゃんはバスケットボールをやっていただけのことはあって、結構な長身だ。僕よりちょっと背が高い。夏帆ちゃんと一緒で、彼氏がいたはずだ。ボーイッシュな髪形なのに、お山の高さは結構なものがある。正直なところ、気になっていた女の子でもある。


「予算を作ったのは私だから、このままだとまずいのは分かってる。タクミくんのスキルだけが頼りなの。だからお願い、打算的で嫌かもしれないけど、私たちの気持ちを受け取ってほしいの。詩織ちゃんから避妊薬も分けてもらって、飲んできたから……」

「良かったねぇ、タクミくん。何でもオッケーな女子だよぉ?」


千奈津ちゃんが『このこのぉ』みたいな感じで、肘で小突いてくる。


「ありがとう、くるみちゃん。僕のことを思ってくれて、嬉しいよ……」


僕はくるみちゃんに近付くと、少し上を向いて唇を重ねた。身体に触れると、ちょっと違和感がある。


「あっ、下着はつけてないんだ?」

「うん、これはタクミくんに興奮してもらうための格好だから、下着は邪魔かなと思って」

「……じゃあ、もしかして下も?」


くるみちゃんは赤面しながらこくんとうなずく。マジか、制服姿にノーブラノーパンは刺激的すぎる。


「あとで見せてもらうけど、その前にたくさんキスをして、先に心を解していこうね」


僕は再びくるみちゃんの唇を奪うと、濃厚なキスを始めた。そしてそのまま、優しくベッドに押し倒す。処女ではないと言っても、この世界に転移してからはご無沙汰のはずだ。久し振りなんだから、良い思い出にしてあげたい。


「タクミくん、久し振りだからちゃんとできないかもしれないけど、ゴメンね」

「そんなこと、気にしなくても大丈夫だよ。時間はあるし、ゆっくりやっていこうね」

「ほぅ、そんなことを言いながら、しっかりとねっとりと、ラブラブですなぁ。分かる、わかるよぉ。『時間はあるし』とはつまり、この部屋にお泊りさせるご所存ですねぇ?」

「……いや、何でまだいるの、千奈津ちゃん」

「えっ、それはもちろん見学で……私もタクミくんに純潔を捧げる時の参考にしたいと思って……」


当たり前のように答えながら、千奈津ちゃんはてへぺろのポーズを取って見せる。黙っていれば文句なしの美少女なのに、わざとかと疑ってしまいたくなるくらい残念だ。


「ダメ。千奈津ちゃんは退場です」

「えぇ、高まる愛は今からだというのに……」

「はいはい。出て行ってくださいね」


僕はベッドから起き上がって千奈津ちゃんを追い出す。くるみちゃんはその様子を見ながら、くすくすと笑う。


「なんか、千奈津ちゃんのおかげで緊張がほぐれちゃったみたい」

「それは良かった。じゃあ、続きをしようか」

「うん。せっかくだから、制服姿のクラスメイトとのセックスを愉しんでね。タクミくんが望むなら、私、毎日通っても良いから……♡」


そして僕たちは、もう一度抱き合いながらキスをして、お互いを思いやる気持ちを確かめ合う。少し緊張していたくるみちゃんの表情が、打ち解けた感じになってくれているのが嬉しい。


「すごく大きくて柔らかいね……Hカップくらい?」

「もう、男子ってそうやってすぐに胸を見るんだから……リラちゃんや日花里ちゃんと比べたでしょう。残念、私は日花里ちゃんよりワンサイズ下の、Gカップでした」


バスケ部らしいボーイッシュ感と、女の子としても魅力をギュッと凝縮させたお山との対比がすごい。しかも、あの日花里ちゃんと張り合えるくらいに大きいとか……幸せすぎる。


「くるみちゃん、じゃあセックスするね」

「うん。でもお願いがあるの。嘘でも良いから、好きって言いながらキスしてほしいな。それとね、名前も呼び捨てにしてほしいの」


そんな可愛いことを言われたら断れるわけがない。僕はベッドに優しく押し倒したくるみちゃんの手と恋人つなぎをして、まずはほっぺにキスをしてあげる。


「好きだよ、くるみ」

「うん、私もタクミくんのことが好き。タクミくんがいなかったら、きっと私たち、バラバラになってたよ。タクミくんが別の女の子を好きなのは知ってるけど、今は恋人気分で抱いて……」


制服姿のくるみちゃんをギュッと力強く抱きしめてあげる。くるみちゃんが僕より長身なせいでちょっとカッコ悪いけど、男らしいところを見せてあげたかった。そのまま唇を重ねて、さっきよりも強くキスをする。


「タクミくんって、こんな強引な感じもできるんだね」

「嫌だった?」

「ううん、むしろ大好き。ねぇ、続きをしよう?」


僕は可能な限り優しく、くるみちゃんを愛してあげる。


「うふふ、ちょっとくすぐったいよ。……でも、こんなに優しくしてもらえるなら、早くお願いすれば良かったなぁ。男子ってすぐに娼館に行きたがるし、私たちのことを女って思ってくれてないじゃん?」

「えっ、そんなことはないと思うけど……」


「あぁ、タクミくんと八橋くんはね……あ、嫌味で言ってるわけじゃないから、気を悪くしないでね。本当なら大学生になって青春してるはずだったのに、毎日毎日、ほとんど休みなしで外に出て、殺すために魔物を探し回って、見つけたら必死で戦ってきても、それでも生活はじり貧で……恋人になってもお互いいつ死ぬか分からないから、クラスメイトと付き合おうって余裕なんて、なかったもんね」


確かに僕たちは、恋愛に割ける時間なんてほとんどなかった。恋人が行方不明になって自殺した坂崎さんのことも、少なからず影響していたと思う。


「ねぇ、紀藤くんや紫音ちゃんのこと、怒ってる?」


紀藤銀河くんも長坂紫音ちゃんも、拠点を出て行った1軍パーティで、このクラスで2組しかいない恋人同士の関係だ。


「いや、怒ったりなんてしてないよ。あいつらだって生きていくのに必死なんだから」

「……タクミくんならそう言ってくれると思ってた。ねぇ、後で教えたいことがあるの。ピロートークも楽しみましょうね」


こうして、僕たちは気持ちを交わして、自分では埋められない隙間を埋め合っていくのだった。


僕は島崎くるみちゃんから受け取っている『お礼の前払い』……クラス転移前の価値観だったら絶対に受け取れないだろうけど、この殺伐とした世界で毎日のように5軍の女の子たちの『お礼』を受けていた僕は、もうその辺の倫理観がマヒしてしまっている。


「ねぇ、もっと愛し合おう? ヤなこと、全部忘れたいの……っ」


可愛い声とともに、くるみちゃんは抱き着いてくる。見た目だけだともっとサバサバした性格だと思ってたけど、こんなに積極的で可愛い女の子だったなんて。


「ねぇ、おねだりしたいことがあるんだけど、良いかな?」

「どんなお願い?」


くるみちゃんが、とろんと蕩けた目で僕を見つめてくる。


「私ね、もっとたくさんタクミくんと愛し合いたくなっちゃった……この拠点で処女じゃないのって私だけだし、彼女面なんてしないから、セフレにしてくれないかな?」

「くるみちゃんがそうしてくれるなら、僕は大歓迎だよ」

「ありがとうっ♡ もちろん、他の子もセフレになりたいって言ったら、焼きもちを焼いたりしないで、ちゃんとタクミくんを仲良くシェアするからね、嬉しいなぁ、日花里ちゃんたちがいたから遠慮してたけど、もっと早く提案すれば良かったね……好きっ、大好きだよ、タクミくん……♡」

「僕も好きだよ、くるみちゃん」

「うん……何号さんでも良いから、便利なセフレのくるみを可愛がってね」


僕はくるみちゃんを抱きしめて、しばらく余韻に浸っていた。明日はシーツを交換しなきゃな……そして僕たちはさらに愛し合い、ピロートークで大事な情報を交換しつつ、さらに愛を深めていった。


夜明け前になると、千奈津ちゃんが覗きに忍び込んできた。そして『おーおー、昨日は随分とお盛んだったようですねぇ。お楽しみになれましたか、だ・ん・な・さ・ま♡』と散々にからかわれた。


そして千奈津ちゃんとくるみちゃんは、汚れた身体を軽く拭き、準備を整えるとパーティに合流して魔力石の採取に向かっていった。ただ、僕たちは少しだけ希望を多めに持って、いつもとは少し違う夜明けを迎えたのだった。

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