初々しい関係
「お、おはよ~」
「あ、ああ。おはよう」
眠れなかった。明日美咲が起こしに来るって考えてたら全然眠れなかった。それは美咲もおなじだったらしい。薄っすらとクマが出てる。
「え、えっともう起きてたんだ」
「ま、まあな。でも早いな。まだ登校する数時間前だぞ?」
「そ、それは目が冷めちゃって……それに急いで登校するよりゆっくり登校できる方が良いでしょ?」
「ま、まあな。それよりもう朝食べたのか? 今から用意するから食べていくか? 外で待ってるのも何だろ」
「そ、それは……良いんですかい?」
「どうして下っ端みたいになるんだよ美咲。ほら。入ってけって。ユリアのことも気になるだろ?」
「そ、そういえば昨日ここに泊まったんだよね? ユリアさん」
「面倒は妹が見てくれたけどな」
「そ、それじゃあ、おじゃましま~す」
「いらっしゃい! 美咲さん。お久しぶりです!」
「美弥ちゃん!」
「久しぶりです~」
「ユリアさんはどこですか? 心配だったので……」
「私の部屋です。さ、上がってください。コーヒーでいいでしょうか?」
「あ、ありがとうございます~」
「お兄ちゃん、あんたほらカバンを持ってあげなさい。まったく付き合い始めたって聞いたのに……」
「おう。じゃあこっちおいておくよ」
「ありがとう、悠真くん。じゃあユリアちゃんのところいってきま~す!」
「うんうん。やっぱりお姉ちゃんはいい人です! あんなこと幼馴染だなんてお兄ちゃんは恵まれてるね!」
「わかったって。自覚はしてるよ」
「やけに素直だね。まあ良いことだよ」
「ユリアちゃん、入っても平気かな?」
外からノックされました。ミサキさんです。
「はい! 大丈夫です!」
「ユリアちゃんどうかな調子は? 未来人って聞いたけどなにか変化はある?」
「あ~聞いちゃったんですか。すみません今まで隠し事してて」
「別に気にしてないよ。それより体調は?」
「体調は問題ない感じです。ユウマさんは?」
「下のリビングに居るよ。昨日教えてもらったんだ。色々。それと……あの日の告白も私聞いてたんだ」
「まあ聞こえちゃいますよねぇ。ごめんなさい。あとから来た私が割り込むように……」
「そんなことない! 今日はね、女子会をしに来たの! ねえ、悠真くんのどんなところが好きになっちゃったの?」
「そ、そんな事できませんよ! だって私……」
「未来人だから? それとも私が物語のヒロインだから? でも私は友達で、同じ人を好きになった、ユリアさんと仲良くしたいの。もうすぐ未来に帰って会えなくなるとしても」
「わ、私も友達だって思ってますぅ~! でも自分が許せなくて……私……私……」
「良いよ良いよ。泣きな泣きな! それで登校まで二人っきりで女子会トーク!」
「み、ミサキさん~! ミサキさんにバブみを感じてしまいますぅ~」
「お~よしよし。で、どういうところが好きなの?」
「うっ意地悪そうな顔ですぅ。そうですねぇまずは最初にあったときのことで……」
そうして女子会が始まりました。私は今までの思い出を話します。ミサキさんはうれしそうに、自分のことのように聞いています。
「それで、それで? もっと聞きたいなぁ」
「い、嫌な気持ちになりませんか? 自分の好きな人に粉かけられるって」
「それだけ悠真くんが素敵な人ってことでしょ? 誇らしく思うよ」
すごいですミサキさんは。私は嫉妬してばっかで足引っ張ってばっかで。そんな自分に嫌気が差して。
「ほらまたその顔!」
ビスっと頭をつつかれます。
「あうっ」
「すきなこと、もっと知りたいの。友達として。だからそんな顔しないで? ね?」
「ミサキさんはやっぱり私の推しカップルですぅ~!」
「わ! 抱きつかないでよくすぐったいよぉ!」
「え~い! ユウマさんの心を射止めた悪い奴め! こちょこちょします!」
「あはははは! やめてってばぁ!」
「女同士の友情ってのも良いものですね! お兄ちゃん!」
「俺に聞かないでくれ。あの二人声が大きくて全部届いてるぞこっちに」
「幸せものだね。愛してくれる人を泣かせちゃだめですよ?」
「どっちかは選ばないといけないんだから泣かせるもんじゃないのか?」
「まったくお兄ちゃんにはもったいないくらい」
「美弥は誰の味方なんだ……?」
「それじゃあ行ってきます」
「いってきま~す! 美弥さん!」
「行ってきますね。美弥ちゃん」
そう言って学校への道を歩き始める。だが二人のおしゃべりは止まらない。
「ね? 見てくださいミサキさん。さりげな~く当たり前みたいに車道側に立つユウマさん! 意識する前からこういうことしてくるんですよこの悪い男!」
「ほんとだ。そういえば小さい頃もこうしてくれてた記憶があるなぁ」
「昔っから変わらないんですねこのひとは。それで自分はたいしたことない人って認識らしいですよ?」
「昔からモテてたからなぁ悠真くんは。バレンタインにどっさり。クリスマスに誘われてて気が気じゃなかったんだから」
「ミサキさんの気持ちにも気が付かずここまで来てますからね。悪い男ですよ本当に」
ねー。と顔を合わせてハモっている。止まらないなこの二人。
「それで、ユリアちゃん、山の上でカワイイって言われた時の話なんだけどさぁ」
「ミサキさんの中学1年のときの話の方聞かせてくださいよぉ」
……おれを放っておいてふたりでイチャイチャしてるように見えるんだが!? と、そこに陽斗が
「甘いのぉ。いや甘々すぎて胸焼けするわ。お前への惚気合戦聞かされる身にもなれよ」
「助けろお前! だいたい昨日言ってたように、美咲と俺のイチャイチャを見せて安心して帰れるようにする作戦じゃないのか!?」
「おまえは少し痛い目を見たほうが良いからな。今学内最大手美少女二人から好意を向けられている代償としてはかるすぎる。悪魔ですらもうちょっと秤の両側を均等にしようとするぞ?」
「う~ら~ぎ~り~も~の~め~」
「うわっ妖怪女落としが来たわ。逃げよ」
「それで、ユリアちゃんは……」
「ミサキさんの方こそ小学生の頃の……」
と、二人はまだのろけ話を続けていた。
……え? これまだ1週間あるの? 嘘だろ?
その日の昼、俺と美咲とユリアの3人でお弁当を食べることになった。
「悠真くん。はい。あ~ん」
「いいないいなぁ。私もやります! ユウマさん! はいあ~ん」
「ちょっとお前ら……」
「どうしたの? 私達もう恋人何だよね? ほら。あ~ん。昔やったことあるでしょ?」
「きょ、教室で皆見てるし……」
「観念してください! モテモテの代償です! ほらあ~ん!」
「恥ずかしいよぉ!」
なんで二人はこんな平気なの? 鉄で出来てるの? 心臓が。
「わ、私だって恥ずかしいんだから悠真くんも観念して! ほら!」
「わ、わたしだって恥ずかしいですよユウマさん! ほらあ~んです! どっちを選ぶんですか!?」
ええいままよ! そう思い美咲が差し出した方にかぶりつく。ユリアはちょっとさみしそうな顔をしていた。
「よし! なんとなくユリアちゃんの透明具合が減ってるような気がするぜ!」
陽斗がそう言っている。たしかにちょっとくっきりしてきた気がする。なぜだ?
「それと……」
ユリアの方のも食べてやる。
「あわわわわ。ユウマさ~ん!」
「あああああ! ばか! ユリアちゃんがまた薄さも土ちまったじゃねえか!?」
とはいえ目の前であの顔をされて食べないという選択肢は取れない。美咲も
「もう、そんなところが好き!」
とのろけてくる。
「い、1日目でこれ……? どうなっちまうんだ……」
すでに満身創痍だった。
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